第96話
天空の城の厨房。
そこには不満そうな顔を隠そうともしない、レオンの姿があった。
そしてレオンが皮を剥いた
「
可食部が大きく削られ、抉られて歪な形になった
「こんなんで、よくもまあ料理人を下に見れたものだ。」
さらに、
「大言壮語もほどほどにしてもらいたいものだ。」
追い討ちをかける。
「チクチクと嫌味ったらしい・・・」
レオンはそう呟くが、
「おや?
それを聞いた佑樹は容赦なく言葉を発する。
「俺のいた世界には、
これは、愛知県の豊橋市立富士見小学校で毎年恒例となっている「皮むき大会」での記録で、20メートル19センチという記録が2022年に樹立されている。
「簡単だと豪語しておいて、こんな出来とはね。」
「た、確かに簡単だと豪語した。
ならばお前はどうなんだ?」
さすがに
それを見て、レオンは
どうしたらきれいに皮を剥けるのか?
レオンはそのヒントを得るべく、佑樹の手元を観察することにする。
じっと見られていることに気づかないのか、佑樹は変わらぬ様子で皮剥きを続けている。
そして、少しずつ佑樹を真似して皮剥きを再開する。
ペースは先ほどよりも遅くなってはいるが、形は
そうやって3つほど皮を剥き終えた頃、
「御館様様、アルファリア様方が戻られマス。」
ランマルから報告が入る。
「到着予想時間は?」
「およそ30分後デス。」
「わかった。
ペースを上げる。」
そう言って、佑樹は皮剥きのペースを一気に上げる。
その様子を見たレオンは驚愕し、そして理解する。
今までのこの男の皮剥きは、自分に手本として見せるためのもの。
なぜそんなことをしていたのか・・・
「急ごうとするな。
自分ができる範囲のことを確実に行え。」
佑樹に声をかけられ、ハッとして自分の手元を見る。
「危なかった・・・」
自分の指を切りそうになっているのを見て呟く。
「見てないのに、なんでわかった?」
レオンはそう聞くが、
「ちゃんと見てるぞ。
首を動かしていないだけで。
それに・・・」
「それに?」
「大人数相手の料理なら、もっと全体を見て指示しなきゃならんからな。
お前一人くらいならどうとでも見てられる。」
「・・・」
「それから、最初の方に剥いた
「え?」
「甥っ子や姪っ子にそれを出すわけにはいかんだろ。
叔父の面子として。」
そう言われ、下を向くレオンだった。
ーーー
戻ってきたアルファたちは、昼食を摂りながら撮影してきた生物の写真を大型モニターに投影させている。
そこに映し出される珍しい生物たち。
すでに見ているカカポやジャイアントモアだけでなく、タカへのような飛べない鳥も写されているだけでなく、巨大な猛禽類も撮られている。
「ハーストイーグル、かな。
このサイズの猛禽類は。」
ジャイアントモアに襲いかかっている姿からすると、翼長は3メートル近いものだと推測される。
「こんな巨大な鳥もいるのか。」
とは、一緒に昼食を摂っているエンリケの言葉だが、そこには子供たちだけで行動させることを危ぶむ色がある。
「護衛用の
佑樹はそう言って、エンリケたちを宥めている。
「ユウキ様、この子たちは私たちのところに自分から来てくれたのですよ。」
新たな動物の写真になると、アレシアがはしゃぐように報告する。
「これはウォンバットだな。」
ウォンバットはオーストラリア原産の哺乳類であり、好奇心が強く人間にも警戒心を持たずに近寄ってきたりする。
南半球の生き物が多いなと、そう考えているとさらに写真が切り替わり、モニターに映されるのも動画に変わる。
そこに映し出されたのは、ヨタヨタとした不恰好な歩き方をしたトゲだらけの生き物。
「ハリモグラだね。」
ハリモグラはカモノハシと同じく、卵を産む哺乳類として知られる。
さらに映し出されるのはカピバラ。
子供たちのはしゃぐ声と、映し出される動物を説明する佑樹を他所にして、レオンは本を読んでいる。
そのことに気づいたエンリケが、
「レオン、なんの本を読んでいるんだ?」
そう問いかけるが、
「・・・」
よほど集中しているのか、返事はない。
さらに声をかけようとしたエンリケを、佑樹が手で制する。
これは後で説明するということなのだろうと判断して、エンリケは弟から目を離して子供たちが撮影してきた動物たちの動画を観るのだった。
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