コリガン家の花婿
朝野珈琲
第1話:ウェイクアップ・イン・バース
「お前さ、実家から出て一人暮らし始めたらしいじゃん。」
「はい、先週の日曜日に引っ越しました。柳さん中野ですよね。僕は高円寺にしたのでご近所になりました。」
「高円寺?飲み屋もいっぱいあるし、いいとこだよ。どっち?」
「どっち?」
「JRか丸の内線かってことだよ。」
「あ、なるほど。丸の内線の東高円寺です。蚕糸の森のすぐ隣のマンションなんです。」
「終電は?」
「23時39分です。」
「は~?それじゃ残業できねーじゃん。」
「…(18時以降を残業っていうんじゃないかな~…)。」
今朝はこんな場面で目が覚めた。新型コロナウィルスのロックダウン真っただ中で曜日の感覚はとっくになくなっている。今日は水曜日だっけかな?
「Morning darling, you were mumbling in your dream in Japanese again. Gnawwwwwwww. Today's Thursday, isn't it?(おはよう。また日本語で寝言話してたよ。プファ~(あくび)。今日は木曜だよね?)」
「I think it's Wednesday?(水曜じゃない?)」
こんな会話を最近よくする。曜日はもちろんのこと、僕の日本語の寝言の件。もうかれこれ20年近く経つのに、僕はいまだに日本でのサラリーマン生活を夢に見る。とんだトラウマ。
ちまみに、なんで英語で会話なのかって?
それは僕の夫がアイルランド人で、僕とヤツ、それにフレンチブルドッグのエディーの3人(2人+1匹、犬好きのあるある)でイギリスのバースで暮らしているから。夢の中での僕は、20年後の自分がバースはおろか、イギリスで生きているなんて想像だにしていない。生粋の外専だったし(このことに関してはまた追々ってことで…)、海外でなきゃ生きていけないとは(自分勝手に)薄々気が付いてもいた。でも今では、この地でヤツと共同で家のローンを組み、裕福ではないまでも幸せに暮らしている。義理の両親にも最高に恵まれ、義理母アンからは会えばいつも「あなたがコリガン家の一員になってくれて本当にうれしいわ」と頬っぺたにキスされる。人生なんて本当に何が起こるか分からない。今の僕は胸を張ってそう言える。そう僕は、アイルランド人男性(小熊系)と国際同性婚をした日本人(ガチムチ)だ。なぜ、僕はここにたどり着いたのか…。これからじっくり僕の(数奇な?)人生話にお付き合いいただきたい(恥は承知で少しアダルトな表現も登場するので、よい子のみんなはお父さんかお母さんと一緒に読んでね)。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます