希望とは絶望の前菜なのだよ! 就職活動~新入社員編。

第1話 企業説明会とはブラック企業の嘘を見抜くムリゲー。

<問・就職説明会にてブラック企業が語る説明の中で注意すべき点は何か?>


 僕が件のブラック企業……今後はA社と記述します……を初めて知ったのは合同就職説明会の時でした。

 企業ブースに居たのは社長とその愛人(もちろん当時は二人の関係なんて知りません)。その場で社長が話していたA社の開発している製品の説明は非常に魅力的に聞こえる物で、例えば


・自立呼吸ができない、手の平に乗るくらい小さな未熟児のための人工呼吸器。

・指先の壊死の進行状態を調べる測定器。

・自社開発中の世界発になるであろう画期的な制御システム。


 などなど、その道の分野で設計・開発に携わりたかった僕にとってはかなり興味がそそられます。また説明会の最中、社長が


「君らの年代が入社してすぐ……五月くらいかな。うちは一部上場を果たす予定だから、入社した君らの最初の仕事は上場記念のパーティーの準備をやってもらうことになるかな」


 と言うと周囲の学生たちは騒めきます。

 当時の僕は世間知らずで(今もだけど……)技術系の話ならいざ知らず、経済や株に関しては全くの無知。周りの雰囲気を察するに


(とりあえず景気が良いのかぁ)


 くらいに思っていました。うむ。思い起こすとアホの子要素が強いですね。

 今になって思えば、こういった企業の内情をペラペラ話してしまうのは、インサイダー取引につながる可能性……までは言いすぎだと思いますが、なかなかにグレーゾーンな話題のような気がします。


 が!


 問題はそこではありません。

 この時の企業説明会でA社の社長は二つ嘘をついていたのです。僕の記憶している限りでは……




《解・就職説明会にてブラック企業が語った嘘》


 企業説明会でA社社長が語った嘘。その一つはプロローグでも少し触れましたが


・自社開発中の世界初になるであろう画期的な制御システム。


 に関することです。

 入社してから半年以上たって知ったことですが、A社の技術開発部はかなり前からこの制御システムの開発を諦めていたそうです。ただし、このシステムの開発によってA社は県内初のベンチャー登録を受け、行政から補助金を貰っていました。

 今更「できませんでした」とか言えないわけです。言っちゃうと補助金打ち切られますし、後々詳しく書きますがA社のお金回りはかなりズサンなものだったらしいので、お金貰えないと潰れちゃう。(人様の税金で回してるような会社なんて、はじめから潰れてしまえ!)


 そしてもう一つの嘘は社長が語った


・君らが入社してすぐに我が社は一部上場する。


 結論から言えば、しませんよ。上場なんて。

 こちらも入社半年後くらいに連日の深夜残業で変なテンションになってた僕に、同じく変なテンションになってた先輩【ソフト開発部の元ヤン・プログラマーGさん】と話していた時の事です。どんな話の流れだったか覚えていませんが、


「入社前に社長が、もうすぐ一部上場するって言ってたんですけど、あれって、どうなったんすかねぇ?」

 と聞いたところ、Gさん「はぁ?」という顔して

「え? あいつ(社長)まだそんなこと言ってん?」

「え? まだって、どういうことです?」

「俺が入社する前から、今年上場するって言ってるよ」

「はぁ?」

 Gさん、当時A社に入って5~6年くらい、社内では中堅です。

 という事は、かなり長い期間、社長は新卒学生に対して『上場詐欺』を行っていたことになります。しょーもな。


 ここで得た教訓としては『甘い話を信じちゃいけない』と言ったところでしょうか。僕にとっては一部上場よりも製品開発の方が甘い話に感じられてたんですけど、そっちも嘘でしたしね。

 しかしながらこれらの嘘、A社の内情を知らないと見極める事は不可能です。なんとなく(胡散臭い事言ってんなぁ)と感じる嗅覚が身についていれば良いですが、まだ世間知らずの新卒にはかなり難しい。

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