エピローグ

 ここは、王室の王族が団欒する部屋である。

 部屋には三人の人物がおり、メイドや執事達の姿も見えない。 大柄な男性の声が聞こえて来る。


「それにしてもカノン。なぜ我々で決めた者を選ばず、エト・カーノルドを呼んだのじゃ」 


「父上。その事については前にも説明した筈ですよ。父上方にも神玉の中で、何をみたのかお伝えしましたよね」


「うーむ、そうなのじゃが、にわかに信じられなくてのぅ。本当にのかとな……」


「えぇ、解けますよそれも良い方向に。神玉しんぎょくで見えたので間違いありません。私もその瞬間をこの目でみましたので」


「どういう状況でなったのかは聞いておらんがの」


「それは秘密です! 私に任せといて下さい」


「まぁ、お前が言うなら大丈夫であろうな」


「はい、そ れ に父上の時は三人も別の者を選んだと聞きましたが」


「む、それを言われると何も言い返せんのぅ」


 ここでは、第一王女と国王ではなく父と子の時間なのだ。


 二人の会話にまだ子供らしさが残る声が入ってくる。第一王子のアレンだ。


「まぁまぁ、過ぎた事は良いではありませんか父上。ジェロシー家にはもう謝罪をしていくらか謝礼金を渡したのでしょう?」


「あぁ両親は快く受け入れてくれたよ。娘の方はカノンに心酔してたみたいだから酷く荒れていたがね」


「それは悪い事をしてしまいましたね。でも後悔はしていませんよ。これが正解だと思ったので」


「カノンには見えたんだろ」


「ええ、あの子一人だけでしたがね。兄上は元々選んでいた者をそのまま側仕えにした様ですから、見えなかったのでしょう」


「あぁ、それで良かったのか、悪かったのかは、分からずじまいだったけどね」


 青年は少し残念そうな、自虐的な言い方をした。


「そういえば、ティナはどこに行ったのですか?」


「ティナなら、母上と庭でお茶しているのを見たよ」


「あの子もあの子で、次は自分が主役の選考会になるから、どんな子が自分の側仕えになってくれるか楽しみなのだろう」


「二年後の話なんですけどね〜」


 王族の会話は、終始温かい雰囲気で続けられていった。





 その二年後に、悲劇が起こる事を彼等は知らない。 


 ウルティニアの選考会が来る日が無いと言う事も。


 王女カノンが神玉の中で何を見たのか。

 何故カノンはエトを選んだのか、神玉とは一体なんなのか。


 今、悲劇の物語が幕を開ける。


 さぁ見届けよう、一人の少女が運命に抗おうと藻掻くその姿を。

 

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