嫌い。

ためひまし

第1話 嫌い。

 俺にはなにもなかった。結局なにもなかった。

 顔だってイマイチだし、勉強だって目に見える形に残ってしまった。運動だって得意とは言い張れない。それ以上の脅威にあっけなく押しつぶされたからだ。

 今こういうことを考えてると苛立ちとともに、涙が溢れてくる。何もない自分のはずなのに一丁前に涙と苛立ちは込み上げてくる。この鉄屑が憎い。夜道に吸い込まれそうになる。

 そうなれば誰かが助けてくれのだろうか。と考えるぼくは青二才。一人ではなにもできない、人に助けてもらわないと生きていけない。結局のところ人の支えなしにでは生きていけない自分が好きなわけない。

 この痛みはどこにぶつければいいのかい?

 中途半端な義務教育は破滅しか呼ばない。暴力を振るってはいけない。ぼくに、ぼくにもっとしっかりとした相談ができる仲間がいれば、ぼくに自己開示ができる勇気があれば変わったのかもしれない。

 ほら、やっぱりぼくには才能がないんだ。

 天賦の才は一人につき一つは持っているはずじゃないのかい?

 生きているってなんなんだい?

 つまらないよ。もう、生きがいが生きがいでなくなって、つまらなくなって憎くなる。憎むべき人は自分だけでいいのに。

 それでも死ねない。死ぬ勇気なんかぼくには見えない。

 社会のゴミにもなりきれない。お荷物にもヒーローにもなれないぼくは生きる意味はあるのかい?

 ぼくの人生の主人公はぼく自身じゃないのかい?

 だったら、この仕打ちはないんじゃないか?

 こんな卑屈な自分が嫌い。嫌い、嫌い嫌い…嫌いだ。大嫌いだ。

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嫌い。 ためひまし @sevemnu-jr

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