第4話 ゴールを守る

「みんな上がれー!」


テツは左手でボールを持ち、右手の大きなジェスチャーで前線へ上がるように伝える。


そこから、ボールを軽く投げ、地面にワンバウンドさせて、前線へ思い切り…蹴り出した。


「ナイスパーース!」


一気に最前線のFW(フォワード)のダイゴまで、パントキックを飛ばす。ダイゴはしっかり相手を背中で押さえたポストプレーで、味方のケンに繋ぐ。


中盤のケンから、ワンツーの形て出されたディフェンスの裏へのスルーパスが、ポストプレー直後反転したダイゴに渡った。


「ドンピシャ!」


相手キーパーが出てきた所、キーパーとの一対一を難なく制し、ゴール隅に流し込んだ。


「イェーイ!ハットトリックー!」

(ハットトリック=1試合で3得点する事)


【ダイゴ=川島 大悟(かわしま だいご)】

【ケン=田村 憲太郎(たむら けんたろう)】


「ピッ、ピーーーーーー!」


ダイゴのゴールの歓喜の中、主審が試合終了のホイッスルを鳴らす。


最終スコア、4対0。


「お疲れー!快勝、快勝!」


ダイゴとテツが両手でハイタッチを交わす。


「おめーは、あと2点くらい取れただろ。わざわざキーパーまで抜こうとしやがって。」


テツが、冷静に返す。


「バレた?だってその方が格好良いじゃん!負けはないってわかってるからな。」


悪びれる様子は微塵もない。


「テツがあのレベルの相手に点取られると 思えないからな。」


「いやいや、結果論だろ」と、思いつつ、そう言われて悪い気はしない。


「ナイスパント、テツ君!最後にダイゴにしたパス、絶妙。」

「それに、今日も止めたね、PK。」

(パント=パントキック)

(PK=ペナルティーキック)


ケンがテツを称える。


「たりめーよ!まぁ、たまたま?読めた!」


テツは試合中のPKを、3戦連続で止めている。


「たまたまで3連続止めれないでしょ!本当に読みも鋭いし。テツ君、このまま一緒にサッカーやろうよ。」


「そーだそーだ!俺のシュートを簡単に止めるのは、テツしか見たことねーからな。」


二人が説得にかかる。


「いやいや、俺はバスケ部だっつーの!こっちは。それに簡単には止めてないからな。」


身長が高く、責任感の強いテツは、バスケの部活に負担がかからない約束で、地元クラブに所属しキーパーの助っ人していた。はじめは怪我人の代わりだったのだが、部活が一段落してからは、積極的に試合に出ていた。


3人はそんなことを話しながら、ジャージや飲み物を片付けていた。


「ちょっといいかい?」


テツ達の後ろから、低く聞きなれない男性の声がした。


振り返ると、スーツを来た細身の男性が立っていた。

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