第2話 チームプレー

「ヨッシャー!」


監督の声とほぼ同時に、決めたテツではなく、ゲンが叫んだ。


ーー


「ゲンってさ、自分でシュート打ててもパスするときあるよね?」


入部して間もなく、練習後のシューティングの時間に、ゲンに聞いたことがあった。


「ある!だってシュート決めるのって、楽しいだろ?」


即答で答えた。


「??」


全く意味がわからなかった。まぁ国語の成績に自信がある方ではないが、この返答は理解しかねる。

シンプルに「なら、打てよ。」と思った。

少し黙って、きっと困った顔をしていたのだろう。

困った顔を知ってか知らずか、ゲンは続けた。


「やっぱり楽しいって思って欲しいしさー、1人じゃバスケできないし。バスケの良さをわかってもらいたいからな!」


恥ずかしげもなく、あっけらかんと言うゲン。


「あ、打つときは打つぞ!俺も決めたい!」


そうニコニコと話すゲンに、少なからず憧れを持ってしまったのは、その時でおそらく間違いないだろう。


ーー



「ナイスパス、ゲン!さぁ、ディフェンス!」


さすがにこれ以上、試合中に思い出に浸ってる余裕はない。気合いを入れ直した。


その後もゲンは何度もディフェンスをかわし、味方にパスを供給し、時には自ら決めた。



試合終盤の第4クォーター残り3分。

テツ達のチームの得点は60点を越えた。


(中学の試合は1クォーター8分×4の32分)

得点は取れている試合だと言える。


だが、相手チームの得点はすでに80点を記録している。


ゲンはかなり優秀な選手だ、視野が広くなんでもできる。間違いなくいくつかの高校から声がかかるだろう。

テツは技術はゲンには及ばないが、運動量が豊富で、飛び抜けた高さがある。この二人がチームの中心だ。


ただ、他にレベルの高い選手はいなかった。三年生はテツとゲンとヨネの3人。あとは二年生と一年生が4人ずつ。部員は全員がベンチに入れる。全校生徒150人程度の田舎の公立中学校では、当たり前のことだ。


対して相手は県大会常連の強豪。

大きい学校ではないが、それでもベンチに入れない部員が10人ほどギャラリーで応援している。


相手からすれば、ゲンとテツの二人に好き勝手させなければ勝てる。そんなチームだった。



それでもテツ達は大きなリードを許すことなく、試合を展開した。周りの予想では、もっと点差が開く試合だと思われてたはずだ。

何より全員が最後の1秒まで必死で走り、必死でボールを追った。



「ビーーーーー!」



試合終了のブザーがなった。



最終スコア


68対87。



敗北。


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