第百十七回 青州争乱
それでも青州にある
だがこの申し出は白虎山側に断られる。三千の青州軍は白虎山側に加わっていた学者の
その戦いで一気に名を上げた蕭嘉穂達であったが、それは慕容彦達の怒りに油を注いだ結果となる。今度は汚名を返上せんとばかりに兵士一万二千人を動員。自らを総大将として一気に三山を
この動きに桃花山の
そしてその
この
「八千対一万二千なら戦いようもある! 燃えてきたぜ!」
やる気を見せる桃花山と二竜山の面々。しかし。
「いえ。この戦いは六千対一万二千です」
梁山泊軍の軍師、朱武は静かにこう言った。
その後朱武の指示により二竜山の砦は旗などを全て隠し
魯智深達は砦に隠れその様子を見守っていた。魯智深や武松、桃花山の周通は性格的に戦いたがっていたが、手下の練度を指摘され今回は後方に回った形だ。
「しかし……こんな状況になっても白虎山の連中は合流してこねぇ。一体何考えてやがるんだ」
そう。あれだけ
だがその白虎山。合流しないのではなく、合流できないと言った方が正しかった。青州軍を撃破した直後、首領の一人である孫安が病に倒れたのである。その症状は重く、すぐに明日をも知れぬ状態になってしまった。その為下手に動かす事が出来ず、見捨てられない仲間達がこの地に留まる結果になっていたのだ。
孫安は巨漢な男で、農耕に精通した農民であったが、腕っぷしが強く武芸にも通じて義にも厚かったため人望もあった。父の敵を討ち逃亡していたが、同じような境遇になっていたもとは
青州軍撃退に大きく貢献した道士、
「何が幻魔君だ! 例え三千の敵を軽く
「先生、ご自分を責めるのはおやめください」
弟子の馬霊が慰める。この馬霊は
「神よ。どうか我が友孫安をお救いください!」
その時である。
「久しいな
「あ、貴方様は……」
喬冽は突然現れた
「そ、そうだ。羅真人様なら我が友を救うことが……」
「喬冽よ。それは自分で悟ったであろう。儂はそなたから
それは道術で成り上がろうとしていた野心。しかし現在、親友を失ってまでそうなりたいとは思わない。当時羅真人に弟子入りを志願した時はこれを見抜かれていたのだ。この者は自分の為に道術で多くの者を殺すだろうと。
「魔心……確かに。しかし今は」
「道術でも人が救える事はある。だが病に関して有効なのは道術ではなく
「仁術……」
「そう。すなわち医じゃ」
羅真人の横に二人の人物が現れる。それは
「……っ!?」
喬冽が
桃香は孫安の症状を見て口を開いた。
「この方は緊急に処置をしなければ命を落とします。
「し、施術とは一体どんな……?」
喬冽が質問する。
「
「な、治せるのなら是非お願いします。私に出来る事ならなんでも申し付けてください」
「この方を羅真人様に預からせていただきますがよろしいですか」
羅真人の移動系の術は神行法などとは全然別物。
「梁山泊なら治療が出来る。我が師が移動させると言うのだ。それならば間に合う」
「!」
桃香は笑顔で首を振った。
「公孫勝さん、梁山泊ではありません」
桃香は告げる。孫安を連れていく先は二竜山なのだと。
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