第百七回 王倫の失策
「く、このままでは……」
王倫は自室で書き物をしていた。ふと気配を感じ入り口を見るとそこには林冲が立ってこちらを見ているではないか。
「誰かと思って驚いたが林冲ではないか! 何故声をかけぬ。それよりも無事に帰ってきたのだな。心配しておったぞ」
林冲は静かに
「
王倫も笑顔で
何も言わぬ林冲は王倫にもう一度微笑むと
「林冲!? まさか……」
その光景を見た王倫は思わず
「ん……」
「
「んあ……?」
「起きて爸爸。机で寝ないほうがいいよ」
王倫は書き物の途中で気付かぬまま眠ってしまっていたのだろう。両側から
「桃香に瓢姫か。私は眠っていたのか?」
「うなされてた」
「何? 私がか?」
「机で寝るからだよ。寝るなら横になって寝た方が体の為にもいいんだから」
その方面に詳しくなった桃香からお
「……なにか良くない夢を見ていた気がするのだが……」
その内容をすっかりさっぱり忘れてしまっていた。
「……
「どうなのだろうな瓢姫。それすら分からぬ」
が、と王倫は続ける。
「二人が起こしてくれて良かったとは思えるのだ」
王倫に分かる事はこうも記憶に残らない内容ならば予知夢の
林冲は
「なぜ離れて遠巻きに……?」
その時林冲の顔を何かが
「! いかん! 狙いは弓だ!」
林冲の
「うぐっ!」
「うわぁ!」
林冲や
「
「くそっ! こっちの矢は風で戻され届かないのか!」
食客の一人は反撃しようと矢を放つがそれは届いた気配がない。林冲は周囲を落ち着かせる為に叫ぶ!
「敵も狙いをつけてはいない。それに
だが林冲達には打つ手がない。未だ敵が優勢だと言って良いだろう。弓の攻撃は確かに程なくして止まった。
(先程の攻撃の仕方から見ても無差別にしか思えない。と、すると狙いはこちらの全滅か? だが一体何のために……)
林冲は敵の狙いを推測する。鈕文忠が敵の動きに疑問を
「林冲殿! 敵の動きが
「あれは!」
敵が
「逃げ場のないこっちを
食客の誰かが
「ではその火を雨で消してご
意外な所からのその声に食客達が驚く。その声は確かに林冲達の『背後』から聞こえたのだ。鈕文忠は声のした方を振り向きそのまま固まった。
「ばかな……
「巨大な……船……なのか? こんな……」
その存在は林冲達を追ってきた者達に混乱をもたらした。そしてその
「林冲殿、ご無事で良かった」
「我らが来たからにはもう安心ですぞ」
「おお! そなた達は!」
「私達は首領の命で林冲殿が来たら助けるようにとここで
「こちらにも
「まずは目の前の敵を
劉唐がやる気を見せると呂方が
「来ます! 皆さん、
林冲の耳に
「うわあああ!」
「ぎゃあああ!」
「雨は雨でも矢の雨ですけどね」
陸にいる呂方が林冲に言った。敵の松明が良い目印になってしまった訳である。これでは相手も火攻めどころではない。
「へへへ。腕がなまっちまうかと心配してたところだ。ここからはこの劉唐様が大暴れしてやるぜ!」
だが
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