第75話 勉強会


 そろそろ学校で定期テストが控えているということで、弓花と一緒に俺の部屋で勉強会を行うことになった。


 俺も弓花も最初は成績優秀だったが、付き合うようになりイチャつき過ぎて成績が下降気味であった。

 そのため、今日からは真剣に勉強をしなければならない。


「お待たせ」


 勉強道具を持って俺の部屋にやって来た弓花。


 ラフなシャツに俺があげたパーカーを着ている。

 下はショートパンツを履いていて、太ももが大胆に見えている。


 なんだかんだ部屋着ってのが世の服装なの中で一番エロいからな。

 人生で一番着る服が一番エロいって、この世の中終わってんだろコラ。


「早速、始めましょうか」


「へい」


 座布団に座り、ちゃぶ台机で勉強を始める。


 弓花は俺の正面に座っていて、真剣な眼差しで勉強を始めている。

 俺も集中したいと思うのだが、正面の弓花はラフなシャツを着ているため胸元が解放されており、大きな胸が大胆に見えてしまっている。


 あんなものを前にして、集中できるわけがない……


「さっきから教科書ではなく私の胸ばかり見ていないかしら?」


「もうちょっと肌が見えない服を着てきてくれよ、集中できん」


「それはあなたの我儘よ、ありのままの私を受け入れてもらわないと」


 俺の要求は拒否され、そのまま勉強を続ける弓花。


「そんなに悶々としていては勉強どころではないじゃない。一度スッキリしてはどうかしら?」


「スッキリしろと言われてもな」


「男って抜くとスッキリするんじゃないの?」


「抜くとか言うなよ」


 いったい何を抜けとおっしゃっているのかこの人は……


「ここでするなら私が見守ってあげるけど」


「何の罰ゲームだよそれ」


「手伝ってほしいの?」


「おいおい……」


 いったい何を手伝うというのか……


 でも弓花に手伝ってもらったら、すぐにスッキリ出来そうではある。


「あなたが喜ぶことなんでもしてあげるけど」


「どうしてもお願いしますと言わせたいみたいだな」


「そうよ。何にも遠慮することなんてないわ」


「言えるわけないだろ」


 サポートお願いしますなんて言ったら、それはもう勉強どころではないだろ。


「あなた、何か履き違えていないかしら? そもそもこれは勉強会、一人で勉強するより二人で支え合って勉強する方が学力は上がるという目的で開催したのよね? なら、あなたが集中できなくて困っていれば、私に協力してもらうのが本来のあるべき姿なのではないかしら? 一人でするなら勉強会の意味は無いし、メリットを有効活用できていないわよ」


「た、確かに……」


「男子学生は勉強中にムラムラとしてしまい、集中力が低下し時間を無駄にしてしまう傾向がある。だからこそ私が協力して好きな時にスッキリさせてあげて、時間を有効活用するのが一番良いやり方ではないかしら?」


「なるほど……」


 相変わらずの理論攻めで俺を追い込んでくる弓花。


「そもそも世間一般の男女の勉強会というのは、互いの欲を効率よく発散させるために行われてるものなのよ。どちらかが悶々としてしまった時は片方が手伝ってあげて、お互いが悶々としてしまった時は数字でいうところの6と9の形になり、同時に手伝ってあげるのが男女の勉強会のルールとなっているの」


「誰が決めたんだよそんなルール。数字で例えるなよ」


「あなたが手伝って欲しいと言うのは、決して我儘では無いの。むしろ、それが健全な勉強でもある。だから、私がそういう気分になってしまった時は、ちゃんと手伝ってもらいたいわね」


「俺に手伝えることなんてあるのか?」


「そうね……ギュっと抱きしめてもらって、耳元で大丈夫だよと囁いてもらいながら、指は激しくというよりかは撫でる感じでお願いしたいわね」


 顔を真っ赤にして説明している弓花。

 いったい何の手伝いの話をしているのだか……


「というか、女性もスッキリするものなのか?」


「いえ、スッキリというよりかはむしろ眠くなってしまうわね」


「本末転倒じゃねーか!?」


 人によって差異はあるだろうが、弓花は眠くなってしまうみたいだ。


「まぁ、女性の場合は勉強会の締めでご褒美といった形の協力が望ましいわね。それが待っているのなら頑張れる的な感じよ」


 男も女性からご褒美を提示されたら、何でも頑張れそうな気はするな。


「それでどうするの? このまま悶々として集中力の無い状態で勉強を続けて時間を無駄にするか、一度スッキリして賢者のように集中して勉強をするかの二択だけど。もちろん、馬鹿じゃないなら後者の答えに決まっていると思うけど」


 完全に追い込まれた。

 この状況では、もうお願いしますと口にするしかない。


「いや、その……」


「勉強は大事、疎かにしないで。あなたの将来に関わっているのよ」


 もう手伝ってもらわないと悪みたいなことになってら。


「返事が無いということは、お願いしますということになるわよ」


「ばーろー」


 その後は弓花に抱きしめられ、大きな胸の中に埋もれ目の前が見えなくなってしまった。


 だから、何が起きたのかは定かではないのだが、弓花が離れてからはやけにスッキリしていた。



 その後めちゃくちゃ勉強した――

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