第45話 せいしを懸けた戦いⅣ


「いいか、俺が先に入るから弓花は後から入ってきてくれ」


 俺は先手を取って自分から風呂へ入ることに。


 先に入り、振り返らなければ弓花の身体は見えない。

 それに、弓花が緊張して入ってこない可能性もある。


「わかったわ」


「じゃあ、入ってくる」


「行ってらっしゃい」


 弓花は俺を寂しそうに見送る。

 まるで戦場に向かう夫を送りだす奥さんのように。


 更衣室で服を脱ぎ、タオル巻いてお風呂に入る。

 まずはシャワーを浴びて頭を冷やそう。


 ここからは戦場なんだ――


「失礼します」


 何故かよそよそしくお風呂に入ってきた弓花。


 背後を振り向かなければ大丈夫だと思っていたが、正面の鏡が弓花の身体を全て映してしまっている。


 タオルは巻かれているが、際どい部分が見えないギリギリのレベルを攻めている。

 髪を結んでいて、普段とは少し雰囲気が異なっている。


「ヤバい、超恥ずかしい」


 弓花は恥ずかしさで全身を赤くさせてしまっている。

 俺も同じだと思うが……


「無理しなくていいんだぞ」


「無理じゃない。咲矢の身体は私が洗うから」


 身体洗い用のタオルを取ってボディーソープを付ける弓花。

 どうやらあまりの恥ずかしさにじっとしていられないようだ。


 俺の背中や腕を泡立ったタオルで洗ってくれる弓花。


 俺達は家族と心の中で復唱することで理性を保つことに。


「うおっ」


 後ろから前に手を回して、胸を洗い始める弓花。

 背中に弓花の大きな胸が押しつけられて、思わず声が出てしまった。


「ちょっと、変な声出さないでよ」


「……ごめん」


「今、どんな気分?」


「最高としか表現できないぞ」


「そう。喜んでくれて何よりよ」


 弓花は俺にタオルを渡してくる。

 後は自分でお願いということなのだろう。


 俺は洗い残された部分を洗い終えると、弓花がシャワーで流してくれる。

 どうにか第一ステップは我慢できたな……


「じゃあ、次は私の身体を洗ってもらえるかしら?」


「……いや、洗えるところないだろ」


「別に全部洗っていいわよ。私の身体はあなたのものでもあるのだから」


 弓花は身体に巻いているタオルを外して、正面だけを隠す。


 綺麗な背中が露わになっていて、腰やお尻も大胆に見えてしまっている。


 俺は恐る恐るタオルで弓花の背中を洗い始める。

 強くこすると赤く腫れてしまいそうなほど白い肌なので、気を遣う作業だ。


「背中と腕、洗い終わりました」


「……そこだけしかやってくれないの?」


 鏡に映る不満気な弓花の顔。


 俺は弓花の身体を見て、洗えそうな場所を探す。

 足なら大丈夫だろうか……


 弓花の足を洗い始めると、弓花は満足気な表情を見せる。

 太ももはすりすりしたくなるほど綺麗だ。


「ごめん、もう限界」


「咲矢の大好きな私の胸はいいの?」


「たぶん、そこ行ったら理性振りきれる」


「そう、なら仕方ないわね。よく頑張ったわ」


 弓花は渡したタオルで洗い残したところを洗っていく。

 際どい部分も洗うと思われるので、俺は背中を向ける。


「シャワーお願い」


「わかりました」


 泡まみれになった弓花の身体をシャワーで流すことに。

 ただでさえ綺麗な弓花が、より綺麗になってしまった。


「じゃあ、一緒に湯船に浸かりましょうか」


「二人一緒に入ったら狭いだろ」


「なら、密着して入るしかないわね」


 俺に拒否権は無いので、弓花の指示には従わなくてはならない。


 ここを乗り越えればゲームクリアだが、ここで我慢の限界を迎える可能性も高い。


「咲矢が先に入って。後から私が入るから」


「わかった」


 俺は浴槽に入ることに。


 思えば華菜とも俺が小六になるまで一緒にお風呂に入っていた。

 あの時は決して妹に興奮などしなかったし、何も問題は無かった。

 だから大丈夫。自分を信じよう。


「じゃあ、失礼」


 弓花が入ることで湯船のお湯が大きく溢れてしまう。

 なんかもったいないな。


 俺に背中を向けて入る弓花。

 首元に顔を乗っけてきて、真っ赤になった表情を見せてくる。


「入ったわね」


「……そうだな」


 同じ湯船に入り、俺の胸と弓花の背中が密着して互いの胸の鼓動が聞こえてくる。


 弓花の間直に見る首筋は綺麗で、鎖骨も美しい。

 なんといってもその先に見える大きな胸の谷間は脅威だ。


「ちょっと咲矢」


「ご、ごめん」


 弓花は俺の身体の反応に気づいたのか声をあげてくる。


「まぁ、この状況なら仕方ないわね。そうならない方がおかしいわ」


 弓花は察してくれて、優しい目を向けてくる。

 そういう弓花も、流石のこの状況に身体が反応してしまっているみたいだが。


「一緒にお風呂は、私達には早過ぎたかもしれないわね」


「だから言っただろ」


「でも、凄くドキドキして楽しいわ。これが恋ってものなのね」


 弓花は身体を反転させて、正面を向いて俺を抱きしめてくる。

 タオルは外れてしまったが、胸は俺に押しつけられているので大事な所は見えていない。


「咲矢と出会って、初めて恋をした。本当に幸せよ」


「それは俺も同じだよ」


 お互い湯船で熱い上に恥ずかしさと緊張で身体も熱くなっているため、すぐにお風呂から出ることに。


 裸の付き合いを経験したことで、何だか俺は少し大人になった気分に。

 きっと弓花もそう感じているのかもしれない。


 どうにか、理性を保つことはできたが、心身共に疲弊はした。

 もう俺のライフは1くらいしかない――

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