イヴァン雷帝~初めてロシアを統一した皇帝
早瀬千夏
第1話:不遇な少年時代
1530年、モスクワ大公ヴァシーリー三世(ワシーリー三世)と、2番目の妻である公妃エレーナとのあいだに、イヴァンは生まれました。1番目の妻サロメヤは子を産めなかったという理由で、無理やり修道女にされ、離縁されたたのです。
その2年後、弟のユーリーが生まれ、大公家は安泰かと思われたのですが、ヴァシーリー三世は突然、腰に腫瘍ができてしまい、大量の膿を出しながら死んでしまいます。
残された大公妃エレーナは、叔父と愛人を摂政にして統治をするも、先代大公によって特権を削がれた大貴族たちが権力闘争を始めます。そのなかには、先代大公の弟たちもいました。
玉座を狙う義弟たちを恐れ、エレーナは牢獄に入れて、餓死させます。それに反発した大貴族たちの陰謀により、突然、エレーナは死んでしまいます。だれもが毒殺だろう、と思いました。
そのとき、イヴァンはまだ8歳の少年でした。
まだ幼い君主を舐めていた大貴族たちは、権力闘争に明け暮れます。かつての寵臣たちを牢獄に入れ、毒殺し、裏切り、宮殿には奸計がはびこっていました。
ある時、たったひとりの信頼していた乳母まで、獄死した寵臣の妹という理由で、遠方の修道院に送られてしまいます。
孤独になったイヴァンとユーリーは、いつ捕らえられるかと恐怖しながら、ひっそりとすごします。同時に、毒薬と絞首台と剣を手中に収めれば、彼らを支配できるのだ、ということを学んでいきました。
大貴族たちの血にまみれた権力闘争に囲まれているうちに、イヴァン自身も残忍な少年に成長しました。高い塔の上から、子犬を落とす遊びを楽しみ、小鳥を捕まえてはナイフで目玉をえぐり出し、腹を割いて内蔵を取り出すことに喜びを見出しました。
臣下である大貴族たちは、イヴァンとユーリーにまともに食事を与えず、服も粗末、父の財宝をすべて盗みました。幼い君主を利用しようと考えていたのか、命は奪われませんでした。
13歳のとき、大貴族たちをクリスマスの宴に招待し、彼らの蛮行を大公として咎めます。もっとも罪が重い者をひとりだけ死刑に処し、これでおまえたちを許そう、と言いました。
大貴族たちが反発して、今度こそ、命を奪われるかもしれない――。
大貴族たちは成長したイヴァンに驚くものの、うやうやしく従います。イヴァンは賭けに勝ったことで、大公としての自信をつけ、昼は狩猟で遊び、夜はひたすら聖書を読み、勉学に励むのでした。
※その他世界史コラムは下記のブログに掲載しています。
偉人たちの素顔~世界史コラム
https://history.ashrose.net/
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