働いてるカフェに美少女が来たから、ケーキ奢ってナンパする。
時瀬青松
ナンパが好き
「お姉さん、めっちゃ美人ですね!ちょっとだけ俺とお話ししてくれませんか?」
「美人だなんて〜……。ちょっとだけよ?」
俺は
可愛いと思った子と話したり呑んだり、面倒くさいことを全部省いて、恋人気分だけを味わえるのだから。
俺は顔はいい方だし、話は聞くのも話すのも得意だし、見た目も声も厳つくないから、すこぉしばかり低めの身長も、少年キャラとして活かせる。
お得意の屈託のない笑顔で近付けば警戒されにくいので、フラれることなんて十回に一回くらいの割合だ。
今日はなかなか綺麗なオネーサンに出会えた。
あー、髪の綺麗な人だなぁ、なんて物思いに耽っていると、低い声が俺を現実に引き戻した。
「こら、誠ォ、美人見つけたら片っ端から声掛けるの止めなさいって言ったろ?昨日の今日で早速ナンパなんて、良い度胸だな?」
このカフェバーのオーナーの加山さんだ。加山さんは気さくで人の良いおじさんで、俺は結構お世話になってる。
仕事中のナンパも、店が忙しくなきゃ特に責めてこない。
ごめんなさい、ウチのバイトが、と、オネーサンに人の良い笑顔を向ける加山さん。俺もオネーサンにお礼を言って、仕事に戻った。
コーヒーの濃い匂いが立ち込めるカウンターで、出来上がったばかりのパンケーキといい匂いの湯気が立つコーヒーをトレーに乗せてお客さんに運ぶ。
キッチンで食器を洗ったり拭いたり、お客さんに呼ばれてオーダーを取りに行ったり。
客足が落ち着くまで忙しなく仕事をこなすこの時間が、俺は好きだったりする。
入って一年も経ってないの新人バイトだから仕事といっても雑用に近いけど……、俺はオシャレでいい匂いで満ちたこの空間で楽しく働けるから、それでいい。
おやつの時間が過ぎ、客足が落ち着く。オフィスで働く人々の仕事が終わるまで、少し暇になる時間が来た。
加山さんのお許しが出たので、カウンターの端っこの席に座って休憩しながら本を読んでいると、不意にカランッと音がした。店のドアが空いた音だ。
立ち上がって目をやると、アンティーク調のドアを開けたのは綺麗な……綺麗な女性だった。少しクセのついた髪をふわりと揺らして窓側の席に歩く女性は、背筋がすっと伸びていて、華奢で、歩くだけで絵になるような……筆舌に尽くしがたい、薔薇の花ような美人だった。
今まで、美人ってものはテレビや雑誌で何度も見てきたけど、彼女は何処かミステリアスで幻想的な感じがした。こんなの初めてだった。
「誠くん、オーダー行って」
「ぇあい!?」
調理スタッフの佐野さんに言われて我に帰った俺は、キョロキョロと店員を探す彼女のもとに慌ててオーダーを取りに行った。
佐野さんに返事をするときに裏返った変な声が出たのは気のせいだ。
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