第14話 マグロ職人(バイト)の1日 Pt.2
相席居酒屋 基本的に飲み放題、食べ放題、30分刻みで料金が加算されるシステムを取る居酒屋である。だが普通の居酒屋とは違い、最大の魅力は全く知らない異性の動物と相席を楽める事にある。
男はともかく、女性もここに出会いを求めに来る動物が大半だ。ただ料金は男が全持ちになるので注意。一方の女性はタダ食い、タダ飲みに来ているだけだと思われがち。頻繁に行くと店側から疑念の目で見られるので注意だ。
お互いに気が合えば楽しい時間を過ごせる。盛り上がったら、2軒目に行って更に楽しむも良し。連絡先を交換し未来を繋ぐも良し。そのまま、”キャッキャッ、ウフフ”するも良し。可能性は無限大だ。
だが全く興味を持たれなかった場合は最悪だ。一切会話がない事もそうだが、ただのビュッフェ取りになった場合は、こちらのプライドもズタズタにされかねない。
相席居酒屋、それは席に着くまでは全く未知のジャングルなのだ!
ウェルカム トゥー ザ ジャングル!
そして俺達は今、ドキドキしながら名前を呼ばれるのを待っている。
「4匹でお待ちのカワ鍋様」
「はい!」*4匹
スタッフに誘導される中、祈りを込め道を行く。鬼が出るか、蛇が出るか、はたまた女神様降臨か・・そして遂に本日の園が目の前に現れた!
「こんばんわ〜」
「始めまして〜」
キ、キタ!座っていたのはブリブリなヒョウとキツネのお姉さんだ!神様ありがとう!
「こんばんわ!」
「おなしゃす!」
「オンナ!」
「これはこれは」
一先ず、こちらの第一印象に問題ないようなのでホッとした。
早々と席に着こうとしたその時
「横、失礼シマス!」
しまった…3匹掛けの椅子だったので、俺達の内、1匹は彼女達側の方に座るしかない状況下、まさかのカワ島が。ヤツの瞬時の行動力には驚いたが、先手を取られてしまった…
「二人、お酒は何がいい?」
しまった…彼女達の酒がないと見るや否や、ドリンクを取りに行ってくるという”優しさ戦法”をカワ木に取られてしまった…
「君達はさぁ!メタルは何聴くの!?」
カワ谷は大丈夫そうだ。
そんなこんなでアルコールを持ってきたので、俺は音頭を取ることに。
「それでは、今日の素晴らしい出会いを祝いまして…カンパーーーーい!」
「カンパーーーーーーい!」*5匹
こうして楽しい楽しい飲み会が始まり、先ずはベタに自己紹介から始まった。
「私達は都内でOLしてま〜す。いえ〜い」
「いいね〜」*4匹
彼女達は俺達とほぼ同世代と分かり、学生時代に流行った物から、現在における熱いブームまで会話が弾み、ゲームをしたりで6匹は大いに盛り上がった。ここ最近で一番楽しい!
時間が経つにつれ、もしかしたらワンチャンあるかもと俺は思った(多分他3匹も)
「カワ島君、半分サイボーグってスゴ〜〜〜い」
「エヘヘ〜エヘヘ〜」
「私、なんかお腹減っちゃた〜」
「マグロのカルパッチョ持って来たよ!」
ヒョウの彼女の腹加減と俺の行動は丁度タイミングが合ったようだ。また話のネタにもなりそうだから”マグロのカルパッチョ”をチョイス。これは更なる盛り上がりが期待されると、その時は思ったが、急にヒョウの彼女の顔色が変わった。
「…私、マグロってホント嫌い」
「え」*4匹
「私も大っ嫌い!ニオイがあり得ない」
「え」*4匹
「わかる!わかる!」
「因みにさ、もし彼氏が水産関係の仕事だったらどーする?!」
「分かった瞬間、ポイ!あははは!」
「だよねー!目の前に居るだけイヤ!あははは!」
その後もマグロのヘイトが続き、俺達は内から何かがフツフツと沸き上がるものを感じていた。
「ん?どうしたの、急に静かになって?」
「ノリ悪いぞ〜」
「…舐めやがって」
「え」*2匹
「舐めんじゃねぇぞ!」
「いいか!このマグロはな!俺達が血反吐はいて運んでんだ!!」
「コノブスドモガ!」
「○○○○○○○○○め」*とっても酷い事
俺達は罵声を浴びせ、机に現金を叩きつけ、その場を後にした。
因みに超新鮮水産(株)は、この店に一切マグロは卸していない。
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