『小さなお話し』 その61

やましん(テンパー)

『遊びにゆきたい』


『これは、まったくの、フィクションであります。もし、事実としても、他所の宇宙のおはなしであり、この世界とは、一切、関係ありません。』


 

        🎢




ぼうや


『母ちゃん、遊びにゆこう。ぼく、ジェットコースター乗りたい。』


母ちゃん


『いまは、だめ。』


ぼうや


『やだい、行くんだい❗』


母ちゃん

 

『行ってもやってないの。』


ぼうや


『やってなくても、見に行きたいよ。ね、行きたいよ。行きたいよ。母ちゃん』


母ちゃん

(ちょっと、涙を流しながら)


『いまは、だめなの。父ちゃんだって、来ないでしょう?』


ぼうや


『でも、行くんだい。行くんだい。』


 ぼうやが、母ちゃんの背中を叩いた。


母ちゃん


『ぐすん。じゃあ、お墓の中の、散歩だけしようね。綺麗なお月様も出たし。』


ぼうや


『ぐすん、ぐすん、行きたいよお〰️〰️〰️❕』



 広い公園墓地は、もう、どこにも敷地の空きが無くなり、散歩する、うかばれない幽霊さんで、過密状態になっていた。


 電車も、バスも止まっていた。


 政治も、強制法を施行して以来、議員さんに、多数の感染者が出て、ほぼ、止まっていた。


 父ちゃんの、新しい、画期的新薬の製造が、間に合うか?


 『ウィルスさんの、爆発的変異が起こる前に、なんとかできれば、良かったわね。』


 医者だった、母ちゃんが、呟いた。


 『うん。ぼくが、お薬、作るはずだった。父ちゃんが、言ったもん。 』


 ぼうやが、そう、言った。


 泣くのは、止めていた。


『そうだね。』


 母ちゃんが、こんどは、泣きながら言った。


 ぼうやは、ちょっと、衝撃を受けた。



 こんな、光景になるはずでは、なかった。


 お墓は、ただ、もう、溢れていた。




 父ちゃんは、新薬の開発に成功していた。


 ここの患者さんは、快方に向かっている。


『……ふたりには、間に合わなかったが、これで、世界は、救えたかなあ。製造が可能ならばだが。なんとか、つくれるだけ、つくろう。映画のようには、行かないけどな。』


 製薬会社は、どこも、止まっていたのだけれど。


 通信インフラも、あまり、動いてない。


 一部の力が、世界支配を画策していた。


 父ちゃんは、それでも、頑張った。


 ふたりのためにも。


 製造方法を、あらゆる手段で、世界の専門家に伝えた。


『ぎりぎり、間に合うさ。』


 綺麗なお月様が、窓から見えていた。 


 




              おしまい


  

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『小さなお話し』 その61 やましん(テンパー) @yamashin-2

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