冒険者ウロクの戦闘図鑑

酔玉 火種

第1章エルミナ

族[鬼] 科[子] 名称[ゴブリン] 推奨[F~] 出現[野山森砂―海―――闇] 注意事項[集団化、眷属化、繁殖化、死んだふり]

 ◇族[鬼] 科[子] 名称[ゴブリン]◇

  族と科を合わせて小鬼種とも呼ばれる。

  体毛はほぼなく、一見耳の長い人族の子供のような姿であるが、口は耳までさけ、目は鋭く歯や爪は矢じりのように鋭利に尖っている。また、知恵がまわり、罠や毒を多用する。

  肌の色は一般的に緑色だが、生まれた環境により景色に溶け込む色合いになり、海で発生するゴブリンにはエラや水かきも存在する。


 ◇推奨[F~]◇

  見習いを卒業し冒険者を始めた者の登竜門であるが、最もFランク冒険者を死においやる魔物でもある。

  

  油断すれば熟練冒険者も死においやることがあるジャイアントキリングな魔物である。


 ◇出現[野山森砂―海―――闇]◇

  出現地域により能力が異なるため、マウンテンゴブリン、フォレストゴブリン、デザートゴブリン、シーゴブリンと分けられることはあるが、最新の分類では同一種として扱われる。


 ◇武器防具◇

  発生して数日たったゴブリンは、瘴気により石斧、錆びたナイフ、スリング、腰みのを作り出す。


 ◇注意事項◇

  集団化・・・同族を見つけると共に行動をはじめる。

  眷属化・・・主に上位の同族に服従するが、強い魔物にも服従する傾向にある。

  繁殖化・・・魔物は元来、一粒の虫の卵に瘴気がやどり、瘴気が肉体を作り、魔神が悪意ある知恵を授けて生まれる。一粒の虫の卵が樽サイズに成長するまで、わずか1日である。それ以外にゴブリンは得意な繁殖方法を持っており、捕獲した獲物の穴という穴に卵を産み付け、10体から100体のゴブリンを生む苗床にする。

  死んだふり・・・消滅が始まっても、意識があり魔石をはぎにきた冒険者へ最後の攻撃をおこなう。



 ◇ウロク談◇


 俺がようやく見習い冒険者から魔物討伐依頼ができるFランク冒険者に昇格したときの話である。


 冒険者になるため住んでいたサザンカ村から、カメリア町にでて2年がたち12歳のときに森で初めて戦った魔物がゴブリンだ。


 その頃はソロで、装備は銅の剣、木の盾、木の兜、革の服だ。


 カメリア町の近くにある森はうす暗く不気味な森で、膝丈まである草を木の盾でかき分けながら進み、おっかなびっくり魔物を探していると、運がいいことに膨らんでいる魔物の繭を発見した。


 魔物の繭とは、一粒の虫の卵に瘴気がやどり、魔物の肉体を作るために成長中の紫色の繭だ。


 繭は樽サイズに成長していて、繭の中の魔物からとれる魔石の大きさは期待できる。


 音をたてないようにゆっくりと繭に近づいていき、寝ている間にとどめをさす!


 (でやあぁぁ!!)


 パスン・・・


 振るった銅の剣から伝わる感触は、麻袋をたたいたような軽い衝撃で繭が空であることがわかった、同時にガツンと後頭部に衝撃が走る。


 「――がっ?!」


 くらっとくる意識の中で後ろを振り返ると、魔導書サイズの岩を俺の頭に叩き付けたゴブリンが着地するところだった。


 (不意打ち?!卑怯者が!!)


 銅の剣を後ろに大振りすると、ゴブリンは大岩を捨ててバックステップする。そして、腰みのにさしてある石斧を取り、跳びかかってくる。


 石斧を木の盾でガツンと受け、銅の剣を振るう。


 ザクッ


 ゴブリンの右足を少し斬りつけるが、筋肉をたつことはできず距離を取られる。傷口から墨を水に垂らしたような瘴気がゆらりと立ち昇る。


 同時に殴られた頭の傷から血が垂れてきて右目にかかる。


 再びゴブリンが跳びかかってくるので、木の盾で受け止めて、銅の剣を振るうが、そこには何もいない。木の盾に重みを感じ目線を移動すると、木の盾にへばりついているゴブリンがにやりと笑う。


 「ゴブッ!」


 ガツンと頭に衝撃が走るが、やけくそ気味のカウンターで銅の剣を突き上げる。


 ザクッ


 銅の剣がゴブリンの首に深々と突き刺さり、首から濃い瘴気が立ち昇り魔石を残して消滅する。


 「2回頭殴られて、銅貨2枚分の魔石・・・飯2回分か・・・」


 パカンと割れて、木の兜が足元におちる。


 「赤字じゃねーか・・・ん?なんか木の盾臭くねーか?う、うんこついてるじゃねーか!くそゴブリンがっ!!」


 その日、夕暮れまで木の盾を川で洗った。魔物初討伐での散々な思い出である。

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