6.太郎からのメッセージ下
「あしたにでも、あって おはなし しましょう。SNSでは、これいじょう うまく つたえられる きが しませんので。」
と、先手を打つようにあちらから先にメッセージが届いた。
「いや、待て。君が何者か分からない以上、直接会うというのは」
すぐに打ち返す。さすがにいきなり対面と言われては、警戒せざるを得ない。だが、あちらから返ってきた答えは
「ごぜん10じに ××えきの かいさつで まっています。ぜひ きてください。」
という一方的なものだった。駅は、俺の家の最寄りだ。さすがに、少々恐怖を覚える。
「なんで住んでいる場所まで知っているんだ?というか、君は何者なんだ?」
そしてやはりその質問には答えずに、
「では、まっています。」
とだけ返ってきた。返事はとてもシンプルなものだった。何かAIのようなものと会話をしているような、手応えのないやり取りだった。
その後、何通かメッセージを送ったが、既読は付かなかった。もう眠ってしまったのか、やはりこちらからの要望には一切答えない主義なのか。
さて、どうしたものかと首をひねる。相手の得体が知れない以上、あまり関わるべきではないとは考えられた。
だが、それにしてはあちらはこちらのことを知り過ぎている。「夢」のこと、彼女のこと。
タンポポを積んで歩きながら、俺は考えた。そして、家に着く頃には結論を決めた。
結局、彼は明日待ち合わせ通りに駅に向かうことにしたのだ。バックパックは、緑と黄の植物で溢れていた。
その日の夕食は、あるもので適当に食べた。
インスタントのラーメンに卵を落とし、冷凍しておいた葉物を入れて、一緒くたにお湯を注ぐ。
時間をかけて調理をする気分ではない時にとる方法だった。タンポポは、雑に茹でてから水に晒した。
ベッドに横になってぼんやりしても、明日何が起きるかの予想は付かなかった。こんな時に「夢」が教えてくれれば良いのだが、そう思い通りにはいかない。
けれど、楽しみでない訳ではなかった。
夜が更け次第に瞼が落ちていく中で、俺は自然と、彼女の泣きそうな微笑みと白い肌を思い出していた。
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