第45話 雪像と屋台

 雪像作りは中々楽しかった。大量に雪を使ったが、雪なら都市内に文字通り山ほどある。


 作った雪像は、灰色熊を初めとして、巨大タロー、縮小版都市会館、都市の創設者リリアナさん。リリアナさんは広場にある銅像を真似して作った。


 後はアスレチック用に雪の城も作った。中に入ることが出来て、登ると氷の滑り台もある。力作だ。子供達も遊べることだろう。魔術で念入りに凍らせてもらったから、耐久も問題ない。


 オレ以外も作れるように、雪の柱も何本も作っている。雪像を作りたい人がいれば削ってもらうだけだ。

 雪像が出来上がっていく度に、ギャラリーも増えて来た。興味深そうに見ている人もいるので、雪像作りに手を上がる人も出てくると思う。


 うん、こんなもので良いんじゃないだろうか?もっと必要なら依頼が来るだろう。


「じゃあ、今日はとりあえず終わりにしましょうか。皆さんお疲れ様でした」


「おう、お疲れ」

「お疲れ様です」

「お疲れ様でしたー」

「でしたー」


 冒険者達が帰っていく。オレは職員さんと一緒に報告に行くとしよう。


「コーサクさん、さっきの干し肉まだある?」


 ジーンが話し掛けて来た。相変わらず空腹なんだろうか?まあ、成長期だしな。


「あるよ。はい、袋ごと持ってっていいよ」


 まだまだ大量にあるからな。食い終わるのはいつだろうか?そもそも干し肉そんなに食べる機会ないのに。


「ありがとう!!」


「コーサクさん、いつもありがとうございます。ジーン、お前はあまりコーサクさんに迷惑を掛けるな」


 長男らしくグレイがジーンをたしなめているが。


「気にしなくていいよ、グレイ。この干し肉家に余ってるから。それに別に迷惑じゃないよ」


 オレは人に食わせるのも好きだからね。


「そうですか?それでもありがとうございます」


「どういたしまして。あ、エリザは蜂蜜クッキーどうぞ」


「わあ!ありがとうございます!」


「エリザには氷の魔術かなり使ってもらったからね。こちらこそありがとう」


 オレは魔術使えないから分からないけど、魔術使うと疲れるらしいからね。


「いえいえ、この都市のお祭りですからね。私たちも手伝うのは当然です!」


「ああ、そうだな」


「むぐむぐ、うん」


「そっか、それはいいことだね」


 うん。いいことだ。自分の住む場所に愛着があって、そのために動けるのはとてもいいことだと思う。


「じゃあ、オレは報告に行くから。3人ともまたね」


「ええ、また」

「またお願いしますねー」

「む~む~」


 ジーンは「バイバイ」って言いたかったのかな?口の中は干し肉でいっぱいのようだ。

 さて、オレはギルバートさんに報告に行きますかね。




 都市会館に入ると、そこは戦場だった。


「おい!場所の選定は終わったのか!?」

「その資材こっちです!」

「必要数の概算出しました!!」

「職人連合との調整行ってきます!」


 うはあ、見事な修羅場。


 中では職員さん達が鬼気迫る様子で動き回っている。祭りの開催まで残り2日とちょっとだ。それこそ寝る暇もないんじゃないだろうか。


 職員さん達の邪魔にならないように端っこを移動する。事前に聞いた会議室を目指した。


「失礼します」


「おう、来たか」


 会議室に入る。ここでもギルバートさんと職員さんが忙しく動いていた。


「だいたいの状況は聞いた。中々でかいのも作ったようだな」


「ええ、ちょっと頑張りました。けっこう楽しかったですよ?」


「ああ、出来上がったのを見て、職人達でも雪像を作りたいと言っているヤツが出ているそうだ。雪像の数には困らなそうだな」


「それは良かったです。賑やかになりますね。他に仕事はありますか?」


「いや、今のところは無いな。雪像用に雪を固める方法も職員が理解した。必要なら後はこっちで増やせる。むしろコーサクは雪で作らせたいものが他にあるか?」


 作らせたいもの、雪像は作ってもらうしなあ。


「照明の魔道具を入れる、雪の灯篭でも作りますか?夜は綺麗ですよ、きっと」


「そうか……ガルガンに話してみるとしよう」


「魔道具足りなかったら作りますね」


「いや、照明の魔道具は安く出回っているからな。在庫もあるだろう」


 まあ、そうか。照明の魔道具は一般家庭でも使うしな。値段は手頃で流通量も多い。


「そうですか。他に仕事なければ、オレも屋台を出したいんですけど、いいですか?」


 祭り、一緒に回るパートナーがいないとすぐ見終わるんだよね。1人だと虚しい。それにやりたいこともある。


「ほお?屋台の管轄はリリーナだが、まあ、ここで聞いておこう。出す店舗数と、場所の希望はあるか?」


「1店舗だけですね。場所はどこでもいいです。余ったとこに入れてください」


 オレもまだまだ、この都市では新参者だからな。屋台の場所は遠慮しておこう。


「そうか?分かった。場所が決まったらリックにでも知らせよう」


「ええ、お願いします。ではギルバートさん、お仕事頑張ってください」


「おう、こっちも助かった。またな」


 ギルバートさんのいる会議室を後にする。


 さて、孤児院にタローを迎えに行って、帰ったら職員さん達への差し入れ作りだな。

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