6
「……百合、ちゃん?」
蹲る彼女を見て、反射的に声をかけてしまった。
ほんの一瞬時が止まったかと思うような静寂に包まれる。もしかしたら声をかけて欲しくなかったのじゃないかと、その場から一歩踏み出すのを少しだけ躊躇したけれど苦しそうに咳き込む彼女を放っては置けなかった。
背をさすろうと近づくと、彼女のそばに赤い花が落ちていることに気がついた。
それは、ほのかに甘い香りを纏い私を惑わせる。
これか、先生が言っていたのは。
「夢に出てくる人は、花吐病の可能性が高い。もしその花に対して好意的な感情を抱いたのなら、ほぼ確実に君は花食病だと言っていいだろう」
ああ、その花を口にしたい。そう思って仕方がない。
けれど今はそんなことをしている場合ではなかった。
「百合ちゃん、しっかりして!」
呻き、苦しそうにする彼女をそっと支えトイレへと向かう。
背を叩き吐かせると零れ出たのはやはり花で、私はたまらなくなって花をこっそりと手に取った。
口にしたその花は、とても甘かった。
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