第27話:敗者は悪へと堕ちる
リヒター…
私は彼をずっと追っている、あの二人が暴れて家が壊れてしまって、働く羽目になった彼は可哀想だと思った。
あのクソアマ2人のせいだ、あいつ等が暴れるからリヒターがこんな目に…
早く彼を助けたい、解放してあげたい、私の元へ帰ってきてもらいたい。
それだけだ。
あれから私はあの2人を調べた。
確実にあいつ等を殺す為にはどんな相手かを知る必要がある。
だが…リヒターを追っていると、あいつ等の強さをこの目で見てしまった
彼女達は光と闇の魔法を使う珍しい奴だ、あいつ等が暴れる姿は人間を辞めてるレベルの強さだった。
荒くれな冒険者を一方的に痛めつけてるのだ、白い方は鞭を持ち男の背中を延々と叩き、黒い方は手に持っている毒で脅している。
この戦いを見て、今の私では勝てないと察した。
その後はリヒターを追うのを一時的に止めて、あいつ等に勝つ為の方法を必死に探していた、図書館へ行き徹底的に本を読み漁った。
私は可能性を感じる内容を見つけた。
「アブソープション」
オカルトライターの書いた本だけど…歴史的に古い話でもあり、真剣に読んでいた。
この本に書いてあったのは、人や魔物の一部を体内に入れる事で相手のもつ能力を自分の物とする禁忌とされる物だ。
この理論だと、喰らえば喰らう程強くなれる訳だが…勿論代償が必要だ。
この能力を得る為には、1000体の魔物を殺す事と大切な物を自分から手放す事だ。
…私は迷わない、リヒターを取り返す為ならば。
私は家に帰り、酒に溺れた父親の後ろに立つ…ナイフを持って。
1000体のモンスターを狩る、これは苦労する。
スライムを延々と魔法で狩るのも限界がある、一日頑張っても60体程度だ。
私は17日間、延々と街近辺のモンスターを狩り続けた。
朝から晩まで、寒い中ずっとだ。
だがこの苦労がいつか実を結び、あいつらを殺す力となり、リヒターを取り戻す事になると。
結局18日も掛かったが、1000体のモンスターを狩った。
最後のステップは…儀式だ。
本に書いてある魔法陣を描き、中心に父の屍を置く。
そして、自分の親指を切り屍に落とし長い呪文を延々と読み続ける。
1時間程経ち、周りの雰囲気がどんよりと重たくなった。
私の錯覚かと思った、けど本当に重たい。
すると、屍からかすれた声で話出したのだ。
私は驚いた、死体が喋っている…
「誰だ、我を呼ぶものは」
「私よ!」
「小娘よ、何を望み、我を呼び起こした」
「私は倒した敵が居るの、その為に『アブソープション』が必要なの!」
「…そんな魔法は存在せぬ、何が望みだ」
「そんな…私はリヒターを取り戻したいだけなのに…!」
私の希望は打ち砕かれそうになった、この長い日々をただ魔物を1000体倒し父をも殺した、それが無駄だったのかと思った、しかし私はまだ運には見放されていない。
「貴様は『業』を背負う事となる、その覚悟は有るのか?」
「有るわ!どんな事を犠牲にしても、私は彼を取り戻す!その為力が欲しいのよ!」
「男の為か…良かろう。では我が力を授ける為に契約だ、我が名は悪魔ガミジン、其方に『ネクロマンシー』を授けよう」
私はこの悪魔と契約をした。
変わった事は、この『ガミジン』と言う悪魔が見えて話せる事だ。
この悪魔は、小さな馬の姿をしていて、が質問した事を真摯に答えるのだ。
そこらに居る人間よりも頼りになりそうだ。
私は早速質問をした。
「このネクロマンシーの使い方を教えて」
「ネクロマンシーとは、死者や霊を操る魔法で無敵の軍団だ。使い方は簡単だ、ただ念じろ、呼びたい死体や霊をだ」
「分かったわ、注意点は?」
「ない、無条件で何も失う事無く使える。だが…お前の願いが叶った時、我は代償を貰う。お前が一番大切にしている物をだ」
「分かったわ、その時になったら渡すわ」
こうして新たな魔法、ネクロマンシーを手に入れた。
だが…いきなりあいつ等に挑むのは愚策だ、此処は自分の力を使いこなし、何が出来るのかを理解する為に…実験をしていこう。
リヒター、待っててね。
貴方の為に私はどんな罪でも犯して、貴方をこの手で掴むわ。
こうして私は自分の力を知る為に、ある事件を起こした。
それは…彼と赤い糸で結ばれている事を感じた出来事でもあった。
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