第25話:リヒター、イッツ、ショータイム!

その冒険者の男を直ぐに魔法で傷を治した。

初めて見る戦闘での負傷に実戦の怖さを感じた。

この人がどれだけ強いのか等は分からないけど…もし自分より強い相手だと、僕も彼の様にボロボロになり、最悪死ぬのではないかと…


僕達は森の奥へと進んだ。

足場は悪く、大きな木の根が出て居たり、一歩踏み出す度にパキ、パキと枝が折れる音がする。

僕は緊張していた、初めての事ばかり、戦う事の恐怖を感じている…そしてもし、彼女達に何か遭ったら…と考えると心配でもある。

そんな僕の心配を他所に、彼女達はと言うと…


「やはり自然が一番だな…私は洞窟とか位場所が良いが…」


「ふふ、ベルベットらしいですね、私は此処でも十分良いわ、光があるし」


「にしても…何故あいつ等は攻撃してこないんだろうな?」


「そうね~多分待ち伏せポイントでもあるんじゃないかしら?」


彼女達の何気ない一言に驚いてしまった。


「え?!居るの?!」


彼女達はきょとんとした顔で僕を見つめる。


「ああ…魔法で探知してるからな…」


「あ、それでしたら、『サーチ』と呟いて下さい」


彼女に言われた通りに呟くと、頭の中に何が居るのかが分かった。

まるで地図の上に印をつけている様で、何処に何が居るかが直ぐに感じ取れる。


「これは、自分の周りに何が居るかを知る為の魔法です、この魔法は属性関係なく使えるはずです、どの属性にも属さない魔法を無属性魔法と言います。ただ、使用するには、一定の魔力に到達してなくてはなりませんので、誰もが使える訳ではありません、リヒター君は魔力が高いので問題なく使える筈ですよ」


レイが詳しく教えてくれる、流石レイ。先生みたいに分かり易い。

そんな事よりも、自分達の後ろに居るゴブリンをどうするかだ。


「ねぇ…あの後ろのゴブリン、倒してもいい?」


「ああ、構わんぞ?」


「リヒター君、初めての戦闘!お姉さんの脳裏に焼きつけなきゃ、ああ、でも心配だわ…私が…あああ…どうすれば…」


取り合えず、レイは放置して、初めての戦いをする事にした。

数は5匹、木の陰に隠れて、扇状に分かれている。

ベルベットから教えて貰った、ブラインドガーディアンで突いてみようと思い、黒い剣を彼ら目掛けて飛ばす。

自分でも驚いたのだが…黒い剣は真っすぐ彼らの隠れる木へ飛んだのだが…太い木を貫通して、5匹のゴブリンは絶命した…

それを見ていた二人は大喜びしている。


「うむ、流石だリヒター、その魔法を完璧に使いこなせてそうだな…良いぞ」


ベルベットは、僕の頭をわしゃわしゃと撫でる。


「リヒター君、偉いわね~、お姉さん心配してたけど、強くなってるわね!」


レイは僕の手を取り、ニコニコと笑っている。


実際この戦闘でゴブリンがどれだけ強いのか、自分はどれ位強いのか等全く分からないのだ。まだ不安は有るけど、取り合えず倒した証として、ゴブリンの持つ指輪を持って行く事にした。


この後は延々と魔法でゴブリンを倒す「作業」と化した。

と言うのも…僕が有る事を閃いたのだ。

『サーチ』と『ブラインドガーディアン』を繋げて、自動的に攻撃する様に出来ないかと考え、試してみた。

すると…上手く行ったのだ…驚いた…

それを見た二人は…当然大喜びした、彼女達曰く「天才」と大げさに言うが…


こうして僕達は森を散歩してたら、ゴブリン100匹近く倒していた。

100匹だから…5万ゼニーも稼げたし今日はこれ位にして帰ろうと思ったその時だ。

ドーン、ドーンと何かが地面を鳴らして歩いている。

木は倒され、遠くからでも見える程大きな緑色の巨体が僕達目掛けて近づいて来る。

右手には大きな剣を持ち、僕を睨んでいる気がした…

自分の高さの数倍はある敵を目の間にして、僕はベルベットとレイに震えた声で聞いた。


「ね、ねぇ…あ、あれは…何?」


「ゴブリンの親玉じゃないか?」


「んー100匹も殺したからね、ご立腹なのよ、きっと」


「そ、そうですか…あ、あんなのに…勝てるかな?」


「ああ?ナイトフォールを使えば一瞬だと思うが?」


「え?!お姉さんの知らない新しい魔法?見たい見たい!」


呑気な回答を貰い、覚悟を決めてナイトフォールを出す。

相変わらず、禍々しい黒と紫色をした魔人だが…ベルベットが言うようにやってみよう。

試しに、斬撃を飛ばしたが…ゴブリンの親玉は避けようともせず、手に持つ剣で斬撃を受け止めようと構えた。

が、斬撃の方が強かったのか、剣は簡単に折れてしまい、ゴブリンの親玉は真っ二つに切断され、大量の血が木を濡らし、絶命した…

その場で『エッ』と気の抜けた声を出してしまった。

2人は後ろで拍手している…


「流石だ、リヒター、良いぞ。今度また魔法を教えてやる」


「ずるいです!私もリヒター君が使ってくれる魔法を教えます!」


「う、うん…二人共、宜しくね」


んー…敵の強さが本当に分からないけど、取り合えず遺留品だけ回収してギルドへと向かった。

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