第18話:煽ったのはそちらでしょう!

待ちに待った期末試験、僕は他の教科をしっかり勉強したが、何よりも力を入れたのは、魔法だ。あの先生を驚かせてやる!


そんな意気込みで僕は試験を受けた。

試験前にベルベットとレイに呼ばれた。


「リヒター、あの時の様にやるんだぞ?良いな?」

「リヒター君、緊張しないでね、落ち着いてやるんだよ?」

「うん!頑張るよ、ベルベットとレイ!」


そう言うと、彼女達は僕のほっぺにキスをした。

突然で驚いてしまったが、彼女達は顔を赤めながら景気づけてくれた。


「おまじないだ…」

「ふふ…先にご褒美です、これで受かりますよ!」

「ありがと、二人共、頑張るよ!」


そう言って僕達は試験へ向かった、試験は校庭で行われる。

基本的には、各属性に合わせて試験をしてくれる。


校庭に設置されたテーブルに座る、ニナ・フォールと取り巻き達。

彼女に試験を受ける為、学生証を見せると、小ばかにする様な表情で、嫌味を言われる。


「毎回毎回…懲りないわねぇ、使えないんだから出なくても0点よ?」

「…」

「まぁ、良いわ。恥をかくのは貴方だし」


僕は何度このおばさんに「黙れ、クソババァ」と言いたかったか。

皆の前で笑い者にして、何ど悔し涙を流したか。

でも、それは今日は無い、この人に…こいつにドヤ顔してやる!


試験は淡々と進んだ、火属性の生徒には、大きな炎を出して的に当てろとか、木属性は、どれだけ早く植物を育てられるか等、多種多様だった。

だが…光と闇は無い、どんな顔をするか楽しみだ…!

そして僕の出番となった。


「次はー…魔法が使えない、リヒター・ウェイン、前へ」

「はい」

「使えないのは知ってるけど、属性は?」

「闇と光です」


ニナは顔をしかめた


「貴方、嘘は良くないわよ?」

「嘘は付いてませんよ」

「魔法が使えない落ちこぼれが闇と光ねぇ…有り得ないわ」

「…で、先生、試験内容は?」


試験内容を聞いたが、彼女はそれを伝えようとせず、まずは証明しろと言った。


「ブラインドガーディアン」


そう言って、闇のマントを出した、しかしニナは鼻で笑った。


「それだけ?たったそれだけで魔法が?どうせなんか使ってるんでしょ?」

「これを見ても…そう言えますか?」


そう言ってマントの姿形を変え、動かして見せた。

剣を浮かせたり、地面に刺したりしたが…


「ふ、ふん!これじゃ火力が分かりませんねぇ、10点かしら?」


彼女の顔から余裕は感じられない、予想外で何も用意していなかった、そして知識もないと見た。


「火力ですか?では…一つ、今から出しますが、責任は全てニナ先生にあるという事で宜しいですか?」

「何を言っているの?」

「今から出す魔法で、起きた損害は全て先生の責任ですよね?と言う確認です」

「ええ、良いわよ。どうせ大した事は無いわ、それに、魔法が外に飛ばない様に防御魔法を全体にかけているから、問題なんて起きない。能無しと呼ばれてた子がそんな火力の高い魔法が…」


「能無し」この言葉でスイッチが入った。

本当は、ナイトフォールを出すつもりだったけど…気が変わった。

校庭一個、焼け野原にしてやる…

ニナは楽観視したのだろう、魔法が使えなかった奴が何が出来るのかと。

使えたとして大した事は無い筈だと、でもそれは間違いだ。


「ダークイグニション!」


そう叫ぶと、空が突然暗くなり、黒い球体が誰も居ない校庭の奥へと落ちて行く。

地上にその球体が当たると、大きな振動と爆発音が学園内に響き、きのこ雲と爆風が全てを襲う。

生徒は悲鳴を上げ、先生は慌てふためく、学園の窓ガラスが割れ、木は風でなぎ倒されていく…

風が収まり、空も明るくなった所で、教師や生徒たちが校庭を見ているなら、ニナに聞いた。


「これが僕の魔法ですけど…どうしましょうか?まだやりますか?」

「い、いえ…合格です…」

「あのー、先生、試験内容は何でしょうか?まだ聞いてませんし」

「も、もう止めて!もう良いから!100点あげるから!これ以上暴れないで!」


彼女は涙目になりながら懇願した。

それはそうだ…校庭に大きな穴が開き、校舎もボロボロ、先生の張った防御とやらは、一瞬で崩壊、これ以上暴れたら、学園が文字通り崩壊するからね…!

まぁ責任はあなたですけどね。


試験を終え、ベルベットとレイの所へ行くと…

ベルベットからキスをされる、勿論激しい方だ。


「?!」


教師と生徒の前でキスをするなんて!恥ずかしいよ!

キスを終え彼女を見ると、彼女の目は怒りを含んでいた…


「リヒター…お前は後で説教だ、あの魔法がどれだけ体に負担をかけ魔力を消費するか分かっているのか?確かに…私がしっかり説明しなかったのも悪いが…次からは理解した魔法を使うんだ、良いな?」

「あ…」

「…レイ」

「…リヒター君、こっち向いて」


レイからも激しいキスをされ、男子生徒からは憎悪の目を向けられる。

視線が痛い…

唇が離れ、レイは僕の頭をコツンと拳で叩いた。


「リヒター君、お姉さんも怒ってます!あれはダメよ。私達の魔力を渡さなかったら、昏睡状態になってたわよ…」

「え…」

「もう!お姉さんを心配させないでよ!リヒター君はもう少し冷静になろうね!」


こうして無事にテストは100点を取ったが…

家に帰ると、ベルベットとレイの説教を受け、罰として彼女達の要求を呑む事となった…それは…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る