前世は極悪魔王で友達ゼロだったので、現世は友達を作って青春しようと思います。

第35話 僕は寂しかったんだ

「お前って前世が魔王で、しかも森川が嫁だったんだって？」

噂を耳にした吉崎が早速聞いてくる。

「なんか尾ひれがついてるー・・・」

嫁ってなんだよ。嫁って。

「森川を女子から庇ったんだろ？イケメンじゃん！！お前！かばい方は妙だが」

「イケメンに言われても嬉しかないよ。嫌味に聞こえる」

「しっかし、お前ってほんっとう面白いよなー。見ていて飽きない！」

「やめてくれ、そんなセリフは可愛い女の子に言ってくれ」

もーダメだ。僕の高校生は終わった。終わってしまった。

「てか、前世とかなに？お前、前世の記憶でもあるの？」

あるって言っても信じないだろ。僕だって未だに信じられないんだから。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「まあまあドンマイ！一部の人たちからは好評だよ！女の子守って偉いって！」

「一部じゃんか」

「いや、でもきっと森川は・・・お、噂をすれば」

「へ？も、森川！？」

森川が僕のところへやって来た。や、やめてくれ！さらに目立つ！！

「吉崎。こいつ借りていいか」

「おーいいよいいよ」

「え、ちょ、ま」

「ほら行くぞ」

「吉崎ーーー！！！」

「行ってらっしゃーい。うは、面白」

僕は周りの視線が見守る中、森川に連行されて行った。連れていかれたのは、あの中庭だった。

「も、森川。あのさぁ」

「昨日はどういうつもりだ」

「え？」

森川はとても怖い顔をしていた。

「昨日は私を庇ったつもりか！？」

「え、いや、」

「私はお前に庇われたくなどない！！馬鹿にするな！」

森川は叫んだ。

「なんっで、お前が、私をっ」

「え、えええー」

どうしよう。泣いちゃった！！うっわー僕、また女の子泣かせちゃったよ！！

「お前は私に殺されたんだぞ！！それなのになぜかばう必要がある！？しかも自分を犠牲にしてまで。馬鹿にするのもいい加減にしろ！」

「・・・一人って嫌じゃない。友達が居ない学校生活なんてつまんないよ」

僕はずっと一人だった。前世でも現世でも。

「君に寂しい思いをして欲しくなかったんだ」

そうだ。僕は寂しかったんだ。前世では周りに恐れられて孤独で、現世でも周りを馬鹿にしたフリをして孤独で。

「僕はずっと友達が欲しかったんだ」