第27話 サボるか

「僕の場合は、魔王の時の記憶がないからね」


ピキッと固まる森川麗子。

あー。これ、言っちゃ駄目なやつだった。僕はなにをしたのか記憶がないが、相当こいつに嫌われている。


「記憶が無いやつは楽でいいよな」


「え?」


「私も前世の記憶なんか無くしてしまいたい」


森川麗子はそっぽを向いた。辛そうに唇を噛み締めてる。


「森川」


「授業が始まる」


森川麗子はそのまま、校舎に入っていった。


一体は僕は、何をしてしまったんだろう。そりゃあ、元魔王なんだから色々しでかしたんだろうけど。残念なことに、僕は前世の記憶があるだけの、ただの平凡な男だ。


森川麗子。いや、ウィル・ウォーカー。僕は君になにをしたんだ?


「っ・・・あー、チャイム鳴っちゃった」


考え事をしていたら、授業が始まってしまった。もう面倒臭い。サボるか。


僕は保健室に向かう。サボりの時は屋上を想像するかもしれないが、残念ながら屋上は開いていない。


「失礼します」


保健室には誰もいない。先生どこいった。


「おやおやおやぁ?珍しいね、一ノ瀬君。サボり?」


「ふ、ふわ、み、宮野さん!?」


ベッドの上で、宮野さんが僕に手を振っていた。




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