第24話 鳴呼、ストーカーよ

「あー。もうこれ何なんなんだ」


自販機の前で、仁王立ちになっている森川麗子を見かけた。

無視をしようかと思ったが、困ってるみたいなので声をかけてみる。


「・・・どうしたの?」


「っ!?一ノ瀬葵!?」


森川麗子は警戒心全開で、僕をみる。


「なんで、自販機の前で仁王立ちになってんのさ。早く決めて買いなよ。君が怖くて近付けない子が、後ろに沢山いるよ」


可哀想に。大人しそうな生徒たちが、固唾を飲んで僕らを見守っている。

僕も炭酸ジュースを買う。この炭酸ジュースは自販機限定で美味いんだ。


「それは、そうやって買うのか?」


「それって自販機の事?」


「自販機?」


「は?」


やっぱり・・・。


「森川麗子さん、いつ思い出したの?前世の記憶」


「そ、そのことはここで言うな!!こっちだ!」


こうして、またズルズルと森川麗子に引きづられる。あー、また噂になる。

森川麗子はこの前の中庭に、僕を連行した。


「前世の事を思い出したのは、ほんの一年前だ」


僕より前だな。


「だが、それ以前の森川麗子としての記憶が吹っ飛んでしまったらしい」


「思い出したきっかけってある?」


「きっかけ?」


「うん。僕の場合は階段から落ちて、思い出したんだけど」


「ああ。私の場合は、ストーカーに襲われて、押し倒された時に頭を打って思い出した」


「ええ!それ、大丈夫だったの!?」


「あ、ああ。私は石頭だからな」


「いや、ストーカーの方だよ。襲われそうになったんでしょう?」


「私を誰だと思ってる。ウィル・ウォーカーだぞ。ぶん殴ってボコボコにしてやった!」


鳴呼、ストーカーよ。可哀想に。

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