現状確認中
改めて、現状を確認しよう。
隠れオタクだった俺は、普段通り夜自室のベッドで眠り、目が覚めたら見知らぬ島の砂浜に打ち上げられていた。
更に性別が男から女、しかも爆乳神楽舞衣装で黒髪ロングヘア美少女になっていた。
ちなみに体つきはムチムチだ。
エロイです。自分で言うのも何だけどエロイです。
多分、ミニスカ系キャラのコスプレをして、大型同人イベントに参加するとカメコ取り囲まれて、ローアングルで写真を撮られまくるね!
後はそうだな。短パンとかスパッツ、競泳水着を着た状態で座ると尻が大きいからエロイと思う。
うん、自分で言ってて、ちょっと興奮してきた。
――落ちつこう。
えーっと、跡部俊和という十五歳? くらい少年(良く見ると結構美形、ショタが好きなお姉さん方が好きそう)に、俺は島を案内してもらった。俊和は栄養不足なのか、遺伝なのか分からないが、かなり身長が低く、全体的に痩せている。年齢を聞かなければ中学一年生くらいと思ったよ。
それで、この辺りは八つの島があって、この八風島は八つの島の中心にある。
この島は俺が思っていた以上に広い島で。島民は多い時で千人ほどが暮らしていたらしい。
エイリアンが来る前から、過疎化が進んでいて島の人口は四百人程度。それでも、自給自足が出来たらしい。
島には大きな山が三つほどあり、湧水やため池などもあって、小規模だが田んぼや家畜のニワトリもいて、驚いた。
詳しく話を聞くと、俊和のお婆さんが幼い俊和の為に頑張ったようだ。
「俊和、あそこは?」
「ん、ああ、お墓だよ。婆ちゃん達の」
エイリアンの襲撃された時、墓地は破壊されたらしい。
遺体は時間をかけて俊和のお婆ちゃんが集めて、大きな墓を作ったらしい。
俊和も最初は死体や骨を怖がっていたが、徐々に慣れていきお婆ちゃんの手伝いをしたようだ。
小学生くらいの少年が、親しい人達の死体を埋葬するというのは、どれだけ心に負担が掛かったのだろうか?
そして、幼い孫を一人で守っていかなければならなかった俊和のお婆ちゃんは、凄まじい人だと俺は思った。
「拝んでもいいかな?」
「え、あ、うん。いいよ!」
俺の言葉に嬉しそうに笑う俊和。
出来れば、人が住んでいる本土へ連れて行ってあげたいけれど、まずは練習しないと。
実は歩くのも違和感を覚えている。男の身体から、この身体になって身長が五センチほど縮んでいる。
目線が低い、それでも身長は少女にしては高めだ。
大和型だからだろうか? 全体的に身体が重いんだよね。
胸だけが重いわけではなく、意識すると全体が重い。
ムチムチ(デブやぽっちゃりではない! デブやぽっちゃりではない! 大事だから二回言うぞ)な身体は(二次元)、エロくて好きだけれど。自分がその身体になると思ったより大変だ。
胸が大きい女性達の「大きいと疲れる」というのも少しだけ分かる。
ただ、この身体は少し特殊なのか。胸は揺れるけれどそこまで激しく揺れない。
試しに身体を横に強めに振っても、あまり胸が揺れなかった。
AVとかエロゲとかで、胸の揺れをじっくり観察していたから、この爆乳の揺れが硬いことが分かる。
やはり、戦闘艦だからだろうか? 戦闘する時にあまり揺れると邪魔だから、しぜんと硬くなった、とか?
「付いたよ。ここが婆ちゃん達の御墓、――っ」
「え、あ、うん、分かった」
坂道を登り切り、俺が顔を上げると少し先を歩いていた俊和がこちらを振り返ると驚いた顔になったが、直ぐに前を向いて歩きだした。
俺もその後に続く。しかし、この世界に来た理由は分からないけど、元の世界に戻れないことを考えると、憂鬱だな。
歩くとそれなりに揺れるこの爆乳が微妙に邪魔だ。
俺は両肩をぐるりと回して、質素な小型冷蔵庫サイズの丸い石の御墓の前に移動する。
「お花くらい、どこかで摘んでくれば良かったね。俊和」
「あ、そうだな」
小型冷蔵庫サイズの石の前には木製の台があり、その上には少し枯れた花が入った花瓶と汚れた水が入ったコップがあった。
「姉ちゃん、ちょっと掃除して言っても良い?」
「うん、いいよ。手伝う」
俺と俊和は墓の掃除をしてから、ここで死んだ人たちへ祈りをささげた。
それと、俊和のおばあちゃんには、この島を離れる時は俊和も連れて行くと伝えた。
ここに俊和を置いて行くという選択肢はない。
この身体になる前、イケメンは全て死に絶えろ! と常に願っていた俺だが、家族や親しい人達を失ったショタをここに置き去りにするほど、鬼ではない。
まあ、悪いイケメンが事故で死にかけていたら、見なかったことにしてその場を立ち去るか、トドメを刺すけど。
「それじゃあ、そろそろ日が落ちてきたし、今日はこの辺で帰ろうか」
「…………」
俺の言葉に、固まる俊和。え、いきなりどうした? って、泣きだした!!
「え、え!? ど、どうしたの?!」
「な、何でもないよ!」
「いやいや、そんなわけないだろ!」
「何でもない! 何でもないの! 帰るぞ、姉ちゃん!!」
そう叫んだ、俊和はどこか嬉しそうに泣きながら笑っていた。
そこで鈍い俺でも分かった。
誰かに、家に帰ろう。と言われて嬉しかったんだろう。
去年の冬に祖母を亡くして、おおよそ四カ月。古いカレンダーしかないので現在はおおよそ四月の下旬と俊和は言っていたが、約四カ月この島で一人で生き残っていた少年は、人を求めていたはずだ。
だから、俺は俊和の為にこう声をかけた。
「手を繋いで帰るか?」
「ぶふっ、な、何を言い出すんだよ!」
「泣いている子供を慰めようかと」
「ば、馬鹿にすんなよ!」
そう言って、ズンズン先に進んで行く俊和。
けれど、直ぐにピタッと立ち止まり、こちらをちらちら見ながら俊和は言った。
「姉ちゃんが、どうしてもって言うなら……つないでやるよ」
ぶっきらぼうにそう言う俊和を見て、弟が居たらこんな感じなのだろうかと微笑ましくなった。
「な、何を笑ってんだよ!」
「別にー! さぁ、手つないで帰ろう、それと帰ったら話しを聞かせてくれ。まだ、この世界のことを知らないからな」
「い、いいけどよ。俺が知っていることなんてあまりないぞ」
「問題ないよ。寧ろ、些細なことでも知らないと大変なことになりそうだからな」
俺は俊和と手を繋いで、俊和の家に帰った。
そして、帰る途中で思った。十五歳の手にしてはもの凄くゴツゴツとしていて、この少年の生活がいかに大変だったのかが、少しだけ分かった。
更に今日少し島を歩いてみて分かったけれど、俺の今の身体は男の時よりも遥かに高い身体能力と体力を持っている。
だから色々と俊和のことを手伝ってあげよう。これから一緒に暮らすんだし、穀潰しにならないようにしないとな。
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