第19話 陽華人民共和国

「大総長、龍々の封鎖の決断を」


陽華人民共和国の国家元首大総長は、決断の時を迫られていた。

都市龍々を管轄としている議員がひた隠しにしていたが、他の地区で現れ、それが世界的に流行り出すと隠してきたことが次々に露見された。

発生地域は都市龍々だと特定され、国として何らかの措置をしないとならない状況だった。


「わかった、龍々を都市封鎖とする。それと情報統制だ。外に漏らすな。アメリカが難癖を付けてくるに決まっている」


「世界保健連盟事務総長アルテロはこちらの手の内」


「世界保健連盟事務総長アルテロのアフリカ民主主義人民共和国に多額の経済支援を出して大統領ごと懐柔させておけ」


経済大国2位として陽華人民共和国は多額の資金を使い海外の貧しい国に、借金をさせ経済支援・インフラ整備をしてきた。


それは同盟と言うより服従させる行為に近かった。


武力的侵略ではなく、経済的侵略。


その政策で世界の覇権を握ろうとしていた。


それはこの様に不都合なことが発生したときに有効な効力が発生した。


「対外的には『新型インフルエンザ』と言う事で、よろしいですね」


「うむ、それでやってくれ。しかし、今までの対インフルエンザ治療薬は効かないのか?」


「はい、全く。ワクチンも無力です」


「・・・・・・これは疑われるぞ?生物兵器ではないかと」


「それは絶対にありません。生物兵器ならまず自分たちのワクチンと治療薬を作ってからでないと、使い物になりませんから」


「わかっている。諸刃の剣どころか自分の頭上に核ミサイルを落とすくらいの愚行になるからな」


「今できる事は対処療法と封じ込めのみ」


「昔、アメリカだかのゾンビ映画であったな。未知の病原菌でゾンビ化してしまうものが」


「大総長・・・・・・そのラストは絶対に出来ません。絶対です。しかも、もう龍々だけの問題ではなく・・・・・・」


「そんなことはわかっている。兎に角、国民を救う方法を考えろ、事態収束を急げ」


と、秘密会議は白熱していた。


30年近くほど前の映画で、未知の病原菌で人間が次々とゾンビ化してしまうものがあった。

その映画のラストは、核ミサイルを使って、都市ごとなかったこととする、おぞましい結末だった。


核ミサイルの放つ核融合の熱は全てを焼き尽くし病原菌も根絶させられるが多くの犠牲者が出る。


国の指導者が自らの決断で自国民を殺す事はあってはならない。


大総長も、それは重々承知の上で頭によぎった話でしかなかった。

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