第11話 悪魔の足音
202x年12月24日
《陽華人民共和国》とある都市。
その国でも西洋から入ってきた文化クリスマスを祭りとして楽しむようになっていた。
街には多くの人々がバーゲンセールに出歩き、装飾品を買い、ケーキを買い、チキンを買い、おもちゃを買い、プレゼントを準備して家族と、恋人と、友人と過ごす日。
異国の神様の誕生日を祝う特別な一日だった。
そんな日、一軒の総合病院で今までにない症状の患者が運ばれ始めていた。
「先生、また救急依頼です」
と、看護師が叫ぶ、
「可笑しいぞ、何かが可笑しい。こんなに同じような症状の患者が一気に現れるなんて。何かが流行りだしている。すぐに保健省に連絡してくれ、なんらかの新型の病原菌が蔓延している可能性があると」
「はい、わかりました。先生、それより薬は?」
「3種混合抗生物質薬と解熱剤の点滴を始めてくれ」
聖夜とされるクリスマスに、とある病院では50人以上の風邪と胃腸炎が重篤化したような患者が運び込まれる異例の事態となっていた。
それを診た医師は新型のインフルエンザを疑った。
しかし、その予測は間違いだった。
3日後、症状が改善されないまま、高齢の患者8人が死亡。
また、糖尿や高血圧の既往症若者5人も死亡した。
運び込まれる患者も日に日に増えていた。
「間違いない、新たなインフルエンザだ。国からの返答は?」
「医師の追加派遣をしてくれるそうです」
「違う、そうではない。これは都市封鎖をするべきだ」
「先生、ゲホゲホ、私も熱が・・・・・・」
とある病院は次々に運び込まれる患者に限界となっていた。
それに対応していた医師が、国の保健省に
「新型のインフルエンザ発生が疑われます。都市の封鎖を」
と、連絡したときには時すでに遅し。
都市を超え、その地域にはその病原菌は蔓延していた。
しかし、その地区の管理官である議員はその事実を握りつぶした。
正月休みが近いと言う理由でだった。
政治家はこのとき、事の重大さを重く受け止めていなかった。
ただの新型の風邪。
たまたま弱っている者が死んでいく。
健康な者なら罹らない。
罹っても回復するであろうと。
勝手に楽観視していた。
自身の正月休暇が潰れるほうが、その者にとっては恐怖だったからだ。
こんな年の瀬に、都市を封鎖すれば混乱は起きる。
そうなれば自身の休暇もなくなり、高いシーズン料金を払った海外旅行に行けなくなる。
それが頭によぎると、休暇明けで大丈夫だろうと楽観視したかったのかもしれない。
その一歩の遅れが、世界の混乱になるとは思わず。
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