第4話 報道
マスコミ報道各社は那珂湊比呂志教授の『正常遺伝子細胞移植術による治療』を夕方のトップニュースで知らせていた。
情報統制が難しい現代、それを那珂湊教授はよく理解していた。
インターネットで生中継で発表してしまえば、あとは勝手に広がる。
それはまるでウイルスのように。
その様な状況下で報道をしないと言う選択肢は不自然すぎた。
国というとてつもない権力が隠蔽しようとしても、インターネットで流れてしまった物はどうすることも出来ない。
その為、国もそれに目を瞑るしかなかった。
「帝都大附属病院生物遺伝子学教授で医師でもある、珂湊比呂志氏が本日記者会見を行い、遺伝子治療を行ったと発表いたしました。
患者は教授の御子息、先天性の病を治すために行ったと発表。
この技術は今まで根治が難しかったアルツハイマーや後天性免疫不全にも効果があるの発表です。
しかし、その行為は認められているものではありません。
医師法違反で逮捕されました。
国は、詳しい事の発表はしておりません。真実が発表される日はいつなのでしょうか?これが本当なら、難病治療に一筋の道が開けるはずです」
各社が伝えた内容は、ほぼこのような内容でそれに対して、自称・他称、マスコミが無理矢理探してきた遺伝子治療研究者をコメンテーターに座らせ批判的な報道をしていた。
「那珂湊比呂志教授の発表は嘘ですね。そのような技術はありません」
と、断言するコメンテーターもいれば、
「那珂湊比呂志教授の正常遺伝子細胞移植術は可能な技術です。しかしながら、遺伝子を操作するとは神をも恐れぬ所行、倫理的にどうかと思います」
と、当たり前のごとく『倫理』と言う言葉を使う者もいた。
「遺伝子を書き換えるなど言語道断、そのようなことはしてはいけない。外道に落ちた者」
など、当たり前の非難が繰り返されるが、そのような言葉を口にする者の大半は自身の身近に、重篤な病気の患者がいないものが大半であった。
那珂湊比呂志教授の記者会見の様子を放送するなか、全てのマスコミは逮捕の瞬間の那珂湊教授の必死の訴えを報道していなかった。
それは見えない圧力が働いたのだろう。
日本国政府からの強い圧力なのかもしれない。
ネットなど見ない者にとっては、新聞やテレビが唯一の情報源、それに扇動されてしまう。
情報弱者をマインドコントロールしてしまえば、『遺伝子治療』が、可能だとしても、それは『悪』とされ、使う事の出来ない技術になってしまう。
国はそれを狙ったのだろう。
しかし、現代において特に若者は、ネットから情報を得る時代にシフトしていた。
マスコミを信じられなくなっている若者の多くは、生中継の画像を目にしていた。
その映像は拡散され、規制出来ないほど広がっていた。
マスコミが造るニュースを信じる者と、信じない者と言う二極化の時代。
まだ、マスコミ報道のほうが若干上だった。
マスコミは懐疑的や否定的、そして悪の印象を持たせる報道を繰り返し行った。
情報弱者は『遺伝子治療は悪』と、マインドコントロールされていた。
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