治療において『神の領域』は存在しない~遺伝子改造治療~
常陸之介寛浩★他サイト読者賞・金賞W受賞
第1話 プロローグ
『人間とはなんだ!』
人間と言う定義はなんなのであろうか?
人間は地球上で一番繁栄し支配している生物であるが、進化は止まったのだろうか?
いや、自ら進化することを捨てた存在なのではないか?
人間は幾年の歳月をかけ、あらゆる技術を進化させてきた。
それは医療においてもだ。
古代は呪術、呪いの類いだった医療に、自然の動植物から得た力を摂取する漢方を処方するようになり、カビから作られる抗生物質の発見によりウイルス・菌に打ち勝つ進化を成し遂げてきた。
外科的にも、切除、移植技術の進歩を手に入れ中には機械を体に埋め込むことで病気に打ち勝つ事ができるようになった。
そして、現在、人類は新たなる技術、遺伝子治療の技術を手に入れた。
しかし、それを阻む者共がいた。
『倫理』『神の領域』『神への冒涜』などと言う、あたかも大義名分であるかのように声高々に主張して。
なら、開腹手術は倫理的に許される行為なのか?
肉体を傷付け臓器を取り出す事は『神の領域』ではないのか?
機械を体に埋め込むことは、生物学的倫理に許される行為なのか?
脳死判定と言う曖昧な『死』の名のもとに、まだ息をしている人間から臓器を取り出す事はそれこそが『神の領域』を侵している物なのではないか?
異常になっている遺伝子を修正することがなぜにいけない?
人間が、人類が遺伝子に手を加える技術を手にしてしまったとき、それは最早、『神の領域』ではない。
人間が獲た技術でしかない。
俺は、この技術を使う。
新たなる治療技術確率への一歩を踏み出すのだ。
神よ、それが神の領域と言うなら我を罰せよ。
これが人間が得るべくして獲た力なら助けを与えよ。
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