暗殺キャンプ△殺し屋一族の天才次男は趣味にまみれてのんびり暮らしたい

徳川レモン

第一章 春

プロローグ

 薄暗く冷たい石の床。そこに俺はいた。

 体中を巡る激しい痛みに耐え続け、時折吐血する。

 声にならない声が乾いた口から漏れ出た。


 ほんの少し動く度に手錠と長い鎖がじゃらりと鳴る。


 コツコツコツ。


 朦朧とする意識の中で、遠くから足音が近づいているのが分かった。


 不快な音を響かせ金属の扉が開く。


「まだ毒が回っているようじゃの。だが次のプログラムの時間じゃ。これからお前には電気椅子と水攻めを受けてもらう。なぁに、我が一族の者なら耐えられるじゃろう」


 なにをいっているのだろう。

 あまりよく聞き取れない。


「お前はいずれ我らの奥の手、切り札となるだろう。ザザの名を冠した最強の兵器としてしっかり教育をしてやらねばな」


 俺は殺意を込めて老人を睨む。

 それだけで相手は喜んだ。


「ぐふふ、いい目をする。冷たく暗い目、やはりお前は素晴らしいなイズル」


 男達が部屋に入り、俺を強引に抱えて引きずる。

 また苦しいことが始まる。

 いつになれば解放されるのだろうか。


 俺はそればかり考えていた。


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