第38話 黄色く光る星空のもと想いを飛ばす。

「ねえ玖瑠未ちゃん、あの先輩とどういう関係?」

「どういう関係って聞かれても、難しいなぁ・・・」

「黒川先輩でしょ?最後のあの走りカッコ良かったなぁ・・・」

「なっ!そ、そうだねぇ・・・」

「どうしたの玖瑠未ちゃん、声色が怖いけど。」

「もー!からかわないでよ!!」

新しくできた友人。先輩のおかげでできた友人。

先輩と出会わなかったら、もしあのとき声をかけていなかったら、くるみはこの後夜祭に出ることもなかっただろう。

「そういや玖瑠未ちゃん、あのジンクス知ってる?」

「ジンクス?」

「キャンプファイヤーののジンクス。知らないみたいだから教えてあげるよ。」

「ふむふむ・・・、えっ!そんなジンクスが?!」

「私も人から聞いた話だからホントに叶うかわかんないけど、試してみてもいいんじゃない?」

「ありがとう!試してみるよ!」

「私も黒川先輩想って試してみようかなぁ。」

「え!??」

「冗談だよ。じゃあほら、行っておいで。」

「もう意地悪!でもありがとう。行ってくるよ!」

友人の応援を背に、ある所へと向かった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ある場所―――鉄塔へ到着。

うちの学校の近くにあり、校庭全体が見渡せる。

高い場所なのもあってか、風が顔に吹きつけていた。

辺りは自然に囲まれ、星と月が綺麗に輝き、私を照らしてくれている。

まだ少し時間がありそうだったので、空を見上げながら今日のことを思い返す。

一日とは思えない内容の濃さで、この日ほど泣いた日、笑顔になった日は後にも先にもないだろう。

いや、少し訂正。もしあの人がこれからの将来を約束してくれる時が来た日には、今日以上に泣いて、笑う日になるだろう。

「そんな日が、来たらいいな・・・。ってなに弱気になってんのよ!くるみのバカバカバカ!」

思わず弱腰になっていた自分に喝を入れる。

夜に考え事は良くないというのを痛感する。

しかし弱気になってしまった原因として、辺りが暗いから考えも暗くなったといのはほんの少しであり、大部分を占めているのは彼の周りにいる人々だ。

みんながみんな彼を想い、同じゴールを目指している。

玖瑠未より断然可愛くて、気遣いもできて。少しばかり弱気になってしまうのも無理はないだろう。

まあ、胸の大きさでは勝ってる先輩と同級生もいるけれど。

???((イラッ。あれ、何故かムカついた・・・))

相手は強敵ぞろい。だからこそできることは全部やりたい。

出来ること全部やって負けてしまったのだとしたら、素直に選ばれた恋敵を祝福できると思う。

自分以外の女の子と将来を共に歩む彼を思い浮かべる。

ムカッ。ムカムカムカッ!!

「やだあ!!そんなの嫌だぁ!!!」

情緒が不安定すぎる。自分でもわかっている。

でも、初恋なんだもん。

「負けるもんか。」

そう呟いたタイミングと同時に、キャンプファイヤーの火の回りに先生が集う。

そろそろ時間だ。

鼓動が早くなる。

先生が紐に火をつける。

占いとか信じるタイプじゃないけど、やれることは全部やりたい。

先生がつけた火が紐を伝って広がっていく。

絶対に負けたくない。だって、くるみは誰にも負けないくらい―――

ヒュルルルルルルルルルル~~~~~ドッカーーーーーーーーーーンッ!!!

「駿先輩~~~~~~~~!!!愛してますーーーーー!!!!」

『ジンクスってのはね、花火が上がった瞬間に、叫ぶの。好きな人への想いを。なるべく高いところから振りかけるように。』

もう少しロマンチックなものかと思ってたけど、とてもシンプルなジンクス。

シンプルイズベストといったところなのであろうか。

想いと一緒に、自分の中で溜まっていた負の感情もどこかへ吐き出せていた

澄んだ空気を大きく吸い込む。深呼吸。

「負けるもんか!」

改めて意を決す。先ほどよりも強く言葉にして。

そして背後から風が吹きつけた。

吐き出したこの想いを学校にいる彼に届けるように。そしてくるみの背中を押すように。

強く強く吹きつけた。

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