第29話 体育祭がゆえに青春謳歌。 借り物競争編

虹岡先生の助言、幼馴染の気遣い。

二つの恩恵を受け、黄山玖瑠未との仲直り(?)作戦実行。

(この体育祭で必ず元の関係に戻って見せる!!)


とは心の中で意気込んだものの――

体育祭開始から2時間。

まったく進展なし!というかチキって全然話しかけられない。

「ねえ駿。ちゃんと問題解決できた?」

ふみ。お前のおかげで俺はこの作戦を実行できている。感謝だ。

しかし、俺はまだスタートラインにすら立てていない。ふみは俺に悩みがあることを見抜いていたが、悩みの内容までは知らないはずなので、ここはうまくごまかしておこう。

「ま、まあ、順調だ・・・順調・・・」

「嘘つき。早く玖瑠未と仲直りしなさい。」

「え・・・?なんで玖瑠未・・・?」

悩みの内容を知ってるのは虹岡先生のみのはず。

しかも話したのは今日の朝だ。

虹岡先生は体育祭の運営で大忙しで、内容を伝える暇はないはずだ。

なのになぜ玖瑠未が関係していると分かる。

「馬鹿だね駿は。毎日私たちの教室に来てた玖瑠未が、かれこれ2週間は来てないんだよ?そんなの異変に気づかない方が馬鹿じゃん?」

「た、確かにィ!!」

言われてみれば。

考えれば誰にでもわかることじゃないか。

毎日来てた玖瑠未がいきなり来なくなったなんて何かあったに違いないと疑うのは当然だ。

「おやおやー?敏感であろう駿が、そんな簡単なことも考えれないなんて相当大きな問題のようだねえ。それか駿がチキンか?それとも両方とかだったりー?」

はい。ぐうの音も出ません。その通りです。

「・・・ま、まあ、今日中には解決するから・・・」

「ちゃんと解決してよね?私ももちろん心配だけど、陽花里もいちごも、みんな心配してるんだよ?」

そりゃ陽花里もいちごも気づいて当たり前か。

「ああ、わかった・・・」

俺と玖瑠未がいつまでもこんな気まずい関係だと他のみんなとまでも気まずくさせてしまう。

折角できた友達を、俺が奪ってしまうことになる。

それだけは絶対にしてはいけない。

これは俺だけの問題だが、他に迷惑が掛かってしまう問題だ。

グダグダ言ってられない。よし、勇気出して頑張ろう。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「これより、午後の部を始めます。最初の種目は――」

午後になった。

はい何もできませんでした。

俺の馬鹿野郎があああああああああ!!

あの意気込みはどこ行った。勇気振り絞ったんじゃないんですか!?

「駿くん・・・!も、もうすぐ私たちの競技、始まるから・・・。応援しててね!」

「あっ、ああ、頑張れよ陽花里。めちゃめちゃ応援する。」

「う、うん。私頑張る・・・。ありがと・・・」

「駿。私も頑張るんだから、駿も頑張んなよ?あと、私も応援してよ。」

まだ仲直りできていないのはバレているようだ。

「が、頑張ります・・・。そしてファイト、ふみ。」

「よ、よろしい・・・!」


「続いての種目は借り物競争です。生徒の皆さんは入場してください。」

玖瑠未との仲直りももちろん大事だが、友達を応援するのも大事なことだ。

仲直りはこの二人の頑張りを見届けてからだ。

ふみと陽花里がグッと親指を立ててきたので、俺もしっかり返す。

(ファイト。ふみ、陽花里。)


「皆さんこんにちは!実況を務めさせていただく、松岡と申します!では、ルール説明をいたします!第6種目目!借り物競争!!この競技は二人一組で行います!二人三脚で様々な障害物を乗り越え、乗り越えた後、足を縛っていた布をほどき、10m先の借り物のお題が書いてある紙をとり、それぞれそのお題に準じたものを持ってゴールへ向かう!あ、ちなみにお題は二人で同じものでーす。」


「皆さん準備が整ったようです。」

「位置について、よーい・・・ドンっ!」

「いくよ陽花里!せーのっ!」

「さあ、始まりました借り物競争!二人の信頼関係、強い絆が試される競技!」

「「いちに、いちに、いちに・・・」」

「あ、あいつら速いな・・・。1位じゃねえか!」

「速い速い!トップを独走するのは赤海・白谷ペア!!様残の障害物をいとも簡単に乗り越えていきます!!これは学校新記録更新があるかもしれません!!そして、すべての障害物を乗り越えました!!!」


「よし私たち1位・・・。お題は何だろ・・・」

「陽花里くじ運いいんだから、簡単なもの引き当ててよね・・・!」

「よし、これに決めた・・・!」

「えーと、お題は・・・」

「えとえと、『好きな人』?」

「「好きな人おおおおおおおおお!?!?」」

「赤海・白谷ペア!何やら騒いでいますが一体どんなお題だったのでしょうか!!大騒ぎです!!」

「ふ、ふみ、どどどどどどどどうしよ・・・!!」

「す、好きな人を連れて来ればいいだけよ!しゅ、駿はどこに・・・」

「ま、待って!これで駿くんを連れてくる意味わかってる・・・?」

「それくらいわかって―――はっ!こんなの、こ、告白してるようなもんじゃない!」

「100%無理なのに告白するなんてどんな勇者だよ・・・」

「100%無理かはわかんないじゃない!?」

「じゃあ、駿くん連れてこれるの!?」

「げっ・・・そんなの、よ、余裕すぎるし?余裕すぎて困っちゃうくらいだし?てか、もしこの告白みたいな行為が成功しちゃって、私たちが付き合っちゃったりしたらどうするの?」

「なっ・・・!そ、そんなことあるわけないもん・・・!100%断られるもん!ま、まあ、ふみが傷つくの可哀そうだから、私が代わりに駿くん連れてゴールしてあげる・・・!私なら多分OKしてくれるし!」

「は!?そんなのあるわけないし!駿は私の方が好きなんだよ?この肉まんお化け!」

「に、肉っ・・・!しゅ、駿くんはそんな小ぶりなミカンより、おっきい方が良いに決まってるもん!だから私の方が好かれてるもんね!」

「こ、小ぶりじゃないし!私の方が好かてれるの!わーたーしー!」

「違うもん!私だもん!わーたーしー!」

「「わー!たー!s・・・」」

「ゴォォォォォォォォル!!!最初の圧勝は夢だったのか!?赤海・白谷ペア、なんと最下位となりました!!」


「「あっ・・・」」


「これで競技は終了です。借り物競争に出場されました皆様、お疲れさまでした。」


「あいつら、なにやってんだ・・・」

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