第19話 テスト期間がゆえに女子5人と勉強会をすることになった。お誘い編
今日は金曜日。
明日からは休み。
といっても、テスト期間であるため勉強で終わっていくのだろう。
「駿。どうしたの暗い顔して。」
「せっかくの休みなのに、勉強かーと思ってな・・・」
うちの学年は321人。俺はだいたい50位前後をうろうろしていて、調子が良い時は30位くらいになった時もある。
ふみも俺と遜色なく、いつも同じくらいの順位だ。
前回の一年の学年末テストは俺が46位でふみは48位だった。
「今回は負けないからね。」
「俺の連勝記録を作ってやるよ。」
高校では5戦2勝2敗1分。
なかなか良い勝負をしてるのである。
「ね、ねえ、駿、勉強楽しくしたいなーなんて思わない・・・?」
「そりゃあな。でも楽しく勉強なんて難しいだろ。」
「それで私、考えたんだけど、一緒に勉強したら少しは楽しいんじゃないかなぁって・・・。だから、今日とか、どうかな・・・?」
「まあ、一理あるな。久々に一緒にってのも悪くないな。やるか。」
「・・・!!うん!小学生の時以来かな・・・?楽しみ!」
小学生の時は毎日一緒に宿題して、終わったらゲームするってのはもう日課になっていた。
昔に戻ったみたいで、少し気を楽にして勉強できるかもしれない。
何より否定する理由がない。
「ねえ、駿くん。その勉強会、私も混ぜてくれない?」
「わっ!びっくりした!!」
いつからいたんだ。いきなり陽花里に声をかけられかなり驚いた。
ふみも同様だったらしい。
「ちょ、ちょっと何!いきなり現れて!いつからいたの?!」
「さっき。なんか私の中の危機センサーが反応した。」
「心臓に悪い・・・。てか、ダメだから!これは私と駿の二人だけの勉強会なの!誘われてない人はしっしっ!」
「別にふみに頼んでない。駿くんに頼んでるの。ねえ、駿くん、私も行きたい。」
「何よムカつく!駿!ダメだよ了承しちゃ!」
怖い怖い怖い怖い。
何でこんなすぐ開戦するのこの二人。
どっちについても俺は負けるな気がする。
(だ、誰か、誰か助けて・・・)
「駿せんぱーい!ってあれ、どうしたんですか?」
「いいところに来てくれたぞ玖瑠未!助けてくれ!」
「ど、どうしたんですか?先輩の方からくるみに近づいてくるなんて、せ、積極的ですね~・・・」
「駿!くるみに話しちゃだめだよ!」
「そうだよ!また敵が増え・・・はっ!玖瑠未、ちょっと耳貸して。」
ごにょごにょごにょ。
「ふむふむ、なるほど・・・。ほう、それなら任せてください!」
「あっ!陽花里のやつくるみを引き込もうとしてる!駿、逃げ・・・」
「しゅーんせんぱーい!一つお願い事があるんですけどぉ。」
「な、なんだ?俺にできる範囲であれば聞こう。」
「出来ますよ。それで、お願いなんですけど。くるみと白谷先輩も、その勉強会、参加したいなぁ・・・。ダメ、ですか・・・?」
(私にはこんなの出来ないから、ここは専門家に任せる・・・。敵は増えちゃうけど、参加できないよりはよっぽどマシだもんね。)
上目遣いに甘い声。
前傾姿勢でさらに俺の顔を覗き込み、腕で胸を寄せ、胸を強調している。
見え見えのあざとさだがこれは、やばい。
「ま、まあ、そこまで言うなら構わないが・・・」
こんな風にお願いされてしまっては了承せざるを得ない。
男ならこれを断れなんて無理な話しである。
「駿には断れなかったか・・・」
「よくやったぞ玖瑠未。ちょっとむかついたけど。」
「ひどっ!くるみのおかげで参加できるんだから感謝してくださいよ!」
「まあそれに関してはありが・・・、ちょっとトイレ行きたくなってきた。一緒に行こ。」
「くるみへのお礼はトイレのお誘いに負けるんですね・・・。まあ、いいですけど。」
(はあ・・・。折角二人で勉強できると思ったのになぁ・・・)
ふみの顔が暗い。
「ふみ。」
「ん?何?」
俺は敏感だ。どうしたのなんて野暮ったいことは聞かない。
「また今度、二人で勉強しような。」
「えっ・・・。うん!約束ね!」
「ああ、約束だ。」
もう一度言おう。俺は敏感だ。
しかし、敏感である以前に、俺はこの赤海ふみと幼馴染だ。
こいつが落ち込む理由くらい、俺が鈍感であってもわかる。
いや、分からなくちゃいけない。そしてそれを解決しなければいけない。
だってこいつには、笑顔がよく似合うのだから。
「二人で毎日宿題してた小学生の頃ってさ、何も考えずに少しの宿題をこなせば、もう遊んでるだけでよかったもんな。だから、二人で勉強して、またあの気分を疑似体験したかったんだろ?なつかしー!って。」
「え、待って。駿は私がなつかしー!って感じたくて、二人で勉強したいって言ってると思ってんの?」
「ごめんごめん、口の出すのは恥ずかしかったか。安心しろ。俺もなつかしー!って感じたいからさ。」
「駿のバーカっ!!もう、帰り文房具一式買ってもらうから!!」
「は?なんでだよ!」
「なんでも!テスト頑張ろう記念ね!買ってくれないなら、いろんな駿の秘密綾音にバラすから!」
「それだけはやめてくださいふみ様!よーし!漢黒川駿、なんでも買っちゃうぞー!!」
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