『小さなお話』 その59
やましん(テンパー)
『出張』 その3
ごき大将と、ごき事務長が乗ったコンテナは、『最新鋭ごきVIP移動用コンテナ』であったのです。
考えてみてください。
なんだかんだとありながら、結局地球を支配しているのは『裏政府』であります。
『裏政府』の事実上の最高幹部は、『宇宙ゴキ』地球司令官だったんであります。
しかし、現状では、まだ地球人類は、大方の自治権を行使できる状態にありました。
しかし!
宇宙ゴキは、難題を持ちだしたのです。
日本地区を、半分、宇宙ゴキの直轄地にしたい、と。
西日本は、宇宙ゴキの直接管理下に置き、東日本は『日本人自治区』とする。
というのであります。
これは、『宇宙ゴキ』の地球支配の第2段階であることは、明らかなのでありますが、『裏政府』は、当然、この提案を受け入れる意向であります。
表向きは、病原菌の蔓延を理由として、『国際連合組合』が委任統治を行うと言うことで、『宇宙ゴキ』は、まだ表向きは出て来ません。
『裏政府』が受け入れれば、『政府』は抵抗できないのです。
下手に抵抗したら、『宇宙ゴキ爆弾』が、降って来ることは確実です。
しかし、これに、猛然と抵抗したのが、『動物平和連合協議会』であります。
まあ、その名前は、その時々の都合で、いろいろ変わったりはしますが。
実は『宇宙ゴキ』にとっては、人間よりも、動物たちの方がやっかいなのでありました。
なんせ、喰われてしまう危険性があったからです。
近代的な武器があっても、そうなのです。
それは、ホラ-映画を見たらよくわかります。
だから、彼らが、地球人側についてしまうのは、避けたかったのです。
そこで、調停役を依頼されたのが、ごき将軍であったわけです。
ごき将軍は、コンテナの中の、豪勢な部屋のソファにそっくりかえりました。
『大将、おはようございます、『ゴキ・ワールド・タイムス』です。どうぞ。コーヒーになさいますか? 紅茶ですか?』
『ああ、コーヒーでいい。ミルク入りね。』
ばっちりと、カッコいいコスチュームに身を固めた、ゴキ乗務員が言いました。
事務長は、窓から外を眺めながら言いました。
『『宇宙ウイルス』の影響で、飛行機が少ないですね。』
『ああ、やつら、北極の上から、パラパラ、と撒いたんだ。』
ごき将軍は、前の手で、パラパラと撒く真似をしました。
『まだ、毒性は弱めにしたとか。』
『けしからん。私は、反対だ。いくら、人類にしか効かないと言っても、同じ地球の仲間として、こうしたやり方は容認できん。』
『はい。われわれの見解であります。』
『まあな。しかし、宇宙ゴキどもに、すり寄る奴らもいる。』
『はい。まず『中央どぶねずみ連合』が怪しいです。ハーメルンにいた連中の子孫です。』
『あの、ステーキ・ミディアム将軍とか言うのが、気に食わんな。絶対に、二枚舌だ。』
『今回、本性を、あぶり出してやりましょう。』
『まあ、ゆったりとな。あわてては、いかんぞ。』
『はい。』
ごき大将のコンテナは、そのまま、超音速ロケット旅客機『ゴキンゴルド』の貨物室に運ばれ、定められたスペースに、かっちり、と収められたのであります。
窓は、そのまま、飛行機の小さな窓に密着されました。
『まもなく、離陸いたします。ロンドンまでは、二時間の予定です。ベルトをご着用下さい。』
ベルトと言っても、ごき用は、特別製であります。
二ゴキは、そこに、はまったのでした。
コンテナに、さらに、アナウンスが流れました。
『離陸開始です。』
『大将、隣のコンテナ、見ましたか?』
『ああ、みた、『どぶねずみ連合日本支部』のマークだ。中央連合と、同じセクトだ。気に食わん連中だ。やましんさんとこの連中は、ローカルだが、伝統的な日本ネズミ性が感じられる。しかし、やつらは、飛び過ぎている。』
『あさいさつに行きますか?いちおう、序列は上ですが。誰が乗ってるのかなあ?』
『ふん。まあ、キミ、挨拶に伺てっも良いかと、聴きに行きたまえ。それからだ。』
『は。了解ごきであります。』
飛行機は、動き始めました。
もの凄い、加速力です。
************ ************ ✈
となりのコンテナに乗っていたのは、若きドブネズミ族のエース、『ブリリアント・チュウ』でありました。
************ 🐭
こんかい、おしまい。
あ、やましんさんは、なんだか、わけ、わからないうちに、同じ飛行機に乗せられておりましたんですが・・・・・そこらあたりは、次回。
『小さなお話』 その59 やましん(テンパー) @yamashin-2
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