アソートボックス

スキヤキ

第1話 cafe celore

あ〜……疲れた。もう駄目。今日の梱包は痺れたわあ。どっかに何か、食べられるところないかなあ……食べなくても、なんか休める所、ないかな」


……あっ、カフェだ。空いてるかな?


カランカランーー。こんにちは……。


「いらっしゃい。ようこそ、座って、何飲もうか? 一応、売りは珈琲」


じゃあ、本日のコーヒーで。

かしこまり。


コーヒーを淹れ始めたマスター。周りを見渡してみると、ベルベットの表張りの家具の中に観葉植物が店内に影を作るように立ち並び、高いのも低いのもある座りどころには、数人の客が席を埋めていた。明かりは甘い感覚を覚える蜂蜜色。シャンデリア調で、暖かい緩い空気の中に微かに揺れる装飾。


くぅ。


そうだ、私お腹が空いて。メニューを見て、食べられそうなものを探す。


「あの……ナポリタン、追加でお願いしてもいいですか? お腹減っちゃって……お願いします……」


ん、はいよ。とコーヒーの様子を見ていたマスターが店の奥にオーダーを伝える。女の人の声がする。夫婦かな。


ーー。


「はい、コーヒーから。すぐ来るよ」


ミルクは? と言われて大丈夫、というと、源さん、おかわりサービス、と他のお客さんに新しいカップを渡して回っていく。なんか、いいな。


そうだ。コーヒー。


つ……。


美味しい。濃くもなく薄くもなく、コーヒーの香りだけが鼻を抜けて広がる。香ばしさ……香りの着いたお湯のように、軽やかで、甘ささえある。


溜息。やがてすぐ、トマトの火に当たった匂いが香る。皿を見て、綻ぶ。


回転するパスタの流れ。トマトソースと完全に絡まった麺の上に、ささめに切ったピーマンやウインナー、人参などが掛けてある。皿には一片のシミもない。フォークで崩すのはもったいないと思うなんて……いただきます。


スルーー。


美味しい。ナポリタン。たしかにナポリタンだけど、トマトが甘い! それにつけてもパスタのこのモチモチと喉越し。具材の食べやすさも相まって、完璧なバランス……美味しい!


「ここは何時ぐらいまでやってるんですか? 御飯も美味しいし、また来たいです。いつまで?」


「そうだねえ……厳密には決めてはないんだ。だから、おれの気の向くままに開けるだけ開けてるっていう所なんだけど……まあ、朝8時から夜8時まで、な感じかな」


「気まぐれなのね。休みの日には来たいなあ。家からも近いし。ねえ、私、何やってるか分かる? 仕事」


なんだろうなあー、というマスターを尻目に、着物のお爺さんは腰をすんなり上げると、あるからね、と言って去っていった。その格好の良い渋みに、なんだか不思議な温かさを感じた。


「じゃあまた来ます。これ、チャージ料。込んでるからよろしく。また!」


celore。また来たくなるような喫茶だったな。なんと、家から5分圏内! いつも同じ方向から倉庫向かってたから、気づかなかった。明日から2日休み。1日空けてゆっくり休んで、また来ようっと。楽しみ、楽しみ♪




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