A.D.E.C;アデック -天を葬る悪魔たちの集団-
暁 葵
Chapter 0;醜悪なる神の贈り物
人類とは、一人では生きていけない。
家族は勿論、頼れる仲間や伴侶、仕事先の同僚や先輩…様々な人間が互いに支えあって生きてる――と教わったであろう。
だが、その理論は半分正解で、半分外れのものなのだ。
人々を支えるのは人だが、人類が支えている箇所など殆どない。人間とは、疑心という感情を持ち、それ故善意でやっていることを疑わしく思うことがある。
即ち、支えられている実感を、本人たちは感じられないのだ。では、家族や友人などの身近な人間ですら補填しきれない疑心を、誰が負担し、解消してくれるのか。
――それは、神だ。
神とは存在しない人智を超越した「何か」。不明で不可解な存在というのは、一見すれば信用に値しないものかもしれない。
だが、誰しも「神様……どうか!」という風な祈りを捧げたことがあるだろう? 神とは所詮空想上の存在でしかない。しかし、それと同時に想像を膨らませ、いずれ神は「万能な存在」として認識され、人々の心に巣食う。
窮地に陥って、何とか九死に一生を得た……そんな状況で、人類は「神様のおかげ」と内心安堵するのだろう。
全ては神のみぞ知る〝運命〟だと信じ込み、神の奇跡に期待する。そうすることで、不安は多少消え去り、期待することで成功すると、まるで洗脳の様なものが、人類の心の中に自然に形作られているのだ。
その洗脳じみた不可視の存在…「神」に期待を寄せ過ぎた結果、現代における「宗教」が完成したといってもいい。
彼ら教徒は、神に人一倍祈祷し、自分に降りかかる不幸を全て「試練」だと勝手に解釈する。たとえ絶体絶命の危機でも「神の御加護あれ」と願うことで、彼らの中に蔓延する不安は消え去り、奇跡に身をゆだねる。
最早これは洗脳どころの話ではなく「脳内麻薬」だ。麻薬を吸えば全てが幸福になる。そう〝思わせられている〟ようなものだ。
この「宗教」や「神」に関する研究などを進める者もいるが、結論には辿り着かず、脳内で「神などいない、救いは無い」と暗示して、ドラッグじみた空想の存在を否定するのだ。
だが、そんな彼らも無意識のうちに神に期待しているのだ。
……そんな、一見壊れているようで、成り立っている世界では、とある試みがされつつあった。
『我々は、世界で一致団結し、人類を指導する絶対的存在……即ち、〝神〟を創造することを決意した!』
誰かが、画面越しに世界中の人々に宣言した。
一見すれば、それは無謀で絶対に不可能だと嘲笑されるに違いないものかもしれない。しかし、人は時にこう考える。…神は無情だ、と。
奇跡が起こらなかったとき、人類は怒りに震える。その怒りを鎮めるべく、貧困に苦しむことなく、安全に幸福に暮らすべく、神を人工的に製造することにしたそうだ。
神が傍に居れば、自分の願いを叶えることもでき、どんな窮地でも覆すことが出来る。
人類はその無謀ながらも期待できる宣言に、大いに賛成した。
以降、神を製造するプロジェクトを「Project:Deus Ex Machina」と呼び、様々な団体からの支援や協力の末に、ある〝モノ〟が発明された。
神という存在の製造は難航しており、現時点で完成できるのは絶対服従で知能を搭載し、様々な機能を有する機械くらいしかなかった。
超常的な能力も同時に発明され、それも搭載された擬人自律兵器「天使」が世界に誕生したのだ。
「天使」は、見た目は人間とほぼ同じ…というより、人間と言われても納得できるほどの容姿の完成度を誇り、触感から温もり…人間と同格だ。
更に
その証明として、料理をしてくれたり、仕事をしてくれたり、買い物をしてきてくれたり。――そして、人殺しも容易で熟す。
例えば、気に入らない人間を「殺せ」と命じれば、搭載された特殊能力や戦闘武装で対象を抹殺する。それも、その気になれば誰にも気づかれず、静かに……
「天使」は製造速度を増して、現在では一般社会に普及するようになった。しかし、その普及は世界を崩壊へと導く大きな一歩となってしまう。
人口は減少していき、お偉いさんなども殺されている。このままでは世界は本当に終焉の一途を辿るしかなくなる。
だがそれでも、彼ら「Project:Deus Ex Machina」を操作する創造神協会の連中はその掲げたスローガンを下すことは無く、現状を顧みないで今なお神を世界に顕現させるべく更なる努力を尽くし、更なる犠牲を続出させていた。
政府は創造神協会に謎の圧力を掛けられているせいで、開発中止宣言を出すことが出来ない状況下にある。
こんな世界に、ある希望が現れる。
彼らは人間を堕落させる最悪な発明品…「天使」に相反する兵器――超常的能力搭載型機器「悪魔」を用いて「天使」を殲滅する組織。
周辺地域関係なく、過激に暴れまわり、徹底的に「天使」を消し飛ばす人間の数々を従える人間の集まり。
彼らは〝Assult〟…強襲、〝Desaster〟…災厄、〝Exterminess〟…殲滅、〝Colleps〟…崩壊の頭文字を取って、こう呼ぶ――
A.D.E.C――アデック、と呼ばれていた。
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