ふくろうの短いお話

ふくろう

プロローグ

~異世界の扉はどこにでも在りえる~


「言葉を紡ぐ者よぉぉぉ」

声が響き渡った。

私はびっくりしてベッドを跳ね起きた。

「な! だれ!?」

そして落ちた。

マットに着いたつもりの右手は宙を掴んだからだ。

「いだーーーぃ!」

勢いで一緒に落ちてきた掛布団が頭から被さり、暗い視界はゼロになった。

「言葉を紡ぐ者よぉぉぉぉぉぉ」

「ひぃ」

また声が響いた。今度はさらに大きく。

でも何処から聞こえたのかわからない。

自分がどんな体勢なのかもわからないまま兎に角、耳を塞ぎ体を丸めた。

「言葉をぉ紡ぐ者よおお!」

「きゃーーーーーーー!」

声は耳元より、もっともっと近く感じられた。

「なになになになにだれだれだれだれ!?」

「私はお前だぁぁぁ」

「意味わかんないーーー!」

「お前が生み出すものだぁぁぁ」

「はぁ!?み、未来の私の子でしたみたいな!?」

「ちがうぅぅぅ」

「じゃぁ人違いですぅ!」

「お前の生み出す世界に生きるものだぁぁぁ」

「なになにそれ!?」

「お前の紡ぎだす言葉が私たちを生み出すのだぁぁぁ」

「ちょちょちょーー! ちょっと!だから!!わかんない!!!」

パニックの向こう側には怒りがあると知った。

「なんなの!?どこにいんのよ!」

布団を跳ね除け、天井に叫んだ。

「私はまだ居ないぃぃぃ」

「ちょっと小さな声で!」

「すまないぃぃ」

「もっと!」

「わかったぁ・・」

なんだ、尻とか荒草みたいなもんか。

「説明して」

「私はお前だぁ」

「バカなの!?」

「もっと分かりやすく!」

「む~~私はまだ存在があやふやだぁ」「言葉が続かないぃ」

「じゃあゆっくり聞くから」

「私はまだ生まれていないぃ」

「・・・」

「お前のイメージに居るぅ」「・・・お前が書くのをやめればぁ」「・・・考えることを止めればぁ」「・・・消え失せてしまうぅ」「私は森の長老のはずだぁ」

「それって!?私の書きかけの話のフクロウ!?」

「そうだぁ」

「え!? え!?」

スランプの向こう側にはパニックがあると知った。

私ヤバいゾーンに入っちゃったのか

「お前がぁ考えることをやめると消え失せるぅ」

「で何?」冷静に冷静に冷静に・・・冷製パスタが食べたい。

「お前の言葉が扉を開くのだぁ」「私たちを紡ぎだしてくれぃ」

「っと言うと?」

「生まれたいのだぁ」「森のみんなを忘れないでくれぇ」

フクロウ偉そうかと思ったら意外とかわいい

「その調子だぁ」

「ん?」

「私のことを考えてくれればいい、それでイメージがハッキリしてくる」

お。なんか声も響かなくなってる。なかなかの低音イケボじゃん

バサッ!

「その勢いだ」

窓辺の月明かりに大きなフクロウの羽が広がった。

「フクロウだ・・・」

「私たちは待っているのだ」

「なに…を?」

「お前が紡ぎだす言葉をさ…この世界につながる扉を開くのをさ」

「わ、私にそんなこと・・・」

「できる」「もう感じているんだろ?」

私は泣いていた。

「できる?」

「ああ必ず」

嬉しかった。そして怖かった。そして興奮した。

「さあ、開いてくれ!!」





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