第28話
シャッテンとシュトュル達の距離は縮むばかりである。しかし、出入口は招待客がごった返して一向に進まない。
シュトュルに取り憑いたレヴィアタンは迷わずシャッテンに向けて魔法を使う。
「ファイヤ・シャルム・シュトュル。業火よ、あの獣を焼き焦がせ」
獣は根本的に火を恐れる。
シャッテンも体に纏わりつく炎は気になるのか、走るスピードが落ちる。
シャッテンに隙が出来た為、騎士達が炎を纏わせた剣でシャッテンに襲いかかる。
しかし、シャッテンも暴れ、何人かの騎士達を凪払い、会場を破壊する。
ガシャンッ!!
シャッテンが暴れた際に、シャンデリアが派手に音を立てて落ちる。
破片がシュトュル達にも降り注いだ。
すると、グッと腕を引かれる。シュトュルが後ろを見れば、険しい顔をしたレイディエ殿下がそこにいた。
「シュトュル…!あと少し場所がずれていたら、あのシャンデリアに当たったのかも知れないのだぞ…!頼む、危険な事はしないでくれ。ここは、騎士達に任せよう」
どう反応したら良いか迷うシュトュル。レヴィアタンは特に何も言う気はない様子だ。
レイディエ殿下に対して、何も言わないのは駄目だろうと思い、シュトュルはおずおずと口を開く。
「も、申し訳ありません、レイディエ殿下。ですが、あのままでしたら、私達どころか他の招待客達も危険にさらされると思うと、いてもたってもいられなくて…」
嘘でもあるし、本音でもある。
あのままであれば危険だと思うのは本音。
いてもたってもいられないから動いたのは、嘘。だってこれはレヴィアタンがやったこと…。
グォオオウ!
炎に呑み込まれるシャッテンは呻き声を出して暴れるが、だいぶ弱っていた。
シャッテンの足には騎士達の剣が刺さり、誰かの魔法によって出現した鎖がシャッテンを捕らえていた。
その様子を見たシュトュルとレイディエ殿下は少しホッとする。
これでシュトュルや招待客達が襲われる事は無いだろうと…
バキッ
シュトュルの後ろでガラスが踏み割られた音がした。
「ネーベル…様…?」
そこにいたのは、ネーベルだった。しかし、様子がいつもと違う。
舞踏会の会場に着いてすぐに見かけた時のネーベルは、髪を綺麗に結い上げていたが今はひどく乱れている。そして、手には何かを握りしめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます