2 そんなもんか
少女は興味深げに怜をじっと見るとフランクに話しかけてきた。
「それにしてもお兄さんは、どこから来たの?この辺りじゃ見かけない装いだね」
怜は何も答えず虚空を見つめる。
「ちょっと無視しないでよ」
「答える義理はない」
「うー」
少女は唸り、怜への怒りでぷるぷる震えている。
「流石の私もデコピンでお兄さんを殺せるレベルだよ。ダメ元で聞くけど、お兄さんの名前は?」
「……怜、金井怜だ」
「怜さん……ね。でも、私はお兄さんって呼ぶね。お兄さんを見つけたとき、何故だかわからないけど他人とは思えなかったんだ。お兄さんに名乗らせて、私が名乗らないのは失礼だよね。私の名前は
「馴れ馴れしい奴は好きじゃない」
「ホラまた、そう言う。お兄さんは友達少ないでしょ?」
「……」
怜は目を逸らした。
「リア充たる私が、お兄さんに友達の作り方をレクチャーして進ぜよう。友達はお菓子をあげると出来るんだよ」
「餌付けで威張られてもな……」
「何でお兄さん、そんな可哀想なものを見る目で私を見るの!犬のコジローやパンダのメンマは私の大事な友達だよ」
「人間ですらないのか……パンダ?」
「ふーんだ。友達のいない、お兄さんよりはマシだよ。それに
「実際に見たことはないがな」
「手触りがゴワゴワしてて、とっても暖かいんだよ。だからついついメンマを枕にお昼寝しちゃうんだ。そしたら、母様に学問に励みなさいって、いつも怒られちゃう。
ちかは大きく手でジェスチャーしながら楽しそうに笑った。しばらく話すと、ちかは満足そうに辺りをきょろきょろし始めた。そして探し物を見つけたのか一点に視線を移す。
「お、見っけ。この辺にあると思ったんだよね。これが何かって?知らない?草の実だよ。笑っちゃうほど美味しいんだ。さあさあ、食べちゃいなよ」
ウィンクするちかを疑わしく見ながら、怜は赤い葡萄のような実を恐る恐る口に入れた。草の実は噛んだ瞬間ジュワット酸味が広がり、怜はとても渋い顔になった。それを見ていたちかはケラケラ笑ってニヤニヤする。
「謀ったな」
「ごめんなさーい。でも、幸せな味がしたでしょ?」
「幸せな味?」
「言葉では表現できないけどね。自分だけじゃなくて、周りにいる人も幸せにする変わった果物なんだ」
「お気楽な食べ物だな」
「そうだね。だけど、それが良いと思う」
「そんなもんか?」
「そんなもんだよ。じゃあ、私はそろそろ帰らないと、お兄さん近くの国まで案内しよっか?」
「悪い、助かる」
「それでは大河国までレッツゴー」
「無駄にテンション高いな」
ちかは楽しそうにスキップしながら南西に歩き始め、怜は後に続いた。
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