第6話

羊。そして彼女と娘。


なんであのとき自分も死んでしまわなかったのだろう?簡単にできたはずだ。キッチンには包丁もあったし、コンロもあったし、丈夫な紐もあった。


でも死ねなかった。


死ななかった。私は死ななかった。もっと言えば死にたくなかった。


確かに、二人の眠った姿を見て死にたいと思った。でもそれだけではないなにかがそこにはあった。それがなにかはわからないが確かにはっきりと明確にそこにはあった。しかしやはりわからなかった。


なんだろう?


羊。


短い足の羊。


毎日朝6時決まった時間に起床。


最低限の食料が与えられた。皆がみな、同じように死ぬまでここにいる者、死刑を待つ者ばかりだった。中にはとても犯罪なんて犯しそうではない人もいた。一体何をしてここに来たんだろう?

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