なんでも出来るけど何もやらない男に美少女は惹かれる

マリモ

第1話 ひねくれぼっち誕生!

 僕は陽キャという生物が嫌いだ。


 あいつらは『広く浅い』付き合いをする。そして時には平気で人を裏切る。そこに罪悪感なんてものは無い。


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 これは中学3年生の頃の僕の話なのだが、僕には友達が一人しかいなかった。でもその友達はたくさん友達がいた。

 所謂、陽キャと呼ばれる人間だ。

 でも、そいつと僕はとても深い付き合いをしていた。1番の親友として、僕はそいつを信頼し、そいつも僕を信頼していた。

 そんなある日、学校に行ってみると、何故かそいつが女子高生を無理矢理犯したという噂が流れていた。何があったのかよく分からなかったが、次の日にはその犯している最中の写真がクラスLINEのグループに送られていた。

 

 最初は目を疑った。そんなことするやつじゃないのに、どうして?という疑問が頭の中をぐるぐると掻き回す。


 僕はそいつの家に行って問いただした。


 泣きじゃくって「やってない!」の一点張りだったが、親友を信じるのはその一言で十分だった。


 後日、よくよく写真を眺めてみたところ、コラ画像ということがわかった。悪質な手口だ。

 僕は直ぐに専門の業者にお願いをして、画像をオリジナルに戻してもらい、それを改めてクラスLINEに送った。


 翌日、親友を貶めたであろう男たちが、教室であるにもかかわらず僕を取り囲んだ。


 よく見てみると、こいつらは僕の親友とよくつるんでいた、『広く浅い』関係の友達だった。


 こいつらは写真を送ってからというもの、僕の親友を徹底的に無視し、いじめ始めた。おかげで僕の親友は不登校になった。


 僕は教室内で、大声で写真について説明した。


「これはコラ画像で、女子高生なんて犯してない。これはただの作り物だ。僕はあの写真を専門の業者にお願いして治してもらったんだ。そしてもう警察に被害届を出してある。お前達に逃げ場なんてない。」


 当時陰キャを極めていた僕が、良くもまぁこんなに大声でハキハキと話せたもんだ。


「それに、僕の親友はそんなことをするやつじゃない!」


 その後、警察に連れていかれた男たちによって事件の真相が明らかになった。

 どうやら、僕の親友のカリスマ性に嫉妬し、貶めるために女子高生をお金で雇って犯してるように見せかけた写真撮影に協力してもらったらしい。

 なんとも惨めな話だ。


 その後、男達は僕と僕の親友に頭を下げた。本当に反省しているらしく、やり返してくるといったことは全くなかった。


 親友には、わんわん泣いて感謝を述べられたが、正直鬱陶しかった。


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 とまぁ、こんなことがあったわけで、僕は広く浅い付き合いというものが嫌いになった。こんな目にあった親友が気の毒で仕方ない。


 進んで友達作りなんてするものでは無い。


 僕はそう思うようになった。





 今更ではあるが、僕の名前は佐藤楓さとうかえで。どこにでもいる普通の人間と思ったら大間違いだ。

 先にも述べたように、僕は友達を多く保有することを良しとしない。逆に毛嫌いする。

 そう、僕は天下無双のひねくれぼっちなのだ。

 いつからこんなにひねくれた性格になってしまったのか自分でも分からないが、恐らく家庭環境の問題であると思う。


 僕には家族がいない。まだ物心つく前に、両親は交通事故で他界した。

 その時僕は従姉妹の家で遊んでいたため、僕だけ生き残る形になった。


 遺産相続、保険金の扱いなど、めんどくさいことは全て従姉妹の両親がやってくれた。

 結果的には従姉妹の家に引き取られることになったのだが、お金目当てとかそういうのは全くなく、とても平和に過ごせていたと思う。


 

 中学卒業と同時に僕の両親が残した遺産を持って一人暮らしを始めた。いつまでも従姉妹の家で養ってもらうわけにはいかないからだ。


 思えばこの時既にひねくれていた。


 それは多分、本物の愛情を知らなかったからだと思う。

 従姉妹の両親は本当に大切に養ってくれた。でもそれは愛情ではない。愛情を知らないが故に、他人にもどのように接したらいいのか分からない。

 そうして静かに暮らしているうちに、人の視線や動きを自然と捉えるようになり、人間不信に陥った。


 どうして教室では明るく振る舞っている人が陰口を言うのか。どうしてクラスで1番のイケメンが少し太った人をいじめるのか。どうしてそれを、僕を含めて誰も止めることが出来ないのか。そして先生も、見て見ぬふりをするのか。


 愛情を知っていれば、僕は止めに入ることが出来ただろうか。

 そんなことは分からない。


 分からないことだらけで、僕は人を信じるのをやめた。

 みんな自分を偽っている。気持ちが悪い。


 そう思うようになってしまった。

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