夏の匂い

青より青い空と山の向こうに仁王立ちする入道雲。足元にはくっきりとした黒い影。太陽のように笑う、黄色い向日葵。蚊取り線香独特な匂いと畳のイグサの匂い。蒸し暑い風が吹いて、土埃をたてる。

風鈴のかけられた縁側で足を揺らしながら、ソーダ味の氷菓にかぶりつく。遠くから祭囃子が聞こえる。今日は夏祭り。誘う人も、誘われる予定もない。

浴衣、しまったままだし。

口の中で言い訳して、氷菓のなくなった棒をゴミ箱に投げた。

カタン、と音がして、ゴミ箱から少し外れた床に落ちた。

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