1.スノードロップ【3人 男1:女2】

登場人物


このみ(女)

ゆず (男)

ともえ(女)


メインはこのみとゆずの会話になります。


時間は約5分程あれば終わります。


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このみ 「久しぶり、ゆず」


ゆず  「このみ!このみなのか!……本当に久しぶりだな」


このみ 「ね。昔は毎日のように一緒に走り回っていたのにね」


ゆず  「お前が俺を引きずり回していたともいうがな」


このみ 「もう、何よそれ!そっちが追いかけてきてたんでしょ!」


ゆず  「ははは、冗談だよ、冗談。鬼も逃げるような形相やめろって。久々に見ると心臓に悪い」


このみ 「あんたこそ、その泣きそうな面やめなさいよ。辛気臭すぎて私の運気まで逃げそう」


ゆず  「ほっとけ!俺のこの顔は生まれつきだ」


このみ 「そういえば、そうね。うん、変わらないね。への字眉」


ゆず  「お前ってやつは……ああ、そうだよな。そういうやつだったよな。ったく。こんなことばっか言い合って、いつも最後には喧嘩したんだ。取っ組み合いまでした女なんてお前くらいだったよ」


このみ 「勝ったのはいつだって私だったよね。泣きながら帰るのよね、かあちゃーんって。」


ゆず  「馬鹿力なんだよ、お前は。」


このみ 「ゆずの方は手加減してくれてたんでしょ」


ゆず  「そりゃあな。いくら、このみが相手だとしても女泣かせたら母ちゃんにぶん殴られる」


このみ 「このみでもって何よ!このみでもって!」


ゆず  「言葉のあやだ。気にするな」


このみ 「ほんとに調子いいんだから」


ゆず  「(笑う)」



このみ 「ゆず、あのね」


ゆず  「うん?」


このみ 「あの時は……ごめんなさい」


ゆず  「……」


このみ 「私、私ね、あんたが羨ましくて八つ当たりしてた」


ゆず  「うん」


このみ 「あの頃、家で色々あったの。」


ゆず  「うん」


このみ 「寂しくて悲しくて……悔しくて優しいゆずに酷い言葉ばかりぶつけた。ああ、こんなの嫌な言い訳しかならないね。本当にごめんなさい」


ゆず  「気にするなよ。そんな昔のこと。俺、馬鹿だから何を言われたかなんて覚えてないし。」


このみ 「ゆず、すっごい泣いてた。忘れてなんかないでしょ。それに、いっぱい叩いた。ゆずが殴り返さなかったのに何度も傷つけた」


ゆず  「平気だよ。ほら見てみろ、お前の殴ったところ。傷痕なんてどこにも残ってない。ほれ、こことこことここ。なんでもないだろ?……それに、お前んちのことも母ちゃんから何となく聞いてたんだ」


このみ 「ほんとに……ごめっ……」


ゆず  「おい、泣くなよ。調子狂う。さっきまで怒ってただろうが。俺ら久々に会えたんだぞ」


このみ 「うん、ごめん」


ゆず  「はいはい、ここからはごめん禁止。もっと俺ららしい馬鹿な話でも……」



     

ともえ 「ゆずー待たせてごめんねー!」


ゆず  「ともえ、悪いけど少しだけ待っててくれないか?」


ともえ 「ん?いいよ?」


このみ 「待ち合わせだったんだ。彼女?」


ゆず  「ああ、来月結婚するんだ」


このみ 「本当?!おめでとう、ゆず!」


ゆず  「ありがとう」


このみ 「幸せなんだね、ゆず」


ゆず  「ああ、まあね」


このみ 「良かった。良かったね」


ゆず  「このみ」


このみ 「彼女さん待たせるの悪いし行くね」


ゆず  「おい、待て」


このみ 「ばいばい、ゆず」


ゆず  「行くな、このみ!俺だって言いたいことが……くそっ」


ともえ 「ちょっと、ゆず。さっきから誰と話しているの?」


ゆず  「……」


ともえ 「ゆずってば!」


ゆず  「守りたかったけど、守れなかった人だよ」


ともえ 「え?どういうこと?」


ゆず  「ああ、ごめん。話は終わったんだ。行こうか」


ともえ 「うん」


ゆず  「10年前に親の勝手で死んでしまった女の子。あいつとの思い出は笑いあったことばかり覚えていたのに、わざわざ謝りに来ちゃう馬鹿で、言い逃げして帰る勝手な奴。……俺の、初恋だったんだ」

     

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ゆずとこのみは幼馴染。

ゆずが小学生の頃、このみの親が一家心中を図り彼女は帰らぬ人となってしまいました。

劇中の「あの時」は亡くなる日の夕方、2人が最期に会った日の出来事。

精神的に追い詰められていたこのみは言うこともできない怒りをゆずにぶつけてしまいます。

それとなく、このみの家庭が壊れつつあり苦しい思いをしていると知っていたゆずは泣きながらも逃げないことで彼女の痛みを受け止めていたのでした。その後の事件に彼は深く悲しみ「あの時、何か他にできたことがあったのではないだろうか」と思い悩みながら生きてきたのです。その中で出会ったのがともえなのでした。

死後、このみの魂は長い間、成仏することなく彷徨います。

彼に言えなかった言葉を伝え消えることで、ゆずが未来のためだけに生きてくれることを願うのでした。









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声劇台本保管庫 @tachibana_danom

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