44 朝からおっぱい

 朝、目覚めた直後。


「……むぐぐぐぐッ!?」


 僕はいきなり窒息しかけていた。


「ほらほら~♡ 灯里さんの爆乳だよ~♡」


 アホなお姉さん彼女の灯里さんが、僕の顔に思い切り爆乳を押し付けていた。


「むぐッ!? むぐぐぐぐ!」


 バシバシ!


 ボインボイン!


「あぁ~ん!」


 僕が必死におっぱいを叩くことで灯里さんがのけぞり、ようやく息が出来た。


「ぷはっ……ぜーはー……おい、朝から何してくれてんだ、このバカ野郎」


「あ~、ひどい~、またそんな風にあたしを口汚く罵って~」


「うるせえよ、デカ乳女。どういう経緯でこんなことしたんだ?」


「だって、翔ちゃんが~寝言で『……ああ、スイカ食いてぇ~』って言ったから。食べさせてあげたの♡」


「僕も人のこと言えないけど、やっぱり灯里さんが一番バカだな!」


「何よ~、もう~!」


 そんな風に僕と灯里さんがケンカしていると、


「うぅ~ん、二人ともうるさいよ~……」


 真由美ちゃんが目をこすりながら言う。


「真由美ちゃん、聞いてよ。朝から君にお姉さんに殺されかけたんだけど」


「だから~、翔ちゃんにスイカをあげようとしたの~! 灯里のスイカップ~♪」


「うざいな~」


「とか言いつつ、しっかり揉んでるじゃない……あん♡」


「グヘヘ、美味そうなスイカだな」


 そんな風に僕と灯里さんがじゃれ合っていると、


「ジーッ……」


 真由美ちゃんが軽く刺すような目を僕らに向けて来た。


 そして、自分のささやかな胸に触れながら、尚も恨めしそうに睨んで来る。


「あ、そうだ。本物のスイカを食べよう」


 ふいに、灯里さんがそんなことを言う。


「そうと決まれば、近所のスーパーにレッツゴー♪」


「いや、まだ開いてないから。その前に、朝ごはんを食べよう」


「え、翔ちゃんはもうあたしのスイカップ食べたでしょ?」


「ちゃんとメシを食いたいの」


「もう~、贅沢なんだから」


「ったく、最近ますますアホになって来たな。やっぱり、その乳に栄養をぜんぶ奪われているんじゃないの?」


「えっへん!」


 ボイーン!


「いばるな」


 僕が辟易として灯里さんに言うと、ちょいちょい、と後ろから引っ張られる。


「翔太くん、そろそろお姉ちゃんのおっぱいいじりはやめてよ」


「ま、真由美ちゃん? もしかして、怒っている?」


「別に、怒ってないけど?」


 そう言いつつ、真由美ちゃんは不機嫌そうに口を尖らせている。


「じゃ、じゃあ、真由美ちゃんのちっぱ……おっぱいも」


「いま、ちっぱいって言いかけたよね?」


「い、言ってません」


「ふん、だ。翔太くんのおっぱい星人」


「あ、じゃあ、朝ごはんを作りまーす」


 僕が立ち上がろうとすると、また真由美ちゃんに掴まれる。


「えっ?」


「その前に……私のおっぱいも味わってよ」


「ま、真由美ちゃん……かぷっ」


「あんッ!……そ、そんないきなり……」


「良いぞ~、翔ちゃん! そのまま、モグモグしろ~!」


「ちょっ、お姉ちゃん、余計なことは言わないで……」


 モグモグ。


「ひゃあああああああああああああぁん!」


 真由美ちゃんの嬌声が響き渡る。


「はぁ、はぁ……パジャマが翔太くんの唾液で濡れちゃったよ……」


「ご、ごめん……」


「うわ、真由美ってば、そんな風に濡れちゃって……めちゃエロね!」


 グッ、と灯里さんが親指を立てると、真由美ちゃんはイラっとしたようで。


「翔太くん」


「あ、はい」


「お姉ちゃんにも同じことをしてあげて」


「えっ? いや、でも……」


「お、来るか? 良いよ、翔ちゃんカモ~ン!」


 姉に招かれ、妹の尻を叩かれ。


 そして、僕は仕方なく、本当に仕方なく、灯里さんのおっぱいにかぶりついた。


「あぁ~ん!」


 その結果……


「やった~、あたしも濡れちゃった。あ、でも、先の方しか濡れてないな~」


「いや、まあ、灯里さんはデカすぎるから」


「あ、そっか~」


「イラッ」


「ま、真由美ちゃん?」


「今度は私が家出してやろうかな……ブツブツ」


「さ、さあ! おふざけの時間はおしまいだよ! みんなで楽しく朝ごはんを食べよう! 僕も急いで作るからさ!」


「翔ちゃんガンバレ~!」


「うるさいよ、デカ乳さん」


「何でそんなこと言うの~?」


「だって、真由美ちゃんがダークサイドに落ちかけているのは、灯里さんのせいだからな?」


「ひ、ひどい……あたしだってまた家出してやる~!」


 灯里さんはパジャマのままピューッ!と外に飛び出してしまう。


「あっ、おい、灯里さん!?」


 僕と真由美ちゃんは呆然としてしまう。


「しまった、僕もちょっと言い過ぎたか」


「ううん、私こそ。お姉ちゃんのおっぱいに嫉妬して……」


 僕と真由美ちゃんはお互いに反省して、少しシュンとした。


「ただいまー!」


「「って、早っ!?」」


「コンビニ行って来たよ~!」


「そのパジャマ姿で!? ダメでしょ!」


「え~? コンビニなんてそんなものじゃないの?」


「いや、だって……そんなデカ乳をさらしたパジャマ姿はヤバいだろ!」


「そう? だって、普段から谷間は出しているよ?」


「いや、その爆乳が凝縮されている感じがむしろヤバくて……」


「もう、翔ちゃんってば、あたしのおっぱいについて熱く語り過ぎだよ~♡」


「あっ」


 ふと、そばでまた嫌な気配がして、僕はギギギと振り向く。


 真由美ちゃんが涙目でふくれっ面になっていた。


「ま、真由美ちゃん……?」


「翔太くんのおっぱい星人」


「グハッ!?」


「きゃはは~、ウケル~!」


 灯里さんはお腹じゃなくおっぱいを抱えて笑う。


 マジでムカツクな、このおっぱい姉さん。


「良いもん。翔太くんを見返すために、またおっぱい育てるから。えいっ、えいっ……大きくなれ、えいっ!」


「ま、真由美ちゃん、落ち着いて!」


 その後……


「ほら、真由美。牛乳飲みなさい。おっぱいが大きくなるから、お姉ちゃんみ・た・い・に♡」


「むぅ~……おっぱいパンチ!」


「うぐっ!? ま、真由美ってば……いつの間にこんなに凶暴になったの?」


「お姉ちゃんのせいだよ。あと、おっぱい星人な翔太くんもね」


「灯里さん、とりあえず二人で真由美ちゃんに土下座をしよう」


 3人で仲良く(?)朝ごはんを食べた。







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