33 灯里さんと二人きりでデート……のはずが、その友人たちに囲まれる

 休日。


「じゃあ、行って来るね」


「「いってらっしゃ~い」」


 真由美ちゃんは友達と遊びに行くので、出かけて行った。


「さてと……どうしようかな」


「ねえ、翔ちゃん」


「ん?」


「デートしない?」


「うん、良いよ。どこに行くの?」


「翔ちゃんとならどこでも良いけど……じゃあ、街をぶらつきましょ?」


「分かった」




      ◇




 灯里さんと二人きりでデートするのは、久しぶりだ。


 たぶん、あの時、僕が真由美ちゃんと付き合って、灯里さんが出て行くと言ったあの時いらいだ。


 それが今では、恋人として歩いている。


 二人も恋人がいるなんて、イケナイことかもしれないけど。


 真由美ちゃんと同じくらい、灯里さんのことも好きだ。


「ねえ、翔ちゃん。服屋さんに行っても良いかな?」


「うん、良いよ」


 僕は灯里さんと一緒に服屋に入る。


「うーん、どれにしようかな……」


 灯里さんは口元に指を置いて悩んでいる。


「これ何かどうかな?」


「あ、可愛いかも。ちょっと清楚めだけど」


「普段、派手でエッチなお姉さんがこういう清楚系の服を着るのって、たまらないんだ」


「そ、そうなんだ……翔ちゃんって、そういうのが好みなの?」


「うん。ダメかな?」


「ううん、嬉しい。じゃあ、着替えて来るね」


 それからしばし、灯里さんは試着室に入り……


「お待たせ」


 シャッとカーテンが開く。


「ど、どうかな……?」


 服装が変わったせいだろうか。


 灯里さんがいつになく、しおらしく感じる。


「ヤバイ……想像以上に可愛いよ」


「ほ、本当に?」


「清楚だ……けど、おっぱいはちゃんと目立っている。清楚巨乳だね」


「も、もう、翔ちゃんのえっちぃ!」


 灯里さんはそう言って、


「じゃあ、この服を買おうっと」


 灯里さんがレジに向おうとするので、


「灯里さん」


 僕はそれを優しく奪い取った。


「えっ?」


「僕が買うよ」


「え、でもお金は……」


「大丈夫。節約してコツコツ貯めたお金があるから。前にバイトもしていたし」


「そ、そうなんだ……じゃあ、プレゼントしてもらっちゃおうかな」


「うん」


 僕が笑顔で頷き、会計を済ませる。


「ありがとう、翔ちゃん」


「どういたしまして」


「ねえ、そろそろお腹すかない?」


「そうだね。何か食べようか」


「あたし、ステーキが食べたい」


「肉食だねぇ」


「がおー」


 そんな下らないやりとりをしていた時、


「あれ、灯里じゃない」


 その声に僕らは振り向く。


「あっ、恭子」


 そこに居たのは、見覚えのある女性だった。


 茶髪のウェーブがかったショトヘアが揺れる。


「久しぶり~、元気してた~?」


「って、この前一緒に旅行に行ったでしょ?」


「ああ、そうだったね。そこで、あんたから散々、彼氏のノロケ話を聞かされたし」


 そう言って、ニヤニヤしながら僕の方を見る。


「ど、どうも」


「久しぶりね、翔太くん。真由美ちゃんとも上手く付き合っている?」


「え、ええ、まあ」


「ちょっと、恭子。あまり翔ちゃんにちょっかい出さないでくれる?」


「良いじゃない、ちょっとくらい」


 そんな風に話をしていると、


「あれ、灯里がいるじゃーん」


 数人の年上のお姉さんたちがやって来た。


「あ、みんな」


「ねえねえ、灯里が噂の年下の彼氏くんとデートしているんだって」


「「「えっ、マジで!?」」」


 やって来たお姉さんたちは目を丸くする。


 そして、僕を見た。


「うわ、写真で見るより良い男じゃない」


「かっこいい~」


「ていうか、かわいい~」


 お姉さんたちは言う。


「あ、あの……」


 年上のお姉さんたちに囲まれた僕は、すっかりしどろもどろになってしまう。


「ちょっと、みんな。あたしの翔ちゃんにちょっかいを出さないでよ~!」


 灯里さんが言う。


「あたし達、これから二人きりでランチなの」


「あら、良いわね。私たちもお腹が減っていた所よ」


「じゃあ、みんなで行こうよ」


「そうしよう」


「イエーイ」


 お姉さんたちはすっかり乗り気になってしまう。


「ちょっと、勝手に……」


「翔太くんはどうかな?」


「えっと、その……良いですよ」


「しょ、翔ちゃん?」


「まあ、灯里さんの友達だから。大切にしないと」


「やだもう、この子ってば可愛い~!」


 お姉さんの一人が僕を抱き締める。


「あっ!」


「ずるーい、あたしも~!」


「あたしも~!」


 僕はお姉さんたちにぎゅうぎゅうとされる。


「よーし、お姉さんたちのおっぱいで翔太くんを潰しちゃお~う!」


「「「お~!」」」


「ちょっと、みんな……バカアアアアアアァ!」


 灯里さんは軽く泣きながら友人たちをポカポカと叩く。


 一方、僕はお姉さんたちにサンドイッチされまくって、軽く意識を失った。







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