第十五話 タイムリミット
二人に現状を伝えたミレイは、これから発生するだろうことについて援助を求めるため、街へ全力で戻っていた
「彼奴らが言うには、設置は八割がた終わっているって事だった...。この調子じゃ、今夜にでも街が襲撃に会う!クソッ!もっと動け自分の足!」
そう悪態を吐きながら全力で活動する足を叱咤するミレイ。
今はあのフード達の動きを遮る蔦などを森中探し縛っている間に、太陽は無慈悲にもその光を橙色に変え、空は薄く青みがかっている場所が見え始めていた。
今はもう普段の冷静さは何処へやら、ただこの事を街の兵士たちに伝える事だけが頭の中を支配している
「はぁ...はぁ、やっと着いた...早くこのことを騎士たちに伝えないと...」
胸を上下させたまま外壁に手をつき、門のところまで歩いていくと、通行人が減って暇そうにしている門番を見つけ、その人の元にふらふらとした足取りで寄り、肩を両手で掴むとそのまま力が少し抜ける
「おい大丈夫か!一体何があった!」
「はぁ...森に...魔族とその下っ端たちが現れて...はぁ...森を焼いて...魔物たちをこの街にけしかけようとしている、早く、騎士たちの出動を...」
言い終わると、掴んでいる手からの力が抜け、壁に寄りかかる。
その自分の肩を叩きながら、意識があることを確認するとしゃがみながら詳細を聞き、相当驚愕と焦燥に染まった顔で顔を覗いてくる
「信用のロール判定...現状の補正値を付加、50以下成功、35成功」
「っ!————分かった!急ぎ、連絡用と護衛用の騎士、合計六人を派遣するよう申請してくる!お前の名前は?」
「...ミレイです」
「分かった、騎士殿たちが準備が出来次第、すぐに出発する!それまでに体調を戻しておいてくれ」
「...出来るだけ早く頼みます」
そう言うと、肩から手を離しすぐに門番の詰所に入り、大きな声で援助を求める旨を伝える声が聞こえる。
すると街の貴族街の中央、つまり領主の敷地内から大きな鐘の音が鳴り響き始め、街中に広まると、夕刻の商売が盛り上がる喧騒は、どんどんと人々のざわめきへと変化していく。
その中を馬の足の音が少しずつ大きくなっていき、詰所の前に、騎士の鎧を着ているが比較的軽装な者が一人。重装甲の鎧を纏い、平均百八十センチほどの身長の人たちが乗る馬にも同様な装備と、その身長とほぼ同じ長さの長剣を持った男たちが並び、
中央に立つ金髪美人の騎士が敬礼をする
「援助の要請を聞き、参上した。私は『カルナ』、この小隊の隊長を務めている。
今は一刻を争う事態らしいな、ならば説明は移動しながら話そう、ミレイ殿は私の後ろに乗ってくれ」
カルナが敬礼で挨拶をすると、それに続き他の騎士たちも名乗り始める
「私の名前は『ライネル』この隊の副隊長を務めている、移動する時は私の背後に乗ってくれ」
「はい!できるだけ急いでください、仲間が森でフードをかぶった男たちを確保してるんです」
「分かった、詳しい事情は移動中に」
そういうとすぐに乗馬し、他の騎士たちもそれぞれの馬に乗り、すぐにトップスピードで駆け始める
大体半分ほど進んだところ迄に、部下の人たちと行動指針を事務的に話し、内容が固まったのか、
剣を抜きながら、偶に横にすれ違う狂乱状態の魔物たちを、道中の邪魔になっているものだけ、
斬り捨てていく
「それで、今回はどんな事件があったんだ?」
「はい、要点だけ伝えると、冒険者ギルドでソクラ草の値段が上がっていたので、その回収にラスカルド森林に向かったんですが、そこに魔族とオカルト集団みたいなものがいまして...」
「...オカルト集団?...なんだそれは」
ああそっか、これじゃ伝わらないんだっけ
「——コホン...要は、フードをかぶっている怪しい集団ってことです。後ろで、恭しく跪いていたので、手下だと思うのですが」
そういうと、騎士たちの表情に影が落ちる。魔族に幾度も苦虫を咬まされた悔しさなのか、中には殺意を目に宿す人もいる
間近で、殺意に照らされた事のなかった彼は、そんな騎士達の表情を見て少したじろぐ
「———っ」
「...あぁ、すまない。奴等とは何回ともしのぎを削りあった仲でな、その度に部下たちが一人一人と殉職していくんだ。本当に不甲斐ないばかりだよ...、今度こそは...!」
そう言うと、手先に力がこもっていき、剣先が震えカタカタと音を鳴らす
「...いえそんな事があったとは...すみませんでした」
口から発した言葉は、特に考えもせず自然に出てきたもの。
目の前で殺されていく仲間という状況が、特に想像出来るわけでもなく、無神経と分かってはいるものの、今までそんな経験が一切無い彼が、実感から湧く、感情が篭ってない応答をしてしまうのは、仕方の無い事なのだろうか
「バガーーン!!!」
「ッ!」
ラスカルド森の遠方から、爆発音と少しの熱風と共に、二十メートルほどの火柱が上がる。
突然のことに、耳を塞いだおかげで、耳鳴りは一切起こってはいないが、至近距離であれを受けたかもしれない、二人にことを思うと、居ても立ってもいられない。
「...ふ、二人が!急いで!」
「分かっている!落ち着け!急行するぞ!」
「「「「応!」」」」
すると一気にスピードを上げ、それに部下たちも後続していく。
森に辿り着いたのは、黒煙が空に舞い上がり始めたくらいだった。
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