史上最強のヘビー級ボクサーは?(後編Ⅱ)

夏希ヒョウ

第1話

2019年末の、二大・再戦。

ワイルダー・ジョシュア・ルイス・フューリー・オルティス……

最後に生き残るのは誰だ⁉


★​アンソニー・ジョシュア(英)vsウラジミール・クリチコ(ウクライナ)​(2017年4月)――。

両者のファイトマネーは、最低保障が約22億円ずつ。入場料収入は36億。英国における、PPV(有料放送)の記録更新も確実視されています。

今までの最高記録は、メイウエザーvsパッキャオの115万件。

2位はメイウエザーvsリッキー・ハットン(英国)。

ちなみに米国の最高記録は、メイウエザーvsパッキャオの440万件×100ドル。

その他、各国のテレビ放映料やグッズ売り上げなど。


ヘビー級・新旧対決にして最強決戦は、早くも今年の年間最高試合を思わせる内容でした。

三団体王者として長期政権時代のクリチコは、正統なボクシングを駆使し盤石な強さを発揮していながら、ファンや関係者からは「退屈なボクシング」と揶揄(やゆ)されて必ずしも高評価を受けていたわけではありませんでした。主戦場のドイツでは絶大な人気がありましたが、ボクシングの発祥地・英国ではテレビ放映されず本場・米国進出も失敗。(報酬も1試合、10億程度)

しかし、ジョシュア戦ではアグレッシブ(攻撃的)な戦法を見せ、リ・マッチ(リターンマッチ=再戦)が期待されます。

意外だったのは、序盤でクリチコが精神的に押していたことです。やはり、長きに亘って世界タイトルを防衛し続けた実績はだてではなかった。


5Rに最初のダウンをクリチコが期すものの、6Rにはダウンを取り返し、ややクリチコペースで試合展開が進みながら、10R終了間際、互いの右がヒット。わずかにクリチコのほうが先に当たったけれど、ほとんど相打ちでどちらがダウンしてもおかしくなかった。ジョシュアの首が一瞬、激しく振れたけれど、それでも両方が何事もなかったように立っているのが不思議なくらい。

そして、11R開始直後に(勝負を仕掛けた)ジョシュアが、右ストレートをヒットさせて形勢逆転。

二度ダウンさせて追い込み、レフェリーストップでジョシュアのTKO勝ち。

それでも試合後のクリチコの表情は清々しかった。

「俺はまだできるし、今度は勝てる」と思ったように見えました。 

しかし、伸び盛りのジョシュアは次はさらに、その上をいくことが予想されます。

ちなみに、ジョシュアは高校生時代、100メートルを11秒切ったらしい。


次戦の相手として解説者席に陣取っていたワイルダー(米国:38戦・全勝37KO)との三つ巴は、ヘビー級の新・戦国時代を予感させます。(クリチコが引退しなかった場合の話ですが)

ワイルダーは強打のパンチを振り回し、「一発当てれば全ては終わる」といったパンチャー・タイプ。ジョシュア、クリチコのどちらと戦っても乱打戦が予想されます。実現すれば、報酬が破格のスーパー・ファイトです。


9万人の大観衆、HBOはLIVEで、翌日にSHOW-TIMEがゴールデンタイム(米国二大局が放送)。

やはりボクシングの主役たるべきヘビー級が活性化しないと、ボクシング界全体が盛り上がらないのではないでしょうか。

『アメブロ』では写真解説入りで紹介しています。


2018年​3月3日(日本時間4日)、WBC王者・ワイルダー(米国:39勝38KO)vs元WBA暫定王者のオルティス(キューバ:27勝23KO)の、​無敗対決​が決定。

​勝者がWBA・IBF王者のジョシュア(英国)との激突となれば、スーパー・ファイトが期待されるでしょう。超スーパー・ファイトに昇格するには、やはりワイルダーが勝つこと。

ワイルダーvsオルティスは昨年11月にも対戦が予定されていましたが、オルティスの禁止薬物・陽性反応で試合は中止に。オルティスは持病(高血圧)の治療であることを主張するも受け入れられなかった。しかし、再び対戦が決まったことで、今後のヘビー級戦線は断然面白くなりそうです。

オルティスの利点は、サウスポーであることとショート・パンチが上手い技巧派であること。

予想はズバリ、オルティスの左ショート・アッパーでワイルダーがグラつきダウン寸前まで追い込まれるもワイルダーの強打が爆発! その後、ワイルダーの逆転KO勝ち!!(腰高のワイルダーであるゆえに、打たれたときの耐久力とバランスに一抹の不安があります)

昨年11月、唯一の判定勝利となったスタイバーンに対し、初回KOで6度目の防衛を果たしたワイルダーは乗りに乗っています。ただ、それが油断にならなければ良いのですが……。

ワイルダーのボクシングは強打を振り回し、「一発を当てて試合を終わらせる」といった魅力的なスタイル(戦術)です。


​​今後、​《ワイルダーvsジョシュア》​の「米英対決」が国の名誉を懸けて、全世界のボクシングファンのみならず注目される​世紀の決戦​となるでしょう。


★3月4日、ワイルダーvsオルティス……結果は、ワイルダーの10RKO勝ち。

序盤は、ガードを堅めながら圧力をかけるオルティスに対し、警戒するワイルダーはスィング気味の大振りパンチを避け、普段よりコンパクトな右ストレートや上下・左右のステップで相手を見定める展開が続いた。

​KO率97%​のワイルダーだが、思い切ったフルスイングで自ら攻撃を仕掛けるのではなく、相手のミスを待っていたようだった。しかし、アマチュア時代の戦績:343勝19敗のキャリアを持つオルティスは、攻防兼備でなかなか隙を見せない。元々、カウンターパンチャーのオルティスはプレッシャーをかけながら相手の出方を見て、それを狙っていた。

時おり、ワイルダーのワイルドな強振パンチで観衆が沸き上がる。

お互いが、相手のカウンターに危機を感じているようだった。

ポイントでは、ややオルティスが有利か。


しかし第5ラウンド、互いに決め手を欠きブーイングが起き始めたころのラウンド終了間際、右ストレート2発でワイルダーがダウンを奪う。


6R:精神的に焦りがあるオルティスと優位なワイルダーの、激しい打ち合い・パンチの交換で大歓声の場内。


7R:残り43秒、双方のパンチが相打ち! 先に当てたのはワイルダーだったが、オルティスの右フックでワイルダーがぐらつき、オルティスが攻め続ける。絶体絶命のワイルダーはクリンチで逃れながら、何とかラウンドを凌いだ。

採点は10対8。


8R:攻勢を続けるオルティスだが、打ち疲れてスタミナが切れかかるも、ワイルダーは攻めることができない。


9R:少しづつ体力を持ち直したワイルダーは、終盤右をヒットさせる。オルティスの左と相打ちになるも、今度はワイルダーの右が勝った。ダウンはなかったものの、ワイルダーが有利のラウンド。

ゴングと同時のオルティスのパンチに反応した、ワイルダーのパンチはあきらかにゴング後の反則。


10R:1分過ぎ、オルティスのパンチを受けて下がりながらも、ワイルダーはカウンターを放ちつつ、ロープまで後ずさり……。しかしロープを背にしたワイルダーは、ロープの反動を使うように突進して、右の連打からオルティスを放り投げた。膝をつくオルティスだが、これはパンチによるものではないためにレフェリーはそのまま試合再開。

立ち上がったオルティスだがダメージは濃厚で、ワイルダーの左右のビッグパンチ5連打でダウン!

立ち上がったオルティスに襲い掛かったワイルダーの、強烈な右アッパーでTHE・END。


しかし、負けたオルティスも決して商品価値が暴落したわけではない。

本人も語っているように、7Rで勝てる可能性もあった。(もう少し時間があれば)

オルティスがカムバックできれば、『ジョシュアvsオルティス』も期待できます。


次に4月1日、WBA・IBF王者のジョシュアvsWBO王者のパーカーの統一戦、順当にいけばジョシュアの勝ち。

そうなれば、年末には『ワイルダーvsジョシュア』の米英対決!!


★4月1日(日本時間)

《IBF&WBA王者》ジョシュアvs《WBO王者》パーカー。

会場はイギリスのカーディフ(7万8千人)

……お互い決め手に欠き、ダウンがないまま試合は判定へ。

118対110が2人、119対109が1人。

ジョシュアは21戦目にして初めての判定勝利となりました。

序盤からガードを堅めて前に出るジョシュアと、圧力に押されながらロープを背負うパーカーの実力差は明白だったのですが、強引に倒しにかかると一発をもらうリスクがあるので、ジョシュアは最後まで無理をしないボクシングに徹しました。

それは、パーカーが予想以上にパンチ力があって、タフだったことも関係しているでしょう。

ワイルダー戦に向け、ジョシュアは万が一にも負けは許されません。負けてしまえば全てがご破算で、その後でジョシュアが数年かけてワイルダー戦までこぎつけても、報酬(ファイトマネー)の配分などで有利に交渉できません。というのも、観客動員力ではワイルダーはジョシュアには到底及ばないからです。

つまり報酬の取り分は、五分五分ではなく、ジョシュアが有利。

やはりジョシュアにとってもボクシングファンにとっても、両者が無敗王者での統一戦ができる今が、最大のイベント・チャンスなのです。

そして、この試合を制した方がアリ、フォアマン、ホームズ、タイソン、ルイス、クリチコ兄弟……という、最強の系譜を受け継ぐことになります。


★「史上最強のヘビー級ボクサーは?(後編)」で私が予想した通り、タイソン・フューリー(英)がカムバック!(ビッグマネー&世界的ヒーローへのチャンスがあってそれを獲得できる資質を持っているフューリーが、このまま終わるはずがない)

彼は薬などで堕落した生活を清算して、もう一度立ち上がろうとしている……ということでしょう。


2015年11月、WBA・IBF・WBO統一王者だったウラジミール・クリチコを判定で破って以来、休養していたフューリーが、18年6月9日に4R終了時TKOで勝利。復帰2戦目は8月、判定勝利。

「ジョシュアvsワイルダー」が難航している現在、《第3の大巨人(206センチ)》として今後、順調にカムバック路線を突き進めば、来年の末頃にはタイトル挑戦にこぎつけるでしょう。


ジョシュアは9月に、ポペトキン(ロシア)と指名試合の予定。

ジョシュアとワイルダーによる「​​ヘビー級・最終決戦​​(統一戦)」ができないのは、米国ではまだ二人はビッグ・ネームとは言えないからで、ビッグ・マネーが動くには、もう少しキャリアを積む必要があるようです。


★18年12月2日、試合前に更新。

まだ、米国ではスーパー・スターとは言えないWBC世界ヘビー級王者・ワイルダー(40戦全勝39KO)に​ビッグチャンス​到来!!

201センチ・96,5キロ「デオンテイ・ワイルダー(33才・米国)」対、206センチ・116,3キロ「タイソン・フューリー(30才・英国)」というビッグ対決で、ヘビー級・無敗対決という​ビッグマッチ​。(ロサンゼルス開催)

フューリーは2015年11月、ウラジミール・クリチコ(WBA防衛8度・IBF防衛18・WBO防衛14)の王朝政権に終止符を打った後、コカインや躁うつ病など私生活の乱れから2年7ヶ月のブランクを作ってしまった。カムバックして2連勝後(29戦全勝16KO)、WBC王者のワイルダーに挑む。

しかし、2戦では時期尚早。彼の武器であるスピードはあるものの、まだ体には弛みが目立ちます。フューリーはこの試合に向けて仕上げてくるでしょうが、​ワイルダーが中盤から終盤にKO勝ち​すると予想します。

(私は「来年の末にフューリーはタイトル戦にこぎつける」と前述しました)

​​そして来年は、ヘビー級・真の世界一を決める、アンソニー・ジョシュア(3団体王者・英国)との《​米英対決​》が世界中を巻き込み、報酬はそれぞれが100億を超す超スーパー・ファイトが実現するでしょう。

ジョシュアは、9万人収容のサッカースタジアムのチケットを1時間で完売させる英国のスーパー・スター。

仮にフューリーが勝てば、英国人同士のボクシング最強決戦になり、今ボクシングが一番熱い英国でのスーパー・ファイトとなります。


★試合後、更新。

予想が外れました……。

「KO必死」と期待される試合は、時としてお互いが警戒したり過剰なクリンチやカウンターを狙いすぎて派手な打ち合いにならず、凡戦に終わったり判定までズレ込むことがあったりします。

しかし、『ワイルダー​​​​vsフューリー』は《引分け》だったものの、(今年の)年間最高試合と言われた『ワイルダーvsオルティス』(3月ニューヨーク)にも引けを取らない好試合だった。1Rからヘビー級らしい迫力の打ち合いを見せ、9Rと12Rにダウンを奪ったワイルダーが印象は良かったですが、各ラウンド、スピードで上回るフューリーがポイントを抑えた結果の判定。

しかし、試合後に約束した再戦が実現したらフューリーが有利です。

12Rのダウン後、失神に近いダメージから立ち上がったフューリーが再開後に見せた回復力の速さは、解説者も驚くほど。​​それどころか、その後に見せたフューリーの右カウンターでワイルダーがグラつき、試合終了後の両者の表情は、ワイルダーがダメージがあったように感じられました。「あの俺のパンチを食らって立ち上がって、さらに反撃しやがった」と、ワイルダーはショックを受けたようだった。

この試合を見る限りではパンチに対する耐久力という点で、フューリーが上回っていると思われます。しかもフューリーは復帰後に2戦しかしていなかったため、次の試合はそういう意味でもフューリーの優位性が考えられます。


★ボクシング史上、最大の番狂わせの一つ(パッキャオ談)

WBAスーパー・IBF・WBO世界ヘビー級王者で、現在ヘビー級最強の一角「アンソニー・ジョシュア」(29歳:22勝21KO無敗)とWBO6位「アンディ・ルイス」(29歳:31勝21KO1敗)が、日本時間6月2日(ニューヨーク・MSG)で対戦した。

当初は挑戦者だった世界2位のミラーが薬物検査で失格のため代打で出場したルイスだったが、米国進出して知名度を上げようとするジョシュアの敵ではないと思われていた。

(ワイルダー戦をさらに盛り上げ《世紀の一戦》にしようというジョシュア陣営の思惑)

しかもルイスは、「12R動けるのか!?」というアンコ型の白人(メキシコ系の米国人)。

しかし試合が始まると、上体やフットワークが柔軟な動きのルイスは、ボクシングも上手い。(世界ランカーなので当然ですが)

ジョシュアの右ストレートに右ストレートを合わせるタイミングや、頭を低くしてのボディジャブを打つジョシュアに左フックを合わせるなど、反応の速さを感じさせる。

試合経過とともに、ジョシュア楽勝のムードは払拭されていった3R、(開始40秒で)ジョシュアは右アッパーから左フックの連打でダウンを奪う。「やはりここまでか?」と、倒しにかかるジョシュアとルイスが打ち合い始めたと思ったら、ルイスの左フックでジョシュアがグラつき、その後の連打(最後は右のフックが頭頂部)で、今度はジョシュアがダウン!!(この倒し合いが、さすがヘビー級のだいご味)

残りの(3R)1分半は、明らかにジョシュアがダメージ濃厚。やや口を開けているようなジョシュアは、少し息切れとも見える。

(おそらくは、油断が練習量にも表れているのか?)

しかもルイスの勢いは止まらず、ラウンド終了間際に再びジョシュアはダウン。これはパンチというよりその直前の連打が効いていて、押し倒された印象。

立ち上がったジョシュアだが、コーナーに戻る足元はフラフラとまではいかないが覚束(おぼつか)ない様子。


4,5,6Rは、これといった動きはないが、198センチのジョシュアは10センチ低くやや前かがみに出てくるルイスが、やり辛そうだ。

そして7R開始20秒、ルイスのビッグパンチ(右フック)が頭部に炸裂し、その後の10連打でジョシュアはダウン。(やや前に引き倒された格好)

すぐに立ち上がるも、3連打を浴びてまたしてもダウン。

再び立ち上がったジョシュアだが、レフェリーはストップした。ジョシュアは抗議するが、鼻血を出した彼からは精彩が感じられない。

見事、戴冠したルイスは、メキシコ系の初のヘビー級王者となった。


ダイレクト・リマッチが11月か12月に予定されているが、よほどルイスを研究して臨まないと厳しいかもしれない。おそらくジョシュアにとって、ルイスは鬼門で相性が悪いように見える。もし、再戦でも勝てないようだとワイルダーとの米英対決(スーパーファイト)もなくなるし、そうなれば(ジョシュアと)同じ英国人のフューリーが台頭して来春には「ワイルダーvsフューリー」の再戦か?

            【ヘビー級の現在(2019・10・2)】        

わずか一撃で観るものすべてに感動と興奮を与える《ヘビー級》❢❢現WBAスーパー・IBF・WBO王者アンディ・ルイス(33勝22KO1敗)当初、予定していた挑戦者がドーピング検査で黒だったため、急遽ルイスが代役として挑戦。そして番狂わせでジョシュアから奪取。                

ワイルダー(41勝40KO1分け)                

ジョシュア(22勝21KO1敗)                

フューリー(27勝19KO1分け)


★11月23日、ワイルダーは、元WBA暫定王者「ルイス・オルティス」(31勝26KO1敗2無効試合)と再戦。

2018年3月の初戦では、ワイルダーが10RKOで勝ったものの、それまではダウン寸前に追い込まれるシーンがあったりと苦戦した。

(勝者がWBC王者として、フューリーと?)

★12月7日、ジョシュアvsルイスの再戦。


~ジョー小泉のウィークリー・BOXING~

11月20日の記事(スポーツ報知)から一部紹介させていただきます。


(ワイルダーvsオルティスは)因縁の再戦であり、昨年3月の初戦では攻守逆転につぐ逆転の末、王者が10回TKOで命拾いした。

「こんな難敵と再戦するのはチャンピオンの義務からだ。最強を証明し続けねばならない」と、身長201センチのワイルダー(41勝40KO1分)は燃えている。

一方、アマ349勝19敗の経験を持つサウスポーの怪物挑戦者は、

「再戦の機会に感謝する。初戦のミスは繰り返さない。今度勝つのは自分だ」と豪語する。

初戦で、オルティスは7回に王者をKO寸前に追い込んだが、詰め切れず10回に2度のダウンを食い、TKO負けした。

9回終了までジャッジ3者とも1点差の接戦だった。

ワイルダーは力で圧倒、テクニックではオルティス(31勝26KO1敗)のほうが上で、サウスポーの連打は今回も王者を苦しめるだろう。

ヘビー級は戦国時代で、5強がトップで競合する。残り3強はWBC以外の3冠王者アンディ・ルイス(33勝22KO1敗)を筆頭に、そのルイスに番狂わせの敗北を喫した前王者で五輪覇者でもあるアンソニー・ジョシュア(22勝21KO1敗)、ワイルダーと引分けたタイソン・フューリー(28勝20KO1分け)だ。

ワイルダーは身長206センチの変則スピードスターのフューリーと来年2月に再戦を計画している。5強全員「ハイリスク・ハイリターン」のサバイバル戦に突入する。

最後に生き残るのは誰か?


★ワイルダーは一度、KOできずに判定まで長引いた勝利がありましたが、そのスタイバーンを再戦で1RKOしました。

今度の再戦も、ワイルダーが学習能力を発揮して短期決戦でKOできれば、さらに評価はアップするでしょう。しかし、オルティスもサウスポーの元王者で技巧派です。アッパーなどのショートパンチも上手い。大振りになりがちなワイルダーのビッグパンチにショートで対抗できれば、結果は分かりません。

12月の、ジョシュアvsルイスのダイレクト・リマッチも興味深いですが、個人的には再戦もいいけど、たとえばワイルダーvsジョシュア、フューリーvsオルティス、オルティスvsルイスといった初対決を観たい。

やはり、これら5強で《総当り戦》をやってほしい。


★ジョシュアvsルイスの再戦(12月8日)

初戦(6月2日)は、当初の挑戦者だったジャレル・ミラーが薬物検査で失格。(一か月前に)代打として決まったのがアンディ・ルイス(33戦32勝21KO1敗)だった。が、ジョシュアが判定勝ちしたパーカーに(ルイスは)判定負けを喫していて、さらにアンコ型のために油断もあったに違いない。(ルイスの判定負けといっても2-0の僅差だし、それからジョシュア対策でスタイルや戦術を変えたとしたら、また違った選手になることは充分に想像できる)

ジョシュアは198センチ・リーチ208センチ・121キロ。

ルイスは188センチ・リーチ188センチ・121キロ。

……しかし試合が決まったら、ルイスはスピードがあってテクニックもあった。何よりジョシュア相手に臆せずに打ち合うだけのハートの強さも兼ね備えている。

日本におけるボクシング評論家の第一人者・ジョー小泉さんは、

「ジョシュアはオリンピック金メダリストだけれど、ルイスもアマチュア歴105勝5敗だし、スピードもある。体型に誤魔化されたら下手をしたら返り討ち。ジョシュアはサイドからの攻撃に弱いので、ルイスはまたそれを狙ってくる」

元バンタム級(最強)王者・山中さんによると、

「ジョシュアはルイスの動きに反応できていなくて、やりづらい部分があると感じた。相性としては良くない。再戦もジョシュア不利」


かつてレノックス・ルイスも、オリバー・マッコールやハシム・ラクマンに一発KO負けの苦杯を舐めたが、再戦で段違いの実力差を見せつけて圧勝している。次のダイレクト・リマッチは、本当の意味でジョシュアの真価が問われる。おそらくジョシュアにとってアンディ・ルイスは天敵であろう。

それはルイスのような変則的なボクシングは対応が難しいし、その適応能力も試されるからだ。

(個人的には20センチのリーチ差を活かしてアウトボックスに徹するか、むやみな打ち合いは避けるのが妥当。しかし、それではファンは納得しないでしょうが、とにかく勝利に徹することができるか? が、一つの選択肢)

これは他の王者たちにもいえる。つまり、これでジョシュアが連敗するようなら、今後のヘビー級戦線はルイスがトップに躍り出る可能性が大だ。あのスタイルは、ワイルダーにも通用するかもしれない。だが、フューリーに対してはどうか? 興味は尽きない。

少なくとも年末の2大リマッチが、来年以降のヘビー級を占うターニング・ポイントになることだけは間違いない。


★11月30日、追筆。

《ワイルダーvsルイス・オルティスⅡ》

ワイルダーは7R、右ストレートの一発でオルティスにとどめを刺しました。それまではオルティスがほとんどのラウンドをポイントアウトして、このまま判定までいけばオルティスの勝ちで、後半に入ると、KOしなければワイルダーは負ける……という結果が脳裏をかすめていた矢先、やはりワイルダーは一発の怖さと凄さを見せつけた。

そのタイミングを計るのに7Rの時間を有したということだろう。というのも、ワイルダーはオルティスのパンチを警戒しながらも右を当てるタイミングを狙っていた。

片やオルティスもワイルダーの右を食わないようにサウスポーの利点をいかしたボクシングをしていたし、ワイルダーはやりづらそうだった。それはオルティスが距離をとって、左右に動いたりしてタイミングを外していたからです。しかし、ワイルダーは右の強打を打ち込んでオルティスにプレッシャーをかければ優位に立てたのに、それができないくらいにオルティスの圧力を感じていたようだった。

それでもオルティスのガードをくぐって、右の一発で逆転KO。


次に控える因縁の再戦PARTⅡ、12月8日のジョシュアvsアンディ・ルイス。

改めてジョシュアの最高の一戦、クリチコ戦を観てみると、ジョシュアはクリチコの右をカウンターでテンプルに食らっても倒れなかった。それでもルイスの左右からのフック気味のパンチで効いてしまったのは、横からのパンチが弱いというよりは、やはり油断が練習量や走り込みと重なったために脚の踏ん張りが利かなかったのではないか?

従って再戦は、ジョシュアのKO勝ちを予想します。

たしかにルイスはジョシュアにとって相性の悪い相手かもしれませんが、今度はルイスを研究して同じ轍は踏まないでしょう。

そうなると、来年の2月に再戦PARTⅢ(ワイルダーvsフューリー)の勝者vsジョシュア⁉


2月23日(日本時間)

『ワイルダーvsフューリーⅡ』

現在のヘビー級・最強決戦といえる再戦は、判定ならばフューリーが大差で勝利、KOならワイルダーという見方が一般的ではないでしょうか?

ヘビー級ながら左右のスイッチ・ヒッターという器用で柔軟なフューリー(206センチ)は、スピードもありワイルダーを翻弄するでしょう。

しかし、ワイルダーも再戦に強いという一面を持っています。つまり学習能力が高い。


さて、この二人がどんな闘いを見せるのか?

個人的には、ワイルダーの後半KO勝ちを予想します。それは、いくらフューリーがスピードがあって技巧派といっても、12Rの間に一発も右を食らわないのは難しいと思うからです。

初戦では二度めのダウンの際、フューリーは痛烈に倒れたにもかかわらず、ケロッと立ち上がり反撃して引き分けに持ち込みました。片やワイルダーは、もしダウンしたら立ち直るのは難しいかな? と……。それでも一発のパンチ力に勝るワイルダーが倒し切る❢❢❢❓


3月2日ーー。

まさか、ここまで差が開いた結果になるとは。

今後、ラバーマッチ(第三戦)が組まれることはあるでしょうか?

2015年11月のクリチコ戦を最後に引退して2年7ヶ月のブランクを作ったフューリーが、たった二戦した後、ワイルダーに初挑戦したものの引き分け。そして今回のリ・マッチ(第二戦)は、引き分け後に、二戦しての再挑戦でした。

つまり消化試合が多くなった分、カンが戻ったことも勝因の一つではないでしょうか?

フューリーはワイルダーを後ろに下がらせて(ワイルダーが右パンチを打ちやすい)距離を作らせなかった。また、それだけの圧力がフューリーにはあった。そしてフットワークも軽いし、動きにも無駄がなかった。

終わってみれば一方的な展開。

両者の最低保障が40億円ずつというビッグマッチとは、内容的にはならなかったのが残念だった。


ワイルダーのこれからの世界戦線は、カムバックして勝利を収めながらフューリーやジョシュアの試合動向に左右されることになるでしょう。

ジョシュアとの初対決か? フューリーとの第三戦か?

それとも、京太郎選手にKO勝ちした英国のホープ「ダニエル・デュポア」(14戦全勝13KO)と相まみえるのか?

三人とも英国というのが凄い。

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史上最強のヘビー級ボクサーは?(後編Ⅱ) 夏希ヒョウ @hyou0777

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