悪役令嬢の姉はヒロインの妹を溺愛す(リニューアル版)

0.前世の記憶を思い出してもうちの妹は可愛い

「まって〜！？おねえさまぁ〜！？」

そう言って必死になって私を呼ぶ妹、アリー・ステインローズが今日も可愛い！本当に私の妹は天使の生まれ変わりじゃないかしら！？いや！むしろ天使ね！間違いないわ！昔からこんな可愛い妹が欲しいってずっと思っていたか本当に役得だわ！ん？昔から……？はて？私はアリーの双子の姉だから私もアリーもまだ5歳のはずだけど……

　まぁ、どうでもいいわね！それよりも……アリーが私の後を必死に追って走ってるけど、ここはちょっと意地悪してスピードを上げ、必死に追いかけるアリーをじっくりと堪能しようかしら？それとも、ちゃんと妹の言葉に従って待っててあげようかしら？

　なんて、考え事しながら走っていたせいなのか、むしろアリーばかりに気をとられていたせいなのか、私は石に躓き転んで倒れてしまった…………

『うひょおぉ〜！！とうとう手に入れたわよぉ〜！！』

ん？この声……この姿……誰……？いや……これは……私……？

『ゲーム情報誌が出てからずっと欲しいって思ってたのよね！私の大好き会社「シスコム」が作った乙女ゲーム「リリカル♡スクールラブ」！』

　なんかやたらと説明口調だけど……乙女ゲーム？「リリカル♡スクールラブ」？何故かしら……この妙に胸に熱くトキメク懐かしい響きは……

『ヒロインのアリー・ステインローズちゃんが！もう！可愛くて可愛いくて♡一目惚れしたのよねぇ〜♡しかも！妹キャラ！これ重要！もう最高だわぁ〜！！』

ヒロイン……アリー・ステインローズ……妹キャラ……あぁ！？そうだ！？思い出した！！？私！アンナ・ステインローズは、アリーの双子の姉でヒロインであるアリーの恋路を邪魔しまくる……

「悪役令嬢じゃないのぉ！！！！？」

「おねえさま！？だいじょうぶですか！？」

私が突然起き上がって奇声を上げてビックリしながらも心配そうに見つめている妹が今日も天使可愛い……じゃなくて！落ち着け私！ビークール！ビークール！！

　転んだ頭を打った衝撃で私は全てを思い出したわ。私は前世重度の妹キャラ好きオタクで、妹キャラが出まくる乙女ゲームを片っ端からプレイしまくったごく普通のありふれた女子高生だったわ。

　そして、どうして私が亡くなったかは覚えていないけれど、何故か私は前世の時にハマって大好きだった乙女ゲーム「リリカル♡スクールラブ」の世界に転生してしまったようね。しかも……ヒロインを散々虐めて罵倒する双子の姉兼悪役令嬢のアンナ・ステインローズに……

って！？大好きだった「リリカル♡スクールラブ」の世界に転生するのは百歩譲って許すけど！なんでよりにもよってアンナ・ステインローズなのよぉ！！？アンナ・ステインローズって言ったら最後はアリーを殺害未遂な事して投獄される運命しかないのよ！？どのルートでも間違いなく！？

「おねえさま……？だいじょうぶですか……？やっぱりあたまがいたいんですか……？」

私が頭を抱えて悶絶している姿を見て、頭が痛いんじゃないかと勘違いしている妹が今日も天使可愛い。サラサラの銀髪のセミロングのストレートヘアーに碧い瞳は本当に天使としか思えないわね。こんな天使可愛い妹をよく殺害出来るわね！？ゲームの私！？私には絶対無理よ！？無理！！？

　とにかく！落ち着け！私！ビークール！ビークール！！私が破滅の未来を遠ざけたいならこの娘から離れるべきなんだろうけど……

「おねえさま……？」

まだ5歳だから舌ったらずに私の名前を呼ぶ妹が超キュートエンジェル！無理！？それも無理！？こんな可愛い妹の姉の座を放棄するなんてもったいないわ！？絶対にこの座を放棄なんて出来ないわ！！？

　うん！こうなったら……私！覚悟を決めたわ！

「アリー！この先何があっても私があなたを守ってみせるからね！」

私は完全に腹をくくった。例え私に投獄の未来が待ち受けていようと！私が最後まで妹を守りぬいてみせる！！

「うん。だったら、おねえさまのことは私がまもってみせるよ！」

小さく握り拳を作ってそう宣言する私の妹は本当に今日もヤバいぐらいに可愛い♡

　こうして、私の妹アリー・ステインローズを守る為の戦いの日々が幕を開けたのだった……