あべこべ世界でエロ漫画家として頑張る

キョウキョウ

第1話 伝説の同人誌

 ある日、インターネットのとある掲示板に突然こんな書き込もと共に1枚の画像が貼られた。



281名無し

この画像の詳細を知ってる人おる?

教えてエロい人

>http://xxx.xxx.xxx



 それは、とある漫画の中盤あたりだと思われるページをスキャンした画像だった。しかも、男女が裸で交わっているエロシーンの1枚である。



292名無し

>>281

どんな画像? 怖くてアクセスできない。


293名無し

え!? すげぇエロくね!


294名無し

アクセス先は普通に二次元のエロ画像だった。安全っぽいよ


295名無し

コレって何の漫画なの? 誰かタイトル教えて!?


296名無し

男のアレがむっちゃリアル


297名無し

リアルって、見たこと無いやろ


298ゼロ

私は見たことあるけど、本当にホンモノとおんなじ


299名無し

嘘乙。でもコレ見てると、なんだか気分が高揚する


300名無し

誰か、詳細はよ


301名無し

全裸待機中


302名無し

服は着て下さい



 掲示板に書き込まれたURLにアクセスをして、その先にあった画像を沢山の人が目にした。それから掲示板に沢山の書き込みで溢れて、一気にスレッドの消費速度が加速する。


 その瞬間、掲示板で一番の注目をたった一枚の画像が集めている状況。


 画像の絵は誰が見ても上手いと納得をするような、クオリティの高い漫画だった。しかも、男性の身体の描写がすごく鮮明で今までに無い完成度。


 エロ漫画というものは非常に需要が高くて、世の中に多数生産されていた。今や、連載を抱えているエロ漫画家は世界で数十万人も居ると言われている。世界中に存在しているエロ漫画の数は1億冊を超えている。


 けれど、男性身分保護法により男性の裸が見れるような映像や写真の資料なんて、手に入れるのが非常に困難な時代だった。多くのエロ漫画はストーリーを重視して、男性の裸体は想像で何とか補って描かれている。


 それなのに、その漫画はまるで男性の裸体を直接見て描いたかのような絵だった。細かい部分に至るまで精巧に描かれていた。


 掲示板に貼られたURLにアクセスをすると、1枚だけアップロードされている。その画像は漫画のようなコマ割り、吹き出しの台詞を読むとストーリーの途中であることが分かる。


 誰もが、アップロードされた画像の他のページについての情報を求めていた。気になって仕方がないと詳細を求める書き込みが多数。けれど、画像をアップロードした人物も画像の詳細を求めて掲示板に書き込んだようだった。


 作者は誰か、何というタイトルの漫画なのか、出版社はどこなのか、答えを知って漫画を手に入れたいという欲求を持った人たちの書き込みで、掲示板は盛り上がっていた。


 その掲示板でも過去最高の盛り上がりを見せて、アクセスする人がどんどん集まり画像の詳細について明らかにしようと、議論が巻き起こった。


 けれど、多くの人が集まっているというのに漫画の詳細を知る人は現れなかった。画像についての情報を知っている者が居ない。あーでもない、こーでもないと真実を求めて掲示板上で書き込みが沢山、交わされていく。


 誰も詳細も何も分からないまま、それからしばらく時間が経った頃になっていた。もしかして、その画像はフェイク。そんな漫画はこの世に存在しないのではないか、という結論に落ち着きそうになった頃、1つの書き込みがあった。



909名無し

もしかして、この漫画じゃない?

>http://www.ooo.xxxx



 同人誌の委託販売を行っているというショップのアドレスが書き込まれた。1冊の同人誌に関する商品ページについて書かれたコメント。


 掲示板の皆が、そのサイトにアクセスして確認しに行ってみた。


 確かに、商品ページのサンプルに載せられている絵が似ているような感じだった。しかし、そのショップで売っていた同人誌は既に全て完売していたようで、再入荷の予定も無いという。しかも、その作家は何故か他に作品を売り出していない。


 その1作品のみ、ショップで売り出されているような状況。


 最初に載せられていた画像を見れば、同人誌とは思えないようなクオリティの高さである。しかも二次創作ではなくオリジナルのキャラクターだった。これほどまでにクオリティが高いのに、なぜ商業誌として売り出していないのだろうか。なぜ今まで話題にならず、誰にも知られることが無かったのか。色々と謎だった。


 同人ショップで売られている同人誌と画像の漫画は別物ではないか、というような意見もチラホラ流れた。誰もが初めて名を聞いた、知られていない作者だったから。


 インターネットで作者の名前を検索して探してみてたが、その商品ページの他にはヒットするページを見つけることが出来なかった。


 同人誌即売会などのイベントに参加している人たちも、初めて聞いた知らない名前だと証言する。その画像の謎は深まるばかり。


 そして遂に、同人ショップに直接連絡を入れて尋ねる人たちが現れた。


 掲示板に載せられた画像はこの漫画と同じものか、この作者は誰なのか、その他の作品は売り出していないのか、様々な質問が同人ショップの問い合わせに殺到する。


 あまりにも問い合わせをしてくる人数が多くて、同人ショップの担当者はサイトのトップページに商品の詳細についての説明を掲載した。



951名無し

【朗報】あの画像は、あの同人誌で間違いないようだ

問い合わせが殺到したらしくて、同人ショップのトップページに説明が書いてあるよ


952名無し

ホントだ。

でも、商品の再入荷する予定は無いだって



 掲示板に載せられた画像は、確かに商品ページに掲載して販売をしている同人誌の中の1ページであること。作者の情報に関しては、プライバシーに関わることなのでお知らせすることが出来ないこと。この先も、商品を再入荷して売り出すかどうかは不明。この作者の新たな作品が、商品として売り出されるかも不明。



953名無し

ということは、プロの漫画家じゃないのかな


954名無し

趣味でやってる人?


955名無し

同人誌だけで作品を出してる、ってことはそういうことか


956名無し

これだけの腕が有るのなら、プロを目指せばいいのに


957名無し

なにか理由があるんでしょ

同人ショップも作者の情報を出すのを渋ってるし


958名無し

プロなら、商売として名前を出したほうが宣伝になるもんね


959名無し

残念だよ

プロの人なら、全作品を買い集めるのに


960名無し

これから世に出てくるかもよ



 分からないことだらけで、様々な推測による議論が掲示板で行われた。


 実は昔、有名だった漫画家が名前を変えてお遊びに作った同人誌だとか、金持ちの道楽で書かれた漫画であるだとか、作者は男だから身分を隠しエロ漫画を描いているなんて意見も書き込まれた。



【謎の作者について】伝説の同人誌 議論9席目【話し合おう】


112名無し

これ、もしかして作者は男とかって可能性は?


113名無し

ありえない


114名無し

そんな、馬鹿なこと有るわけないよ


115名無し

それこそエロ漫画の題材じゃねーか


116名無し

でも、作者が男だと考えると男性の裸体の描写が細かいという理由が説明できる


117名無し

机上の空論


118名無し

その理論、ガバガバじゃねーか


119名無し

希望的観測だね


120名無し

まぁ、でも男が描いているって想像すると……

ふぅ……


121名無し

盛ってるんじゃねーよ



 掲示板上ではそんな話し合いが行われ、1枚の画像で信じられないくらいの注目を浴びることになった。遂には、ネット界隈では伝説の同人誌として作者の名前と共に語られるようになる。


 これが後に全世界の女性たちが名を知るようになるエロ漫画家が、初めて世の中に知られることになった最初の出来事だった。


 その頃は、まだ誰も作者の詳細を知らない。年齢や性別さえ知られていなかった。



***



 自分が描いて売り出した同人誌が、インターネット上で伝説と呼ばれるまでの噂になっている。そんな事実を知った人物は、パソコンの前で頭を抱えてどうするべきか悩んでいた。


「まさか、こんな事態になるとは……」


 その人物の名前は北島きたじまタケル。転生者であり、前世では漫画家をしていたという特異な経歴を持つような男であった。

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